想定を超えるスピードで進む人口減。富山県の“最重要課題”についてシリーズで考えています。

去年、舟橋村をのぞく県内の自治体で初めて人口が1万人を割れた朝日町。

危機感が募る中、先月、衝撃の数字が示されました。

「直近のデータをもとに実態に応じた人口ビジョンに作り上げたいということで、今回新たに策定した」

3月27日に開かれた朝日町議会の全員協議会。

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この場で町が示した35年後、2060年の人口予測は「2914人」。

過去10年間の転入・転出など人口移動平均でシミュレーションしたその数字に衝撃が走りました。

朝日町では県の人口移動調査に基づく推計人口が、去年9月1日時点で9984人と1万人を初めて下回りました。

舟橋村をのぞき、県内の自治体で人口が1万人を下回るのは朝日町だけです。

大村邦夫さん、87歳です。

町の中心部の商店街で64年間、和菓子店を営んでいます。

*大むら菓子舗 大村邦夫代表
「20~30年ほど前から徐々に(店を)やめられていって、スーパーが出るようになってからですね。大型店が出るようになってから店が壊れ始めた」

町から消えていく商店。

客足が、年々減っていく様を目の当たりにしながら、大村さんは宮崎・境海岸で取れるヒスイをイメージした羊羹や観光名所「春の四重奏」をモチーフにした和菓子を作り続けています。

*大むら菓子舗 大村邦夫代表
「お菓子作りは好きだからやっている。いろんなお菓子を考えるのが面白い。人口が減るということは(和菓子を)食べる人がいなくなるので商売にならない。もっと人口が増えるような政策をとってもらいたい。それには企業で(若い人が)働く場所を
作ってもらいたい」

どこの自治体も抱える問題。朝日町も子供が…若者が…減り続けています。

*朝日中学校 長津丹那さん
「学校のクラスの人数が減っていったり、3組あった学年が2組に減ったり、そういうところで人が少なくなったと感じる」

*朝日中学校 廣田汐莉さん
「(将来)医者になりたいと思っている。職業的には町を出たほうがいいと思う」

*朝日中学校 菅田桃子さん
「1回町を出たいと思っているが、後継者不足などで困っていたりするので、インターネットで情報を発信できたらいいと思う」

町唯一の朝日中学校は、今年度の生徒数が181人、昨年度から(昨年度203人)20人以上減りました。

5年前、町から高校がなくなり、若者が転出するケースが増えました。

人口減少に歯止めがかからない中、町に生活の拠点を移した人がいます。

東京で暮らしていた横山豊さん・理恵さん夫婦は、移住イベントをきっかけに朝日町を知り、2017年に移住してきました。

*横山豊さん
「朝日岳は知っていた。山が好きなので。朝日町は知らなかった。移住ツアー参加者を募集していますというので参加して、いいなと思って、そのままとんとん拍子で進んだ」

横山さん夫婦は、現在、総菜や弁当の販売をはじめ、草刈りなどの仕事を請け負い、生計を立てています。

*横山豊さん
「大変なことはいっぱいあるけど、自然が多いのと山が近いので、山が好きだから山があれば苦ではない」

大好きな自然豊かな地での暮らしは手に入れましたが、同時に、人口減少と高齢化の波を実感する日々を送っています。

*横山豊さん
「日本全国そうだが、何をするにも人がいない。例えば水道の料金を地域の自治会で徴収するが、お年寄りが歩くのもしんどいから行けないとか、大変だとか。水場の草刈りを誰が行くとかそういう問題もある」

35年後、「2914人」まで落ち込むと予測された人口。

町は、2060年時点で人口を4100人にとどめる目標を立て、現在の想定より転出超過を2割減らすことに努めるとしています。

*朝日町 笹原靖直町長
「平成26年に消滅可能性都市というレッテルをはられて、スピード感を持って取り組もうとやっていた。移住定住や関係人口構築をさらに進めながら、働き場所の確保をマインドをあげていきたいと思っている」

『人口減少、超加速社会』。

待ったなしの対応がかつてなく必要になっています。

人口減少は国内全体の問題で、抜本的な対策を見出すことは難しいのが実情です。

しかし、手を拱いていては減少していく一方です。

かつてない本腰を入れた取り組みが求められています。

富山テレビ
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