静岡県沼津市で長年愛されていた水族館「あわしまマリンパーク」が突然の閉園を発表してから1年が経過した。閉園の知らせにショックを受け、再建に乗り出したのは元お笑い芸人の放送作家だ。経営はまったくの素人だが、園を復活させたいと願う強い思いで日々奮闘を続けた結果、徐々に成果が表れてきている。

突然の閉園となった水族館

復活したアシカショー
復活したアシカショー
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静岡県沼津市の水族館「あわしまマリンパーク」。

3連休の中日となった2025年2月23日は多くの家族連れなどで賑わっていた。

閉園のお知らせ
閉園のお知らせ

しかし、1年前には「老朽化した設備が日々の営業に耐えられなくなるため2月12日をもちまして閉園させて頂くことになりました」と突然の発表があった。

閉園の知らせは瞬く間に広まり来園者が殺到。

閉園日は2週間ほど伸びたが、老朽化や厳しい資金繰りもあり2024年2月25日に閉園した。

新社長は経営経験のない1人のファン

突然の閉園だったが従業員たちが再開を目指す中、新たなオーナーに手をあげたのは元お笑い芸人でバラエティや情報番組などで放送作家として活躍する今村クニトさんだ。

この水族館も舞台の1つとなっているアニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」の大ファンだったことをきっかけに「なんとかしたい」と個人で株式を取得したという。

今村さんは「こんなの絶対もっと盛り上げますし、伸ばすことができるのでやらせてください」と再建への意気込みを語った。

アニメキャラクターが描かれた連絡船
アニメキャラクターが描かれた連絡船

地域の理解を一番に考えた今村社長は、2024年4月に行われた住民説明会で「みんなで作る水族館だと思っている。ひとりひとり地元の人に説明するので、もし力を貸してもらえたらとてもうれしい」と協力を訴え、地元のボランティアの手も借りながら2024年7月に営業再開へとこぎつけた。

(提供:あわしまマリンパーク)
(提供:あわしまマリンパーク)

また、再建に向けては元お笑い芸人や放送作家としての自らの持ち味を発揮。

イベントがあれば自らマイクを握り、沼津市の頼重市長には協力を直談判した。

さらに、その幅広い人脈を活かして有名人などを招待したイベントを企画。

年間パスの販売強化や移動水族館の展開など、収益性を高める取り組みも進め水族館を盛り上げてきた。

突然の閉園から1年経ったいま

満車状態の駐車場
満車状態の駐車場

閉園から1年が経とうとしていた2月23日。

駐車場はほぼ満車状態で、動物たちのエサやり体験には順番待ちの列ができるなど水族館は多くの人で賑わいを見せていた。

復活したイルカショー
復活したイルカショー

再オープンした当初は行っていなかったアシカショーやイルカショーなども復活。

地道な努力を続けた成果もあり、いまでは来園者も閉園前の8割まで戻った。

収益性のアップにより12月からは2カ月連続で黒字となるなど再建に向けた歩みは確実に進んでいる。

来場者
来場者

初めて訪れたという来園者は「近くで触れ合えることができて新しい体験ができた。残っていってほしい」と喜びの表情を見せ、別の来園者は「なくなるかもと思って去年すごく悲しんでいたものが元に戻りつつあるのがうれしい」と口にした。

次のステップは“海の公園”

今村社長は「いちファンとして”あわしま”がなくなってしまうという絶望的な気持ちだったところから、今日みたいにどこに行ってもみんなが笑っているのを見てうれしいしありがたい」と話した上で「マリンパークなので “海の公園”と言われるような次のステップに行けたらいい」と新たな目標を掲げる。

あわしまマリンパークのカエル館外観
あわしまマリンパークのカエル館外観

施設の老朽化や財政面での安定など乗り越えなければならないハードルはあるものの、社長の思いに揺らぎはなく次のステップに向けた取り組みは着実に進んでいる。

(テレビ静岡)

テレビ静岡
テレビ静岡

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