静岡県三島市で半世紀近く愛され続けてきた喫茶店が新たな店主のもと4月にリニューアルオープンした。昭和レトロブームを追い風に地域の活性化を目指している。

半世紀近く愛され続けるレトロ喫茶

三島市にある喫茶店・ジェミニ。

喫茶店・ジェミニの外観
喫茶店・ジェミニの外観
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1982年のオープン以来、コーヒー好きの店主・市川浩さんと明るい性格の妻・喜久子さんが店を守り続けてきた。

しかし、2024年夏に浩さんが体調を崩してしまい、その後は喜久子さんと長男の洋之さんで営業を続けてきたものの次第に店をたたむことを考えるように…。

喜久子さんは「周りに会社がどんどん無くなり、ランチに来てもらえなくなった。息子と2人で1年近くやったが疲れたんです」と話す。

新たな店主は現役看護師

そんな中、次なる担い手として白羽の矢を立てられたのが市内に住む看護師の加藤茜さんだ。

洋之さんと同級生だった叔父からの勧めがあったといい、「(店に)入ったら素敵な空間でびっくりしたし、その時の“たまごサンド”がすごくおいしくて、無くなってしまったら寂しいと思い残したいという気持ちになった」と振り返る。

茜さんの思いに喜久子さんも「ここをすごく気に入ってくれて、それがうれしかった」と胸がいっぱいになった。

看板メニューを受け継ぎつつ新作も

ジェミニの看板メニューは茜さんも感動を覚えた“たまごサンド”で、焼きたての薄焼き玉子を薄く切ったイギリスパンではさむのが特徴だ。

ジェミニの看板メニュー「たまごサンド」
ジェミニの看板メニュー「たまごサンド」

店を受け継ぐことになって以来、茜さんは“たまごサンド”の作り方を喜久子さんから学ぶと共に 県内外の喫茶店をいくつもめぐりコーヒーの淹れ方を習得。

さらに、新たに手作りプリンをメニューに加えるべく試行錯誤を重ねた。

喜久子さんにプリンを試食してもらう茜さん
喜久子さんにプリンを試食してもらう茜さん

茜さんによれば「家で何回も失敗ばかりしている。もう少し滑らかになるよう(にしたい)」とのことだが、試食した喜久子さんの反応は「甘さはちょうどいい」と上々だ。

長い歴史に一度は幕下ろす

同時に、リニューアルに向け塗装なども自分たちで進めた茜さん。

外装を整える茜さん
外装を整える茜さん

また、店を整理する中でかつて使っていたメニュー看板やオープン当初に配っていたというマッチなども見つかり、改めてジェミニが刻んできた歴史の重みを受け止めた。

3月31日。 

この日は長年ジェミニを切り盛りしてきた喜久子さんが店に立つ最後の日。

喜久子さんは「どうなるだろうね…(翌日以降)朝になったらここに来ていたなんていったらどうしよう。寂しさはわからない」とまだ自らの“引退”を現実のこととして受け止め切れていないようだ。

営業終了が迫ると、喜久子さんに「43年間お疲れ様でした」と花束を手渡す茜さん。

続けて「終わってしまうという感じがしないですね」と声をかけると、喜久子さんも「私も全然しない」と返した。

ジェミニ第2章の幕開け

10日後。 

新たなジェミニのスタートに向け、茜さんは朝から仕込みや準備に追われていた。

開店準備を進める茜さんと母・みきさん
開店準備を進める茜さんと母・みきさん

 そこには、慣れない茜さんを支えようと母・みきさんや叔母の姿もある。

 試作を重ねたプリンも納得の仕上がりになったことを確認すると、いよいよオープンだ。

最初の来店客が頼んだのは喜久子さん直伝の“たまごサンド”。

たまごサンドの感想を話す客
たまごサンドの感想を話す客

「できたての温かいサンドイッチを食べる機会はあまりなく、おいしい」と満足げな表情を浮かべる。

その後も、目まぐるしく動き回っているうちにあっという間に時間が流れ、リニューアル初日の営業を終えると、茜さんは「カウンターでみなさんと話しながら提供できて、すごく楽しかった。喜久子さんから受け継いだ“たまごサンド”も、みんな『おいしい』と言って食べてくれてすごくうれしかったので、大事に味を守り、この雰囲気を守っていきたい。みんなが『懐かしい』『居心地がいい』と思ってもらえるような喫茶店にしていきたい」と笑顔を見せた。

昭和の香りを残すジェミニ。

窓から見えるジェミニ店内
窓から見えるジェミニ店内

令和の世で再スタートを遂げ、ここからまたたくさんの思い出をつむいでいってくれるはずだ。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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