季節の変わり目による寒暖差や新生活で肉体的にも精神的にもストレスがたまりやすい年度末。そんな時に注意したいのが帯状疱疹。日常生活に支障が出るほどの痛みや痒みが生じることもある。日本人の3人に1人が発症するといわれ、実は近年、20代から40台での発症率が約2倍になったというデータもある。
水ぼうそうウイルスが原因で免疫低下に伴い発症
福井県済生会病院・皮膚科の長谷川義典医師に帯状疱疹の現状や発症のメカニズムについて聞いた。
長谷川医師によると、帯状疱疹は水ぼうそうと同じウイルスが引き起こす皮膚感染症で、神経に沿って帯状に症状が出るのが特徴。そのメカニズムは「(ウイルスは)長い間免疫で抑え込まれていて発症はしないが、年齢を重ねて免疫が徐々に下がると眠っているウイルスが再び復活して活動し、神経に沿ってそのウイルスが増殖。その神経に炎症を伴いながら、神経の終点である皮膚のところにウイルスが到達すると、水ぶくれが出たり赤くなって痛くなったりする」という。

日本人の3人に1人が発症
子供の頃に水ぼうそうにかかることが多い日本人の成人では、90%以上の人の体内に帯状疱疹の原因となるウイルスが潜んでいるといわれている。また長谷川医師は「過去に水ぼうそうを発症した記憶がなくても、ウイルスは非常に感染力が強いので、同じ部屋にいて同じ空気を吸ってるとうつるといわれている」とする。
つまり、誰でも帯状疱疹を発症する可能性があるのだ。加齢とともに免疫力が下がるため50歳を過ぎると発症が増え、80歳までには約3人に1人が発症すると言われている。

親世代が追加免疫を得られず…
しかし近年では、20代から40代などの若い世代も増えている。ある免疫調査では、20代から40代の発症率が、1997年の発症率に比べて2014年を境に約2倍になっている。
背景には、2014年から始まった子供への水ぼうそうの定期ワクチン接種があるという。定期ワクチン接種が始まる前は、子供たちの間で水ぼうそうの流行が毎年繰り返され、そこから大人も追加免疫を得ていた。しかし、定期接種の導入で水ぼうそうにかかる子供が激減したため、大人の免疫も強化されず親世代である20代から40代の発症率が上がっているという。

重度の場合は点滴治療
世代を問わず発症する可能性がある帯状疱疹の治療法はー
長谷川義典医師:
「重度の場合は入院して点滴治療をする。中等症から軽症の場合は、通院で飲み薬の抗生物質で治療する」
また、ワクチンを打つことで予防をすることもできる。自治体によって詳細は異なるが、2025年4月からは65歳を対象に費用を公費で支援する帯状疱疹ワクチンの定期接種が開始される。
免疫低下が要因の帯状疱疹。生活環境の変化によるストレスや寒暖差が激しい季節の変わり目は健康管理に十分注意しよう。
