三島の地で半世紀以上にわたって愛され続けている伝統の味をこの先も残していこうと、2024年から屋台ラーメンを始めた男性の思いに迫った。
屋台ラーメンと酒店の“二刀流”
静岡県三島市で営業する屋台ラーメン「日家」。

訪れた人のほぼ全員が注文するという自慢の逸品…それが味噌ラーメンだ。
ある来店客は「味が濃厚で美味しかった。チャーシューもおいしかった」と舌鼓を打ち、別の来店客も「実はずっと北海道に仕事で月1回くらい行っていて、北海道の味噌ラーメン店もよく行ったが、それに引けを取らないくらい美味しかった。また来たい」と満足げな表情を浮かべた。

店主である鈴木敏也さんの本業は祖父の代から続くという老舗の酒店だが「僕が最前線で戦えるのはあと数年だと思うので、自分しか今できないことって何かなと思ったら頑張れる感じもする」と“二刀流”もへっちゃらな様子だ。
老舗が暖簾を下ろす危機 そこで…
日々100軒近い配達がある中で、合間を縫って鈴木さんがこの日、昼食に訪れたのが三島の地で半世紀以上愛されている「サッポロラーメン両国」。

店を切り盛りするのは鈴木さんの叔父にあたる栗原光広さんで、看板商品は店の名前の通りサッポロ味噌ラーメンだ。
鈴木さんは「やっぱりうまい。53年変わらない味で最高」と麺をすする。
ただ、長年店に立つ栗原さんも2025年で76歳。2人の子供は別の仕事をしているため、一代限りで店をたたむことを決めた。
しかし、「ラーメンで儲けを出すのは難しいが、食べていてみなさんの脳裏に焼き付く味。本当においしいと思うから残したい」と鈴木さんが立ち上がった。

これには栗原さんも「両国が消えてしまいそうだったのでうれしかった」と頬を緩ませ「みんなに好かれるようなラーメンを作ってほしい」と背中を押す。
そして、4カ月かけて栗原さんからラーメンのイロハを学ぶと共に知人に頼んで商売道具である屋台を製作。
2024年6月に日家をオープンさせた。
“屋台ラーメン”にこだわり
なぜ“屋台ラーメン”を選んだかと言えば「駅前の(家賃が)高いテナントではなく、小さくてもオリジナリティがあって、人が集まりやすい」場所を作りたかったからだ。

両国の味を守りつつ、アレンジを加えたスープには三島で育ったブタや野菜を使用し、 さらに厳選した3種類の味噌をブレンド。
初めて会った人たち同士がラーメンやお酒を通して距離を縮められるのも屋台の良さで、鈴木さんは「子供からおじいちゃんまで楽しめる屋台を目指してやっている。県外の人が来ても三島の魅力を伝えられるように日々精進して頑張っています」と話す。

この場所では鈴木さん以外にもホルモン焼きの屋台が営業していて、今後は伝統の味を守ると同時に屋台村のようなコミュニティを生む場にしていくことが大きな目標だ。
(テレビ静岡)