3日、三菱商事は「経営戦略2027」を発表し、過去最大4兆円超の投資と1兆円の自社株買いを行うと明らかにした。グループ内シナジーで総合力を発揮し、収益アップを目指す。専門家は、「総合力を活かした連携とグループ内協業の成功事例の積み重ねが成長のカギになる」とする一方で、懸念点については「巨大組織ゆえのサイロ化」を指摘する。
三菱商事「総合力」で相乗効果創出…新構想を実行へ
3日、大手総合商社の三菱商事は、経営戦略を発表し、過去最大となる4兆円以上の投資計画を明らかにした。

三菱商事・中西勝也社長:
新たな成長の柱となり得る新規投資や、営業グループ間の協業による相乗効果が期待できる競争案件を推進していきます。

三菱商事の中西社長は3日、「経営戦略2027」を発表し、過去最大となる4兆円以上の投資計画と、1兆円の自社株買いを行うと明らかにした。

また三菱商事の競争力の源泉は「総合力」だと改めて強調し、8つの営業グループ間で、「相乗効果の創出」という考え方が、社内に浸透し始めていると説明した。

その上で、こうした相乗効果が期待できる新規構想が複数出てきているとして、「着実に実行していく必要がある」と強調した。
グループ内シナジーで「総合力発揮」収益アップ狙う
「Live News α」では、一橋ビジネススクール教授の鈴木智子さんに話を聞いた。
堤礼実キャスター:
総合商社の新たな経営戦略、どうご覧になりますか。

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
総合商社は、英語でも「sogo shosha」と、ローマ字読みされていて、日本特有のビジネスモデルとして、世界でも知られています。
単なる「物の仲介」にとどまらず、あらゆる分野で、投資から事業まで関与しています。この総合力を活用して、成長を加速化させようというのが、今回の経営戦略のポイントになります。
堤キャスター:
具体的には、どういったビジネスが行なわれるのでしょうか。
一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
例えば、グループ内に、電力・ガス・熱供給などを担うエネルギー企業のEneco社があります。
今後は、グループ内のモビリティ事業と一緒にEV向けの電力供給や、リテイル事業と掛け合わせた、一般向けの電力供給の拡大などが検討されています。
グループ内のシナジーによる総合力を発揮して、三菱商事ならではの大きなプロジェクトで収益性を上げていくことを狙っています。
懸念は組織のサイロ化…巨大ゆえの連携不足
堤キャスター:
一方、課題などについては、いかがですか。

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
真に総合力を発揮するためには、組織間の壁を越えた連携が必須になります。
それぞれの事業の自立性を尊重しながら、一体感をどうやって醸成するか、これは大きな課題になります。
三菱商事グループは、約1200の連結対象会社、8万人以上の社員を抱えています。巨大ゆえに、他の部門と情報共有や連携を行わずに、業務が進んでしまう、いわば、組織のサイロ化が起きてしまいがちです。
さらに、事業領域が広すぎて、経営の一貫性や、スピードが犠牲になる懸念もあります。
堤キャスター:
そうしたものを、乗り越えるための鍵はどこにあるのでしょうか。
一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
何よりも、グループ内協業の成功事例が求められます。これが積み重なると、巨大グループでも、自然と一体感が高まります。
すると、協業に関するアイデアが次々と生まれるようになり、成長への打ち手も続くようになるかと思います。
三菱商事は、「総合力をエンジンに未来を創る」と掲げています。この未来には、日本経済の成長も、重なっていることを期待したいと思います。
(「Live News α」4月3日放送分より)