明石市が不払い「養育費」の立て替え・回収

“ひとり親家庭”の貧困の要因の一つとされているのが、離婚相手と取り決めたはずの子どもの養育費の“不払い”だ。

厚生労働省の「平成28(2016)年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」によると、母子家庭において、離婚した父親から、現在も養育費の支払いを受けている割合は24.3%にとどまっている。そして「養育費を受けたことがない」が56.0%で、一度も養育費を受け取ったことがない母親が過半数を占めていたのだ。

こうした中、兵庫県明石市は、養育費を支払ってもらえていない人を対象にした、全国初だという独自の支援事業を7月1日から8月31日までの期間限定で行った

この支援事業は、養育費を受け取れていない人にかわって、市が、本来、養育費を支払うべき人に催促。それでも支払われない場合には市が立て替え、その後、立て替えた分は養育費を支払うべき人から回収するというものだ。

「立て替え~回収」の手順

さらに詳しい手順を見ていくと…

まずは、ひとり親家庭の人から申請を受けた市が、養育費を支払うべき人に養育費の支払いを催促。

約2週間たっても、支払いがされない時には、市が養育費を立て替える。

そして、立て替えた分は養育費を支払うべき人に請求し、回収する仕組みだ。

明石市のリリースより引用
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今年6月分または7月分の支払われていない養育費を、1カ月分に限り、子ども1人につき5万円まで立て替えるという。

対象者にも条件があり、それが以下の3つ。

・子どもが明石に住んでいる(明石市に住民票がある)
・養育費について調停調書や公正証書などの公的な取り決めをしている
・6月分または7月分の養育費を受け取れていない

明石市HP

申し込み17件のうち5件立て替え

この事業には、8月31日の受付期間までに17件の申し込みがあり、このうち5件で立て替えを行い、1件は立て替え前に養育費の支払いがあった。なお、現段階での回収は0件。

残り11件は、支払い催促の段階で、まだ立て替えの段階に至っておらず、事業は継続しているのだという。

ひとり親にとってはとてもありがたい支援事業だが、回収が0件ということは行政が介入しても回収すること自体が困難なのか?また、どのような方法で養育費を支払うべき人とコンタクトをとるのか?

兵庫県明石市の担当者に話を聞いた。

背景には市長の強い思いがあった

――不払い「養育費」に関する独自の支援事業を実施した理由は?

明石市では2014年から、養育費の不払い問題に関する取り組みを始めています。

背景には、泉市長の強い思いがあります。弁護士時代から養育費の不払い問題について、支援が足りていないと感じていました。

こうした中、2018年11月からは民間の保証会社と連携して、「養育費立て替えのパイロット事業」を行ってきました。
これは、離婚相手と養育費の取り決めをした人を対象に、養育費が1年間不払いだった場合、保証会社が年間最大60万円を立て替え、養育費を支払うべき人には催促や給与の差し押さえを実施する、というものでした。

ただ、これでは恒久的(=いつまでも続く)なシステムとして運用するのは難しく、民間の保証会社と連携するのではなく、市が立て替え・回収に関する全てを運用する方がいいのでは、と考えました。

そして、市が全てを運用する、今回の支援事業を期間限定で行うことになったというわけです。


――7、8月の期間限定なのはなぜ?

緊急性を重視したためです。コロナ禍において、ひとり親家庭のお子さんには養育費の不払いが普段より大きな影響になります。厳しい状況にあるお子さんを支援するため、緊急に実施を決めました。


――上限は5万円。この理由は?

養育費の平均額が約4万円なので、少し上乗せして5万円にしました。

(画像はイメージ)

「回収0件」今後、回収に至る可能性はあります

――回収は0件。これはなぜ?

まだ回収の段階に至っていないからです。期間内に受け付けた事業は継続していますので、今後、回収に至る可能性はあります。


――「養育費立て替えのパイロット事業」では、回収に至ったケースはあった?

あります。


――回収に至るのはやはり難しい?

難しいです。

ただ、第3者の介入によって養育費の支払いが始まるケースも報告されていますので、回収の可能性はゼロではないと考えています。

怖い思いをしたという報告はない

――今回の事業では、回収は市の職員が行っている?

はい。市の職員が行っています。


――回収で怖い思いをしたことは?

怖い思いをしたという報告は、今のところありません。


――それはなぜ?

養育費を支払うべき人への催促は、基本は「照会書」を送付する方法をとっているためです。自宅に取り立てに行くわけではありません。

照会書には、夫婦の取り決めの状況、支払っていない理由などを書く欄があり、そこに記入後、返送してもらう。基本、やりとりは書面だけで終了しています。


――回収できなかった場合、立て替えたお金はどうなる?

立て替えたお金は、立て替えた時点で市の債権になります。

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根本的な解決には国の制度設計が必要

――2カ月やってみて、見えてきた課題はある?

まだ回収まで至っていないので、今は総括する段階ではないと考えています。


――今回は期間限定。恒久的な事業になる可能性は?

検討中です。


――養育費の不払い問題はどうすればなくせると思う?

現状、養育費の取り決めは個々の夫婦の判断に任されていて、不払いが生じた場合、各自治体が対応しているのが現状です。

ただ、自治体だけで解決するのは困難なので、国が、養育費の不払いが生じた場合の取り決めをし、制度設計をしてもらえたら、と考えています。


明石市は、ヨーロッパや韓国には、国が養育費の立て替えを行う制度があるとし、「国による養育費の一部の立替・回収制度」の創設を提言している。養育費を支払うべき人がしっかり払い続けることが基本だが、根本的な解決のため、国がこうした制度に乗り出すことにも期待したい。
 

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記事 4293 プライムオンライン編集部

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