“さなぎ”のラベルが特徴的な日本酒は、入社5年目の女性が仕込んだ。一人前になるまで10年かかると言われる酒造り。この挑戦は、創業135年の酒蔵でも創業以来初めてのことだという。伝統を継承しながら新たな酒造りへの挑戦が始まった。

初めて仕込んだ酒

2025年3月上旬、福島県会津若松市の老舗酒店に並んだ新酒。仕込んだのは磐梯酒造(福島県磐梯町)の長崎瞳さん。初めての挑戦だった。

磐梯酒造の長崎さんが初めて作った純米吟醸「さなぎ」
磐梯酒造の長崎さんが初めて作った純米吟醸「さなぎ」
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「注文を頂いている状況を聞いて、すごく安心しました。おいしく飲んで頂けたら、一番幸いですね」と長崎さんはいう。

磐梯酒造の長崎瞳さんと植木屋商店の白井與平社長 
磐梯酒造の長崎瞳さんと植木屋商店の白井與平社長 

福島県下郷町出身の長崎さんが「磐梯酒造」に入社したのは5年前。入社5年目の若手に酒造りを任せるのは、明治23年の創業以来、初めてだという。

取材で興味 酒造りの世界へ

ユネスコの無形文化遺産に登録された日本の伝統的な酒造り。その魅力に惹かれたのは、東京の制作会社で働いていた経験をいかし、地元の旅館で広報などを担当していた時のことだった。

酒造りに挑む長崎さん
酒造りに挑む長崎さん

「酒蔵や伝統工芸品の取材をしていて、そのときによく酒蔵に行かせていただいていて、結構楽しそうだったので、いろいろ調べているうちに発酵とか酵母とか微生物の世界が面白そうだなと思って実際やってみることにしました」と長崎さんは話す。

卒業制作 異例の抜擢

酒造りを学ぶため、福島県のアカデミーにも所属する長崎さん。4月に卒業を迎えるにあたり、社長の桑原さんから勧められたのが「卒業制作」だ。

磐梯酒造・桑原大社長と 「卒業制作」をすすめられた長崎さん
磐梯酒造・桑原大社長と 「卒業制作」をすすめられた長崎さん

桑原さんは「同業者からみれば、入社5年目の人に仕込み任せるの?何考えているの?と言われるかもしれないですよね」という。
酒造りは、一人前になるには最低でも10年程かかるとされる。

さなぎから蝶へ 名前に込めた思い

コメが溶けすぎると、雑味につながってしまうため水分量の調整など苦戦する日が続いた。
そんな初めて酒造りを行う姿勢をそのまま表現したいと「さなぎ」と名付け、デザイナーと話し合いラベルも決めた。

ラベルにもこだわり
ラベルにもこだわり

「今の私の状態が“さなぎ”みたいな状態であって、これから蝶になればいいなと」と長崎さんはいう。

120%の出来栄え

酒造りがスタートしてから約1カ月。醪(もろみ)を搾り、ゆっくりと瓶に注がれる“さなぎ”。きれいな酒に仕上がった。試飲した長崎さんは「ふくみが結構あっていいと思います。食事のシーンでもおいしく飲んでいただいて、楽しんでいただければそれで十分です」と話す。

きれいな酒に仕上がった「さなぎ」
きれいな酒に仕上がった「さなぎ」

社長の桑原さんは「確かに長崎さんのお酒だけども、蔵人みんな協力してやってくれたのでこれができた。長崎さんはじめ、みんなに感謝したいです。(Q:100点満点でどれくらい?)それは120点ですよ。最高です!」と話した。

社長から120点をもらった「さなぎ」 さらに良いものをこれからも
社長から120点をもらった「さなぎ」 さらに良いものをこれからも

4合瓶で約1000本を出荷予定の“さなぎ”。長崎さんは「もっとグレードアップしたものを作れるようになれたらうれしい」と話す。これからの時代を担う蔵人が「さなぎから蝶へ」と誓う。

(福島テレビ)

福島テレビ
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