競争の激しいヘアサロン業界。帝国データバンクによると、2024年度における美容室の倒産は2月までに197件と、前の年に記録した過去最多を既に更新している。こうした中、ライフスタイルの変化や顧客のニーズをとらえることで勝機を見出している店舗もある。

“タイパ”重視を追い風に

“10分の身だしなみ”をコンセプトに掲げるQBハウス。

QBハウス店内(イトーヨーカドー静岡店)
QBハウス店内(イトーヨーカドー静岡店)
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国内外で約690店舗を展開していて、メニューはヘアカットのみ。 安くて速いサービスを売りにしている。 

コロナ渦で一時落ち込んだもののZ世代を中心に時間対効果、いわゆる“タイパ”を重視する人が増えていることを追い風に来店者数は年々増加傾向に。

これまで男性の利用者が多いイメージだったが女性客も直近10年で2割ほど増えているといい、イトーヨーカドー静岡店の片山真吾 店長は「働き方の変化、趣味・家族の時間を大切にしたいと思っている人、自分の時間を大切にしたいと思っている人が増えてきて、ヘアカットはその流れの中で手軽な物が求められている」と話す。

謳い文句に偽りなし 時間への意識強く

2カ月に1回のペースで利用しているという男性が来店すると、希望を伝え早速カットが始まった。 

2ヵ月一回のペース来店する男性
2ヵ月一回のペース来店する男性

片山店長によれば「隙間時間を有効利用したいと考えている来店客が多いので、なるべく早いカットを心掛けている」とのことで、男性客も「休みの日等に髪を切りに来るので、たくさんやりたいことがあり早めに切ってもらえるとうれしい」と明かす。

また、QBハウスではカットを終えた後の仕上げにシャンプーを使わず、髪の毛を吸い取るエアウォッシャーを使っていて、時間短縮を実現。 

髪の毛はシャンプーをするよりは残ってしまうものの「断然早く、かなり好評」だという。 

エアウォッシャーでの仕上げ
エアウォッシャーでの仕上げ

結果、この男性客が席についてからすべてのサービスを終えるまでにかかった時間はわずか11分。

その後も続々と客がやって来たが、カットなどに要した時間は謳い文句の通り軒並み10分ほどで、別の男性客も「時間短縮には良い」と評価する。

混雑状況の表示説明
混雑状況の表示説明

さらに、QBハウスでは客が混雑状況を確認できる表示や美容師が時間経過を確認出来る機器を導入するなど時間への意識を強く持っていて、片山店長は「普通のサロンだと予約して、1時間以上はかかると思う。そうすると1日のかなりの時間が取られてしまので、フラッと来てカットして帰れるというところが人気」と胸を張った。

ライフスタイルに合わせた深夜営業

一方、浜松市中央区にある美容室Yurikago。 

美容室Yurikago店内
美容室Yurikago店内

「休日はしっかり休んでほしい」との思いから営業時間は午後4時から深夜0時となっていて、加藤澄枝 店長は「休みの時でも子供の送迎などに時間を取られるということを利用客から聞くので」と話す。 

この日、20年来の常連という女性が訪れたのは午後10時半過ぎ。

20年来の女性客
20年来の女性客

夫の食事や家事などを済ませた後で利用できることから「とても助かっている」と感謝の表情を見せ「平日の夜にやってもらえると自分の好きなように休みを使えるのでありがたく、そこが気に入って使っている」と打ち明ける。

仕上げのドライヤーが終わった頃には時計の針が午後11時半を指そうとしており、加藤店長は「やはり忙しい人が増えているのだろうというのはある。夜なら夫なり、妻なりに子供を見てもらうことができるので、そういう(子育て)世代の人に求められている」と時代の変化を実感している様子だった。

美容室Yurikago(静岡県浜松市)
美容室Yurikago(静岡県浜松市)

ライフスタイルや顧客のニーズをとらえサービスを展開する。

これは競争の激しい美容室のみならず多くの業界に共通する大切なことかもしれない。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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