広島・廿日市市にある世界遺産の島「宮島」で観光客に人気のロープウエーが、1カ月半以上の運休を経て運行を再開した。長期間の点検整備が必要だった理由に、オーバーツーリズム対策のための新たな動きがあった。
絶景をゆくロープウエーが運行再開
発車ベルが鳴り、宮島ロープウエーが榧谷(かやたに)駅から弥山に向かって動きだした。弥山は宮島の中央部にある標高535メートルの山。その山麓側に紅葉谷駅、中間地点に榧谷駅、山頂側に獅子岩駅がある。3月11日、点検整備を終え50日ぶりに全線で運行を再開した。

ロープウエーでは、宮島の原始林や瀬戸内海を眺めながら片道約25分の空中散歩を楽しめる。また山頂側の獅子岩駅で降りて数々の史跡を見てまわることもできる。そのため国内外の観光客に人気の乗り物だ。

デンマークから訪れた人は「とても素敵。とても美しい」とロープウエーからの眺めを絶賛。広島市内から来た人も「海が見えるのでめちゃきれいでした」と笑顔を見せた。運営する広島観光開発・田村智康社長は「しっかり点検整備をして体制が整いましたので、皆様に楽しんでもらえるような輸送を頑張っていきたいと思います」と話す。
資材運搬のためヘリが1日35往復
2月下旬、宮島の上空をヘリコプターが何度も行き来していた。点検整備で使い終えた資材を山頂側の獅子岩駅から運ぶためだ。

最大で1個2.5トンの重さがあるという資材を慎重に降ろし、再び上空へ。なんとヘリコプターは1日35往復していた。その理由を、安全索道広島営業所の中井久雄課長は「他の駅であればトラックが横付けできますが、獅子岩線に関してはヘリ運搬しかできないので」と言う。獅子岩駅へ車であがれないため、重たい資材はヘリコプターが唯一の運搬手段だった。

そして3月8日、宮島ロープウエーの心臓部である獅子岩駅の機械室にカメラが初めて潜入した。
設備更新の第1弾として、山頂側のロープを巻き上げる動力源を2倍近くパワーアップさせ、非常用ブレーキなども更新。試験運転を繰り返し、新しい設備がきちんと作動することを確認していた。今回の点検整備は通常より20日ほど長く、老朽化した設備を取り替えるだけではないねらいがあった。
広島観光開発・田村社長:
山頂側から帰りのお客様は待ち時間ができますので、獅子岩線の定員30人を多くしようと思っています。G7広島サミット以降、外国のお客様がかなり増えていて4~5割くらい外国の方に利用してもらっています。

オーバーツーリズム対策のため、2026年春に向け山頂側の獅子岩線のゴンドラをこれまでよりも5人多い35人乗りにする計画だ。ゴンドラが1基ずつ交互に上り下りするため、最近は土日の夕方を中心に1時間待ちの行列ができることも珍しくない。
広島観光開発・田村社長:
待ち時間を少なくして快適に島内をまわってもらえる時間を確保したい。ゴンドラの室内にも余裕ができますので、皆様にいろんな景色を見てもらえる機会が増えるのかなと思います。
インバウンド対応の案内所を開設
宮島のフェリー桟橋を降りてすぐの場所に、ロープウエー乗り場の「案内所」も開設した。

観光客:
ロープウエーに乗るのにおすすめの時間帯はありますか?
スタッフ:
私は朝のほうがおすすめだけど、実際は天気次第ですかね。今日はずっと曇りだから今からでもいいかもしれません。
案内所ではチケットが買えるほか英語を話せるスタッフが常駐。オーバーツーリズム対策に本腰を入れる。

広島観光開発・田村社長:
宮島全体を1日楽しんでもらいたいという希望があります。朝の時間でもロープウエーで登っていろんな史跡をめぐったり、商店街で買い物をしたり楽しんでいただきたいですね。
増加する宮島の観光客。宮島ロープウエーの輸送力をアップさせる計画や、案内所の開設で利用客を分散させるなど、次々と新たなオーバーツーリズム対策が打ち出されている。
(テレビ新広島)