まだまだ続く飲食料品の激しい物価上昇
帝国データバンクは、2025年値上がりする食品の品目数が累計で1万4409品目となり、2024年の1万2520品目を超えたと発表した。激しい物価高騰が続いている。
さらに6月と7月は単月で前年を大幅に上回る、1000品目超の値上げが予定されているということで、帝国データバンクは「2025年における飲食料品値上げの勢いは2024年に比べて強い状態が続くことが予想される」と見ている。
チーズ市場微減…それでも前年比108%の“チーズ”とは
物価高騰のあおりをうけて、年齢性別を問わず人気のチーズでさえも市場は伸びず前年比99%と微減になっている。
そのような中でも売り上げが伸びている“チーズ”がある。それがチーズを主原料とし、甘みを加えたスイーツ系の食品「チーズデザート」だ。
デザートチーズ市場は、前年比108%と市場を上回る成長を見せている。
(インテージSRI+ デザートチーズ市場(デザートチーズ市場は森永乳業定義)2024年4月~2025 年1月、2023年4月~2024年1月比 累計販売金額)
チーズデザートが売れるワケ
チーズデザートはなぜ売れるのか、チーズプロフェッショナル協会会長の坂上あきさんに聞いた。

チーズプロフェッショナル協会会長 坂上あきさん:
チーズデザートは他のスイーツに比べて糖質が比較的低めで、罪悪感なく食べられる“ヘルシー系スイーツ”として注目されています。パッケージの表面に糖質表示がありアピールされています。
また、日持ちする商品が多く、一口サイズで、開封しやすくパッと食べることができるので、忙しい現代人にとって「いつでも食べられる安心感」も魅力となっていますし、いちご・マンゴー・レモンなどのフルーツ系や、チョコレート・抹茶など和洋を問わない風味のバリエーションがあり、飽きが来ません。
「ヘルシーさ」「冷蔵保存可能」「サイズ感がちょうどよい」といったポイントや、「手ごろな価格」も支持され、需要が伸びています。
健康志向、コスパ、タイパの3拍子がそろった商品ということだろう。
「チーズデザート」シェア8割のトップ企業がイベント開催
チーズデザートは、もともと日本では馴染みはなかった。しかし、2009年に六甲バター株式会社 (QBB)が開発・発売を開始し、現在、チーズデザート市場の8割を占めるリーディングカンパニーとなっている。

そのQBBの本社は兵庫県神戸市だが、3月、初めて東京でサンプルを配布するイベントを開催した。

QBBチーズデザート商品開発者 斎藤安希子さん:
原料を選ぶところから、その組み合わせ、レシピを作るところを、本当に手を抜かずに何度も何度も、試作を組み合わせて、最高のバランスを見つけ出したものがこちらの商品になります。スイーツのように味の変化を楽しんでいただけます。
現場でサンプリングイベントに参加した商品開発者の斎藤安希子さんは、一方で、「開発者としては良い原料を集めてきて皆様にお手軽にとって、いただけるような価格で設計するところが、とても苦労がありますが」とも話し、原材料費が高騰する中での商品開発の苦労もにじませた。

QBBは2日間で約6,000人に「白桃&アールグレイ」のサンプルを配布、最終日はかなり早めに予定数を終了したという。
「これ知ってる!」「美味しいよね」「試食してみておいしかった」と声をかけられ現場で購入する人や、販売店を尋ねてくる人も多く、これまで行ってきた関西でのサンプリングとはまた違った手ごたえを感じたという。
チャンスは“大人女子”の夜のリラックスタイムに
シェア8割を誇るQBBに対し、森永乳業が「大人向け」の新たな商品を打ち出した。

売り上げ世界No.1のクリームチーズブランド「フィラデルフィア」シリーズから発売した、「フィラデルフィアデザート クリームチーズと2種のドライフルーツ&ナッツ/クリームチーズと2種の柑橘ピール&ナッツ」だ。

これまで森永乳業は、子供から高齢者まで幅広い層にむけた「クラフト 小さなチーズケーキ」シリーズを出していたが、なぜ大人向けにしたのか。

森永乳業マーケティング本部チーズ事業部長の伏見隆之さんは「夕食後と夜食といった、夜のリラックスして、時間帯に喫食いただくことを設定して味づくりを致しました」と話す。
森永乳業の調査によると、甘いフレーバーチーズを食べるのは、お酒のおつまみや夕食時が上位を占めており、夕食後のリラックスタイムや寝るまでの間食としてはまだ限られているという。原材料に洋酒を使用しているということで、夕食後から寝る間での間を新たな“市場”として狙いを定めていることが伝わってくる。
“映え”の個包装も人気の秘密?
チーズデザートは“ヘルシー系”である一方で、「個包装」かつ高いデザイン性や、手を汚さず食べることができることが特徴でもある。

明治サンモレは、高級感を感じられるゴールドで、おしゃれな“シェル型”の形状をしており、貝を開くようにあけることができるので手が汚れる心配もない。

また、森永のフィラデルフィアデザート個包装のパッケージは、12種類の“癒し系”イラストの中からランダムで6種類が入り、手が汚れないよう開封する際に“持ち手”をつくることができるようになっている。

食品の強みについては「情緒性」と「機能性」の二つの側面から考えることが多いが、チーズデザートは「情緒性」が高いとともに「機能性」も併せ持つ商品と言えるのではないか。
メイド・イン・ジャパンの強力スイーツに成長期待
このように伸びているチーズデザートだが、坂上会長は「まだまだ『チーズデザート』そのものの認知が浸透していません」と指摘する。
確かに、チーズデザートの市場規模は約50億円で、大きいとはいえない。
そこからも、認知度が低い、つまり知名度が低くあまり知られていないことがわかる。
実際、都内の複数のスーパーマーケットを確認したところ、チーズデザートを置いているのは、チーズ売り場に一定の広さを確保できる大規模店舗だった。
一方で、今後については「海外、特にアジア圏では、元々甘い乳製品が好まれており、高品質な日本のチーズデザートは人気が高まっています」と、“メイド・イン・ジャパン”のスイーツとしてグローバルな評価への期待感を示した。
メイド・イン・ジャパンのラーメンが海外で高い人気を誇っているように、チーズデザートがメイド・イン・ジャパンの強力な商品として海外展開できるのか、注目していきたい。
【取材・執筆=フジテレビ経済部 小川 美那】