石破首相は、21日の参院予算委員会でのアメリカのトランプ政権との関税交渉に関し、関税と安全保障の問題は切り分けるべきだとの考えを示した。
一方で、日本としてアメリカの負担を軽減するための提案は必要だとの認識も示した。

石破首相は、共産党の小池書記局長から米軍駐留経費について問われ、「日本としてアメリカ駐留の他国より多くの負担をしているのは事実だ」と述べ、「唯々諾々と言われるとおり負担を増やすつもりはない。日本としてここ数年、ものすごく努力をしてやってきたことを認識してもらうのは国家として当然の主張だ」と強調した。

石破首相はその上で、「この関税の交渉と安全保障の問題をリンクさせて考えてるべきだと思っていない。関税の交渉は関税の交渉、安保の議論は安保の議論。それは分けて議論しないとことの本質がおかしくなる」と強調した。

さらに、アメリカの大統領が『アメリカは日本を守るのに、日本はアメリカを守っていないじゃないか』と言うのは事実と異なる。それは日本にアメリカの車はまったく走っていないじゃないかと言うのと似たようなものだ。きちんとした事実を認識してもらうのは、国家として当然のことだ。そういう立場で交渉に臨みたい」と述べた。

一方、国民民主党の上田議員の質問に対しては、「日本がアメリカと共に世界にいかなる責任を果たすか、アメリカが負ってきた負担、少なくともトランプ氏はそう思っているわけで、日本がそれに代わりうるものは何なのかかということは、安全保障面も含めて我が国として提案していかねばならん」と指摘し、「要求が高くてそれをまけてくださいよという話ではなく、日本としていかなる提案ができるか、そこの本質は我が国としていかなる責任を負う覚悟があるかということだと思う」と強調した。

質疑の中で上田議員は、アメリカでは、95年前のフーバー大統領の時に高関税が打ち出され、世界で経済ブロックが横行し各国の利害が必要以上に対立し、第二次世界大戦に突入していったと指摘し、「経済の長期低迷、高関税が本当に世界中に課せられ、世界中が対抗できなかったら不況になるリスクは高いということを、トランプ大統領に高い見地から訴えていただきたい」と要請した。

これに対し、石破首相は「私たちが気をつけていかねばならないのは、最大の投資国であり最大の雇用をアメリカに創出してきた我が国と、投資していない、雇用も創出していない国が同列に論じられることは当然あってはいけないことだ」と述べた。

その上で「我が国として自由貿易の大切さは多くの国々と連帯しながら訴えていくが、我が国として報復関税だという立場に立つのが国益なのかといえば、決してそうだと思っていない。そこをどうやって調整をとりながら、我が国の立場を世界に向けて主張していくかは、相当の工夫が必要だと思っている」と述べた。

さらに、「我々は強権的な国家資本主義、行き過ぎたナショナリズムには対抗していかねばならない。その点において、大統領と考えを一にすることはできると考えているが、我が国の投資や雇用の創出と、世界の多くの国々との連帯をどうやって両立させていくかについては、かなり思案が必要だ」と指摘した。