地域おこし協力隊として静岡県西伊豆町で活動し、任期を終えた後も同町に住み続ける女性が、自らを受け入れ愛してくれた西伊豆の地や人に恩返しをしようと新たな挑戦を始めた。
地域おこし協力隊にとって“大切”なこと
2月21日に下田市で開かれた地域おこし協力隊の交流会。

賀茂地域の6つの市と町で活動する13人が参加し、日ごろの活動を報告すると共に悩みを共有した。

この中でアドバイザーとして登壇したのが2024年まで西伊豆町の地域おこし協力隊の一員だった小村麻衣花さんで、自身の経験をもとに助言。
「町内に留まるのではなく、町外や県外の人とも人脈を作って仕事をする機会を大事にした」と振り返った。
30歳で一大決心…西伊豆の人に受け入れられ
小村さんは大学卒業後、大手のCM制作会社に就職するも30歳の時に退職。

ダイビングが好きで、西伊豆のキレイな海と夕日に惹かれていたこともあり、「いずれはどこかの島や海のある町に住みたいなと思っていたが、ちょうど西伊豆町の地域おこし協力隊の募集がかかっていて、移住するなら今のタイミングだなという縁というか、タイミングもかぶったので西伊豆にいま行こうと急遽決めた」と振り返る。
地域おこし協力隊としては観光面でのPRを担い、自身のキャリアを活かし撮影した動画や写真をSNSで発信。

さらにはCMや映画の撮影など毎年100件近いロケを誘致し、西伊豆町のメディアへの露出をそれまでの3倍へと押し上げた。
また、その手腕もさることながら、西伊豆への愛と人柄の良さはあっという間に町民たちにも受け入れられ、今では多くの人が知る存在となっている。

馴染みの洋服店・チクマ西伊豆“Flagments”の原愛さんが「ずっと同じ小村でいる。偉ぶらないというか、おごらない感じが良さだと思う」と話すと、小村さんは「お客さんなのかスタッフなのかちょっとわからなくなって。『ちょっと来て』と言われて、気づいたら仕事の話をしている」と笑った。
任期終えるも“残留”を決意 その裏に…
地域おこし協力隊としての任期は2024年3月に終えたものの、「自分がやっていたことを継続してやっていけるのではと考え始めたことと、もう少し自分が地域にできることがあるのではないか」と思い、西伊豆の地に残ることを決意。

会社を立ち上げ、2024年11月にはもともと宝来屋という旅館だった築100年を超える建物の所有権を取得した。
宝来屋は三島由紀夫が「獣の戯れ」を執筆したと言われていて、小村さんは「本当は宿をやりたいわけではない」と本音をのぞかせつつ、「エピソードがある建物だったら、宿などいろいろな使い方をして、また灯りをともすことができるのではないか」と話す。
そこにあるのは西伊豆に来て以来住み続けている安良里地区にかつてのようなにぎわいを取り戻したいという思いだ。

今後は土間などのレトロな雰囲気を残しつつリノベーションし、地域の人にとっての憩いの場であり、町外の人にとっての交流拠点となる場の創出を目指していて、「町の魅力を外にいる人にも多く知ってもらいたいという点と地域の人にもこの町の魅力を忘れないでほしいという点の両方を自分が発信し、働きかけていきたいなと思っている」と目を輝かせる。

西伊豆の地に受け入れられ、西伊豆の人たちに愛されて4年。
小村さんは恩返しに向け第一歩を踏み出した。
(テレビ静岡)