広島でICOCAを購入する人の行列ができている。
なぜ、今?
これまで広島電鉄が中心となって展開してきた交通系ICカード「パスピー」のサービスが3月29日に終了したためだ。“後釜”の新システムではなく、このタイミングでICOCAに乗り換える人も少なくない。
混在する2つの乗車券システム
広島市中心部にある広島バスセンター。続々と路線バスが入ってくる。

複数の会社のバスが行き交うバスセンターで、広島電鉄のバスは新システム「モビリーデイズ」と、ICOCAなどの全国交通系ICカードを使って乗ることができる。一方、広島バス、広島交通、JRバス中国の3社はメインのICOCAに加え、モビリーデイズも順次導入予定だが、まだ使える車両と使えない車両が混在している状態だ。

その要因は、2025年3月29日で「パスピー」のサービスが終了し、県内の公共交通機関がモビリーデイズをメインとする広電グループと、ICOCAをメインとする「それ以外」の事業者の大きく2つに分かれたこと。モビリーデイズをメインとする広電グループのバス・電車はICOCAなどの全国交通系ICカードも利用可能。ただし、簡易型端末を使っているためタッチするのは降りる時のみで、バスの場合は乗車時に整理券を取る必要がある。
各事業者の取り扱いはメインとするどちらかのシステム一択に限られ、2つの乗車券システムに移行した余波は窓口対応に及んでいた。
バスセンターでICOCAも販売開始
広島市内を走るバスや路面電車に「ICOCA」と「モビリーデイズ」が混在する中、ようやく両方が同じ窓口で購入できるようになった。

広島バスセンターで4月15日から「ICOCA」の取り扱いがスタート。新システムへの移行後しばらくの間は、混雑を防ぐためモビリーデイズのみの対応が続いていた。

広島バスセンター・ターミナル課の河野貴一課長は「事業者は自社の取り扱うカードや定期券を販売しているので、両方とも取り扱えるのは現在、広島バスセンターだけだと思います」と話す。
どちらがいいか迷う人は相談して
今回、広島バスセンターで両方の取り扱いが始まったことで、複雑に感じている人にとって心強い味方となりそうだ。

偶然訪れた80代の人は「今日から始まったと聞いて、たくさん人がいたけど待とうと思った。ICOCAはJRも使えるのでJRに乗るときいいと思って」とICOCAを購入。

また、係員の説明を聞いてICOCAを購入した90代の人は「わからなかったんです。どうしようと思ったんですけど係員の方がずいぶん助けてくださったんですよね」と安心した様子。モビリーデイズとICOCAの両方を必要とする人や窓口に来るまで迷っていた人も係員に相談して自分に合ったシステムを選択できるようになった。広島バスセンターの河野課長は「社会使命的なものを感じていましたし、立地も利用しやすい場所にあるので、少しでもお客さまのお役に立てればと考えています」と意気込む。
取材した4月15日時点でICOCAの購入は約1時間待ち。平日も列が絶えることはない。これまでパスピーに限定されていた最大10%の運賃定率割引や乗継割引がICOCAで適用されるようになったことも購入を後押ししている。
一方、モビリーデイズを利用をする40代の人はその理由を「ICOCAでは割引にならない路線がある」と言う。実際、JRバス中国ではICOCAでの定率割引の対象が3つの路線に限られている。
ICOCAとモビリーデイズ、賢い消費者はどちらの利便性にひかれ、どちらのメリットを選ぶのか?バスや電車の乗降口で戸惑う乗客と、それに対応する乗務員のやり取りはしばらく続きそうだ。
(テレビ新広島)