近年、中国軍の無人機による日本周辺での活動が活発化している。
防衛省は、日本の領空を侵犯する恐れのある航空機に対処する自衛隊の対領空侵犯措置で警戒を強めているが、部隊への負担は深刻だ。

中国軍の無人機による活動は活発化・拡大化

2025年2月26日、中国の無人機が東シナ海の上空から、沖縄本島と宮古島の間を南下し、太平洋上空に出たことが確認された。確認されたのは、中国軍の偵察・攻撃型無人機「GJー2」1機。初確認の新たな機種で、防衛省がこれまで確認した無人機では6機種目となる。

中国軍の無人機による活動は活発化・拡大化していて、防衛省の公表ベースで、2013年は1機、2017年、2018年にそれぞれ1機、2021年に3機と、従来の確認機数は、わずかにとどまっていた。
しかし、その後2022年には8機、2023年に10機、2024年に20機と近年確認数が急増、2025年には、3月5日までにすでに9機の(推定無人機含む)飛行が日本周辺で確認されている。

攻撃型無人機となると、ミサイルや爆弾を搭載することも可能という。

防衛省内からは、「本当に考えないといけない。活動が活発化している無人機に対する対領空侵犯措置は、かなり厳しい」との意見も出るなど、状況は深刻化している。

空幕長「無人機に対して有人機で対応…非常にアンバランス感」

防衛省・自衛隊が導入している日本の無人機は、情報収集や警戒監視用途の無人機のみであり、攻撃型の無人機はまだ導入されていない。

中国軍の無人機による活動が活発・拡大化しているなか、航空自衛隊は戦闘機でのスクランブル(緊急発進)で対応している。

ただし、戦闘機による無人機に対するスクランブル対応には、無人機と戦闘機で飛行時間や飛行高度、飛行速度など様々な違いがあり、隊員の大きな負担となるという課題を抱えている

まず、飛行時間について。無人機は一般的に20~30時間飛行できるのに対し、戦闘機は2~3時間しか飛行できない。
そのため、対領空侵犯措置には複数機で対応する必要があり、大きな人的コストがかかる。

さらに、飛行高度でも、機種にもよるがジェット型無人機の場合はかなり高い高度まで上昇が可能。一方で、有人の戦闘機では、無人機が飛行可能な高い高度まで行くのは難しさもある。

内倉空幕長は5日、中国の無人機に対して日本側が有人戦闘機で対応することについて、「誰も乗ってない、誰も疲れない無人機に対して、有人機で対応するということは、非常にアンバランス感を感じる」と会見で語った。

省内でも「部隊への負担が大きい」「ただでさえ人員が少ないのに、無人機による対領侵も考えないといけなくなってきた」と懸念が高まる中、日本側も無人機で対処するべきだとの意見も出ている。

吉田統幕長も6日の会見で「将来的には、我々が無人機を導入していった場合は、無人機を活用した対領空侵犯措置のあり方も検討の対象になると思う」と述べた。

しかし、ことはそう簡単ではないという。

日本側が領空侵犯への対処に仮に無人機での対応にしたとしても、「無人機は速度が遅いため、緊急発進しても間に合うのか」という問題があるという。
さらに、「攻撃型の無人機を持つことができるのか」といった問題も指摘されるほか、「無人機のビデオ撮影に頼れるのか」など懸念の声もあり、対領空侵犯措置で無人機を活用するには複数の課題がある。
(フジテレビ報道局政治部・鈴木杏実)

鈴木杏実
鈴木杏実

フジテレビ報道局政治部記者。防衛省担当。