2024年はホームで無類の強さを発揮し、3年ぶりにJ1復帰を果たしたオリジナル10の清水エスパルス。開幕3戦で負けなしと順調なスタートを切ったが、長年の課題であるスタジアム問題のゴールはなかなか見えない。
昨シーズン・ホームで無類の強さ発揮

2月22日のホーム初戦も見事な勝利で飾った清水エスパルス。
「勝ってよかった。完璧だった」と話す子どもや「カピシャーバ選手が好きなのでカピシャーバ選手が決めてすごく良かった」話す少年など、開幕2連勝とあって帰路につくサポーターたちからは喜びの声が溢れた。
サポーターとチームが”ワンファミリー”となって大きな力を生み出す静岡市清水区のIAIスタジアム日本平。
ここにはエスパルスのホームスタジアムとしてサポーターの思いが詰まっている。

子どもと一緒に観戦したサポーターの女性は「聖地みたいな感じ。子供たちと一緒に来て毎回が思い出になっていく」と話し、男の子は「知らない人とも一緒に応援できてエスパルスサポーターとして団結できる場所」とスタジアムへの熱い思いを語った。
サポーターもチームも新スタジアムを熱望

一方でスタジアムのアクセスや規模などについては「すごく見やすいが、アクセスがちょっと。これから駐車場まで相当歩くから」といった意見や「J1に上がってエスパルスの規模が大きくなっていく中では、ちょっとスタジアムとして物足りない」といった現状に関する不満も聞かれた。
更に「もう年を取ってきたから、電車で来てホームからすぐスタジアムに行けるのがいい。(新スタジアムが)早くできればいい」といったものや「本当は向こうの方(清水駅の方)がいい」とする声もあった。

このようにサポーターから期待の声が上がるのが新たなスタジアムの計画だ。
静岡市が所有する日本平スタジアムは完成から30年以上が経ち、老朽化が進むとともに駅からも遠くアクセスが課題となっている。

そのため、清水エスパルスも静岡市に新スタジアムの整備を繰り返し求めてきた。
2024年11月のJ1復帰報告の際にも、静岡市の難波喬司 市長に対し「IAIスタジアムはキャパシティが収まらないくらいになってきているので、ぜひこの明るいニュース(J1昇格)で新スタジアムへの弾みがつけば」と話したのは清水エスパルスの山室晋哉 社長だ。
候補地はアクセス良好の広大な土地

こうした中、スタジアムの移転先として浮上しているのがJR清水駅と目と鼻の先にあり、交通の便が非常に良い民間事業者が所有している製油所跡地だ。
石油元売り最大手・エネオスの土地で東京ドーム3個分の広さとなっている。
静岡市はエネオスと2021年に地域づくりに関連した合意を結び、2022年度にはスタジアムの最有力候補地に選んだ。

2023年5月、エネオスホールディングス・齊藤猛 社長(当時)は「エネオスとしてはぜひこのプロジェクトを皆さまのために成功させたい」と述べ、静岡市の難波喬司 市長も「とにかく急いで調査を行い社会に提示して次の展開を進めていくのが大事。そういう意味ではちゃんと始めることができた」と確かな手応えを感じていた。
スタジアム新設計画の進捗は

新スタジアムへの気運は盛り上がりを見せているが、実際に計画はどこまで進んでいるのか?2025年2月21日に開かれた市長定例会見で尋ねてみると「地権者との調整がなかなかつかないので発表できない状況。あそこにスタジアムシティを作りたいとかいろいろな考えを持っている人がいることは確認できているが、土地を持っている人、具体的にいうとエネオス。エネオスと調整中ということになる」と説明。
難波市長は2024年度中にスタジアム整備計画についての最終決定を発表する予定だったそうだが、協議の進捗は遅れ気味となっているようだ。
また、市の担当者は交渉が進んだとしても土地をどこが所有するかなど「まずは基本的な部分の調整が必要」と話す。

静岡市企画課の鈴木健一 課長補佐は「土地をどうやって扱っていくのか。例えば市の土地にするのかしないのか、民間の開発にあたり所有も民間でやってもらうのか。様々な可能性があるので、まずはそこの条件整理から事業者の手上げ(応募)に向け、その機運を高めていくことが直近の課題」としている。
そして、気になるのは採算性だ。
市の試算によれば新スタジアムの建設費は240億円となっている。
莫大な費用の負担に市がどこまで関与するかも今後の検討課題だが、難波市長はこれまでことあるごとに「民間主体の事業」と強調してきた。
スタジアムを核とした街づくりへ

市はスタジアムへのホテル並びに商業施設の併設や近くの魚市場のリニューアルなど周辺の再開発も含めたエリア一体となった“お金を稼げる”街づくりを目指していて、前出の鈴木課長補佐は「単にスタジアムだけでビジネスが成功するものではない。(清水エスパルスは)年間20試合くらいの開催なので、そのためだけの施設だとどうしても赤字になってしまう」として「(周辺も含めた)面的な整備が必要になってくる。あくまでスタジアムを中心とした街づくりという点で、民間も含めて投資してもらうことでプラスに転じる取り組みにしたい」と意気込む。

スタジアムだけではなく、スタジアムを中心にした清水の新たな街づくりへ。
完成までの道のりはまだまだ長そうだが、取り組みが着実に進んでいくことが期待されている。
(テレビ静岡)