袋井市に住む中国籍の男子高校生に暴行を加えてケガをさせた上、車のトランク内に監禁し、浜名湖畔の川に投げ捨て溺死させた罪に問われているフィリピン国籍の男の裁判員裁判が6月23日から始まり、男は殺意を否定しました。
傷害・監禁・殺人の罪で起訴されているのはフィリピン国籍で浜松市に住む無職の男(19)です。
起訴状によりますと被告は2024年2月、懲役17年の判決を受けた無職の男(22)と共に袋井市に住む中国籍の男子高校生(当時17)の顔や体を殴ったり蹴ったりしたほか、ガラス製の酒瓶で頭を2回殴打し、体を数回にわたって十字レンチで殴った上、後頭部をコンクリート製の輪留めに打ち付け、意識を著しく低下させるケガをさせたとされています。
また、瀕死状態の高校生を車のトランクに押し込んで監禁し、移動した先でも顔面を複数回蹴ったほか、頭を3回地面に打ち付け、最後は湖につながる川へ突き落として溺死させたと見られています。
6月23日から始まった初公判で、被告は傷害と監禁の罪については認める一方、殺人罪については「殺すつもりはありませんでした」と殺意を否定しました。
続く冒頭陳述で、検察側は事件に至ったきっかけについて、知人宅で男子高校生を含む8人で酒を飲んでいた際、男子高校生が年上である被告に敬語を使わずに話しかけ、注意されたにも関わらず、その後も“タメ口”で話し続けたことから被告が怒りを増幅させたと明らかにしました。
その上で、高校生がその場にいた人物と口論を始め、被告が妹のようにかわいがっていた女性が止めに入ったところ倒されたことが最終的な引き金となり暴行に及んだということです。
その態様は上述の通り凄惨で、「昏睡状態に近い高校生を湖に転落させた行為は死亡させる危険性が極めて高い行為で、当時の水温や気温などから被告もその危険性を十分にわかっていた」として、殺意があったと指摘しました。
また、「湖に転落させたのは高校生への暴行が発覚するのを防ぐため、つまり口封じをするため」として、高校生を殺害する動機があったとも述べています。
そして、「特定少年ではあるものの保護処分の可能性も許容性も認められず、刑事処分を科すべき」と主張しました。
これに対し、弁護側は事件の経緯について、「タメ口をきかれて被告が注意したところ、高校生が被告に張り手をしたので怒りの感情を我慢できなくなった」と話し、「突き落とす際、被告は高校生に意識があったと認識していて、水に入れば覚醒すると考えていた。落とした先は水深も浅く、死亡危険性を認識していない」と被告同様に殺意を否定しています。
その上で、フィリピン国籍の被告は1年以上の懲役が確定すると強制送還になることから、「12歳で来日し日本に家族もいる。タガログ語も日本語も満足に扱えず、退去強制となると社会復帰が困難」として少年院への送致など保護処分が妥当であると訴えました。