「イット!」では「フジテレビの反省」と題し、中居正広氏を巡るトラブルとフジテレビの対応についてシリーズでお伝えしています。
24日は、出演者によるスキャンダルでその対応が問われたイギリスの公共放送BBCについてです。
BBCはこうした問題にどう向き合ってきたのか、そこからフジテレビが学ぶべきことは何なのか。
BBCの元職員でメディア業界の専門家に聞きました。
フジテレビは元タレント・中居正広氏と女性とのトラブルを巡る対応が批判され、多くのスポンサーがCMの放送を見合わせるなど信頼を失う事態となっています。
これは、2012年にイギリスの公共放送BBCが直面していた状況と類似しています。
BBCの人気司会者で国民的スターだったジミー・サビル氏。
2011年に84歳で死去し、その功績がたたえられましたが、サビル氏の死後、少年や少女などへの性加害疑惑が浮上したのです。
疑惑を受け、BBCの調査番組が取材を開始。
しかし、番組は放送直前で取りやめとなりました。
翌年、タブロイド紙などがこの問題を報じると、BBCの隠ぺい体質が批判され、会長が辞任する事態に。
その後の調査で、サビル氏は40年以上にわたり、約450人に性的虐待を行っていたことが判明しました。
BBC内では以前からその噂があったものの、対策を講じなかったことが明らかになり、局の信頼は大きく揺らぎました。
BBC元幹部・マーカス・ライダーさん:
この事件はBBCに対する国民の信頼を大きく揺るがしました。そして、BBC内で働く人々にも大きな影響を与えました。
BBCの元幹部で、現在はメディア業界で働く人を支援する団体のCEOを務めるマーカス・ライダーさん。
サビル氏の事案が発覚した際には、職員として、起きたことが信じられなかったと振り返ります。
世界で最も権威があるとされるBBCで、一体なぜ、このようなことが起きたのでしょうか。
BBC元幹部・マーカス・ライダーさん:
(Q.事件発覚になぜ時間がかかった?)原因は当時のBBCという組織における文化、報告の仕組み、そして上下関係の構造にあると思います。
サビル事件を受け、2012年にBBCは外部有識者による2つの調査を実施しました。
1つは、調査報道番組の放送中止の経緯や経営側の対応を検証。
もう1つは、組織文化やガバナンスの問題を調査するものでした。
その後、BBCはいち早く検証番組を放送し、問題発覚2カ月後には1つ目の調査報告を発表。
放送中止に「上層部の圧力はあったといえない」としながらも、経営陣のリーダーシップの欠如が批判されました。
調査開始から3年半後の2016年には、2つ目の報告書を発表。
大物スターへの忖度(そんたく)、苦情を言いづらい環境、ガバナンスの欠如が指摘されました。
これらのBBCの対応について、ライダーさんは「BBCはあらゆる権力や機関を調査する時と同じくらい徹底して自らを調査したという点で、まさに模範的なケーススタディーだったと思います」と指摘します。
しかしライダーさんによると、イギリスのテレビ業界では、4割以上の人がセクハラなど何らかのハラスメントを目撃していることが最近の調査で明らかになりました。
さらにBBCでは2023年、2つの不祥事が発覚。
BBCラジオの元司会者が、在籍中に複数の女性に対して性的暴行をしていたと報じられました。
また、著名なニュースキャスターが子どものわいせつ画像を所持していたことが明らかになり、2024年、有罪判決を言い渡されました。
サビル事件を受け、さまざまな対策をとったBBCでもこのような事案がなくならないのは、なぜなのでしょうか。
ライダーさんは、スタッフが声を上げられず、被害を告発できなかったことに加え、大きな問題が根底にあると指摘します。
BBC元幹部・マーカス・ライダーさん:
最大の課題は、番組の成功がタレントの人気に大きく依存していることです。これは業界全体の問題であり、簡単には解決できません。
そのうえで、今回のフジテレビによる対応については「私がフジテレビに勧めるのは、BBCと同じように透明性を保ち、報道機関として徹底的に調査することです」とアドバイスしました。
現在、フジテレビでは第三者委員会による調査が行われ、3月末をめどに報告書がまとまる見通しです。
BBC元幹部・マーカス・ライダーさん:
自分自身を調査するのは本当に難しいと思います。自分の会社を調査するのならば、第三者にするべき。特に、上層部を調査するならマストです。コーポレート・ガバナンスの観点からは、それが正しい方法だと思います。
最後に、フジテレビが視聴者やスポンサーの信頼を取り戻すには、どうするべきか聞きました。
BBC元幹部・マーカス・ライダーさん:
失われた信頼を取り戻すには時間がかかります。そのために必要なのは「透明性」「誠実さ」「一貫性」です。(スポンサーのためではなく)フジテレビは自らのために、そうすべきです。
2月22日・23日、FNNは電話調査(RDD固定・携帯)で世論調査を行いました。
その中で、これまでのフジテレビの対応について伺いました。
「評価しない」と答えた人は「あまり(37.9%)」と「全く(20.4%)」を合わせて58.3%。
「評価する」と答えたのは36.3%でした。
さらに、フジテレビが信頼回復するために必要な対応についても伺いました。
当てはまるものを全て答えてもらったところ、「コンプライアンスの徹底と意識改革」が49.5%、「経営陣の刷新」が48.7%、「具体的な再発防止の策定が」47.5%、「トラブルの実態解明」が44.4%、「企業風土の改革」が43.8%、「企業ガバナンスの再構築」が36.3%となりました。
そして、このうち全ての選択肢を選んだ人は19.8%でした。
SPキャスター パトリック・ハーラン氏:
世論に沿った結果かなと思います。あと、第三者委員会も同じようなことを言ってくるんじゃないかなと思います。この中で難しいのは企業風土の改革。はかりづらいし漠然としているし、あと、社則みたいに簡単に書き換えられるものではなく、直すのに時間と気力がかかるかなと思いますが、本当に信頼回復がしたいなら、全てに一生懸命取り組まなきゃいけないなと思います。
宮司愛海キャスター:
1回目の会見から1カ月が経つというタイミングの中で、どの項目も50%に迫る、とても割合としては高いものとなっている。つまり、フジテレビが今後、向き合って解決していかなければならない課題というのがこれだけたくさんあるということを、改めてこの数字から感じました。すでに第三者委員会の結果を待たずに調査チームも社内で立ち上がっていますが、私もやるべきことをしっかりとやっていきたいなと思います。
青井実キャスター:
まさに全ての視聴者の方と向き合っていくことが求められています。