雪解けとともに早くもクマによる事故が起きてしまった。
専門家はクマの出没について、2025年はどのような傾向があるとみているのだろうか。
各地でクマ出没― 2025年の傾向は?
雪の上にくっきりと残された大きなクマの足跡。
北海道・網走市の市道で3月31日に撮影されたものだ。
足跡の幅は13センチから14センチほどで、近くの山に向かって続いていた。
札幌市西区小別沢の山林でも3月に山の斜面を登るクマを通行人が目撃。
クマは1頭で、山を駆け上がり見えなくなったとのこと。

雪解けが進み、クマが冬眠から目覚める季節になった。

九死に一生を得たハンター 「今年はクマが出てくる」
「腹、空っぽだよ。エサ食うことを考えているでしょうね」(原田 勝男さん)
北海道・岩見沢市の原田勝男さん(84)。

この日も2人の弟子とともに箱わなの状態や近くにクマの痕跡がないか、約2時間にわたって見て回った。
原田さんは札幌市などで重機の会社を経営する傍ら、30代のときに趣味で狩猟を始めた。

事故に遭ったのは60歳のときだった。
北海道東部の白糠町の山林でエゾシカ猟をしていたとき、体長約1.5メートルのクマに襲われたのである。

頭をかじられるなどして手術は16時間に及び九死に一生を得たが、左目を失った。
「一般的に言われますよね、クマにやられたら死ぬって。そういうことを知っているだけにそう簡単にはやられないぞと戦ったけど、つらかったね、正直言って」(原田さん)

「俺が先頭に立って歩く」(原田さん)
「はい」(2人の弟子)
原田さんはいま農作物の被害が相次いでいる岩見沢市の依頼を受けて活動を続けている。
「まだこっちまでは(クマは)来ていません。においもしない。(もっと山の)奥行ったら出ていると思う」(原田さん)

クマの出没件数に“ドングリ”が関係?
クマが本格的に活動する時期ではないものの原田さんには気がかりなことが一つあった。
「(去年は)食べるものが豊富だったせいか、あまり(クマは)出てこなかった。去年のとばっちり。今年出てくると思う」(原田さん)
クマが食べるドングリ。
北海道では2024年度は「並作」、つまり平年並みに実をつけていた。

その前年は「不作」で、クマの目撃は過去最多の4055件に上っている。
2024年の目撃件数は2609件。
北海道で「並作」になったのは10年ぶりである。

目撃件数が減ったことと関連はあるのだろうか。
「去年ガバッと(ドングリが)なった次の年というのはならないんだ。今年は結構(クマが)出てくるんでないか」(原田さん)

専門家の見解は
クマの生態に詳しい酪農学園大学の佐藤喜和教授は。
「今年3月、4月以降に限ると、去年の秋が(ドングリが)豊作でしたので、雪解けでドングリが地面に落ちているような状況はあり得る。そういう地域では春先もクマはそのドングリを食べることができるので、春先はもしかしたら少し静かなことも予想できるかと思います」(酪農学園大学 佐藤 喜和教授)
しかし、春先は静かでもその後の動向には注意が必要だ。

「(ドングリの量は)決まった周期ではないのではっきりとした予測はできませんが、去年より(ドングリの量は)少なめな可能性が高い。今年は去年より(クマの出没が)多いかなというぐらいの心構えをしてきちんと備えることが大事」(佐藤教授)

人とクマの距離が近づくこれからの季節。
山に入るときは装備を整えるなど、十分な対策が必要だ。
