目指すはビジネス界のメジャーリーガー。世界を席巻する企業を育てるイベントが開催された。

未来のイノベーターと世界を変える企業を育てる

保育や教育に関する最新テクノロジーなどが集まったのは、15日、東京・千代田区で開かれた「UPDATE EARTH 2025 ミライMATSURI」だ。

日本から世界を席巻する企業を育てることを目的に、大手企業や大学、自治体のほか、総務省や企業が支援する「ICTスタートアップリーグ」の事業者など200以上の団体が出展し、体験イベントやトークショーなどが開催された。

赤ちゃんの気持ちを解析するアプリ
赤ちゃんの気持ちを解析するアプリ
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泣き声の微妙な違いから、赤ちゃんの気持ちを解析するアプリ「あわベビ」や、一流選手のフォームと自分のフォームを比較してマッチ度を測れるバスケットボール、子供が間違えると自動的に一つ前の段階の難易度が低い問題が出題されるデジタル学習教材も出展した。

TOPPAN 教育事業推進本部・嶋野匠さん:
間違えた箇所と答えをみて、その子がどこにつまずいているのかというのを(AIが)判断する。

株式会社TISが担当した、起業家の学校「ゲームでチャレンジ!初めての量子コンピュータプログラミング」は、どこか懐かしいパズルゲームのようだが、ただ遊んでいるわけではない。こちらは起業家精神を学んでもらうための体験授業で、量子コンピューターの仕組みを遊びながら学んでもらおうというものだ。

子どもたちはゲームで仕組みを学んだ後、実際にプログラミングにも挑戦。なかなか難しい内容だったが…。

参加児童(小学2年):
楽しかった。

参加児童(小学5年):
量子コンピューターって何だろうって最初は思ってたんですけど、ブロックで計算するものなんだとか、いろんなパターンがあるのが面白い。

TISテクノロジー&イノベーション本部 高宮安仁博士:
量子コンピューター自体が徐々に商用化されていて、今の子供たちは確実に使うことになる。子供の時に記号を見たことがあるとか計算を見たなというのを、大学に入ったときに思い出してもらえればちょっと敷居が下がるのかなと、活躍できるのではと思います。

本場の雰囲気で体験できる野球ゲーム
本場の雰囲気で体験できる野球ゲーム

イベントでは、楽しい体験ブースがずらりと並んだ。メジャーリーグの本場さながらの雰囲気を味わえる最新テクノロジーを使ったゲームも登場した。

参加児童:
本物の会場でやってるみたいで楽しかった。

さらにはスポーツ界の第一人者が集まったディスカッションも開催し、前スタートアップ担当大臣の新藤義孝氏も参加した。

MLB クリス・マーティン氏:
私たちは試合の統計やデータを取得し、ファンに届けるためのテクノロジーを構築してきました。私たちは優れたアイデアを持つ世界中の人たちに扉を開いています。

京都大学大学院 情報学研究科 原田博司教授:
MLBで使いたい新しいテクノロジーをできるだけ早く教えていただければ、ICTスタートアップリーグのトピックにして、みんなで考えることができると思う 。

前スタートアップ担当大臣 新藤義孝議員:
いい技術は必ず採用される。私はこういうスタートアップが、チャンスを作る機会にできればと思う。

登壇者からは、「スタートアップも、プロスポーツのように世界に打って出るマインドをもってほしい」との声が上がった。

支援と環境整備がスタートアップ成長に不可欠

「Live News α」では、エコノミストの崔真淑(さい・ますみ)さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
世界を席巻するスタートアップ企業を育てるための取り組みですが、日本にはそうした企業は多いのでしょうか。

エコノミスト・崔真淑さん:
まだまだなのかなと思います。創業10年ほどで企業価値の評価額が1000億円を超えるような非上場企業をユニコーン企業と言いますが、国別にユニコーン企業の数を比較してみると、アメリカと中国が突出していて、数百社を優に超えるという動きになっています。

一方で、各種調査を見ると、日本には10社もないとの報告もあるんです。これは経済成長の新たな原動力としてのポテンシャルを十分に引き出せていない結果とも言えると思います。

日本を元気にするためにも、スタートアップ支援や規制緩和、資金調達環境の改善など、政府と民間がまだまだしていく必要があると思います。

堤キャスター:
スタートアップ企業を支援する取り組みについて、どのようにご覧になっていますか。

エコノミスト・崔真淑さん:
こうしたスタートアップ企業について、「政府や民間企業がわざわざ支援をする必要があるのか」という批判もあります。

しかし、各種研究を見てみると、OECD諸国におけるスタートアップ企業の雇用の創出能力や、イノベーションを生み出す力が非常に際立っていることが報告されています。

ただ、スタートアップ企業は非常に脆いということも知られていますので、資金調達や採用などをサポートするといった、政府や民間による支援が必要だと言われています。

さらに、スタートアップを中心としたイノベーションは、他産業へも波及させることも報告されており、結果として、私たちの生活を豊かにするということも示唆されています。なので、こうした取り組みが増えるのは、とても素晴らしいと思います。

直面する壁は資金調達の格差と多様性

堤キャスター:
そうした支援において、課題はあるのでしょうか。

エコノミスト・崔真淑さん:
共通して言えるのは、スタートアップは資金調達や人材確保といった課題を抱えていることが多々あります。

特に女性起業家は、無意識のバイアスやネットワークの不均衡から、資金調達において男性起業家に比べるとディスカウントされやすいということも報告されています。

私自身も、今、東大や京大の先生方と共同研究をしています。多様な視点がイノベーションを促すことはよく知られており、起業家精神を阻む壁の突破が必要になると考えています。

堤キャスター:
イノベーションにおいての第一歩は、人間が抱える課題を知ることだと思います。こうしたイベントでの体験が何か行動を起こすきっかけにつながるといいですね。
(「Live News α」3月17日放送分より)