ロシアのウクライナ侵攻から24日で3年になる。停戦を目指すという米露の接触も始まるなか、進化を遂げたドローンが戦争のありかたを変える存在になりつつある。

妨害電波を突破する「光ファイバードローン」

ロシア軍の猛攻を受けるウクライナのドネツク州。

ドローンに巻き付けられたものは光ファイバー
ドローンに巻き付けられたものは光ファイバー
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ウクライナの警察官が手にしている透明な繊維がぐるぐる巻き付いたものは、「光ファイバーで操縦する敵のドローン」だという。目に見えない電波で操縦できるドローンに、あえて光ファイバーという極細のケーブルをつけたわけは…。

能勢伸之フジテレビ特別解説委員:
電波の大敵、妨害電波を突破できるからなんです。

2月、ウクライナに隣接するポーランドを訪れたアメリカのヘグセス国防長官が構えていたのは、ドローンガン。ドローンを狂わせる妨害電波を出す装置だ。

センサーでドローンを次々に追い、妨害電波を当てる。するとドローンはコントロールを失い墜落。こうしてドローンは無力化される。

【画像】妨害電波で無力化されるドローンはこちら

能勢伸之フジテレビ特別解説委員:
しかし、光ファイバーで映像やシグナルをやり取りする光ファイバードローンは、そもそも電波を使わないので、妨害電波は通用しません。
ロシア軍だけでなく、ウクライナ軍も光ファイバードローンを採用しています。1機のドローンから伸びる光ファイバーは40kmもの長さのものもあり、樹木や建物という障害物をものともしません。

さらに、ドローンのカメラ映像を光ファイバーで操縦装置に直接送るため、映像の乱れは少なく、ナンバープレートの他、武器や車両を覆う偽装網の下の細かい部分もより精確に見え、狙いを定めることができる。

準戦略兵器としての可能性も

厳しい戦いの3年が兵器ドローンにもたらした進化は他にもある。
空中を飛ぶものも標的にすることが可能になったのだ。

飛行中のウクライナ軍のドローンを攻撃するロシアのドローン
飛行中のウクライナ軍のドローンを攻撃するロシアのドローン

ロシアのドローンは、地上を攻撃するだけでなく、飛行中のウクライナ軍のドローンを攻撃。
ウクライナ軍のドローンは攻撃ヘリコプターに体当たりする。

またウクライナは2024年12月、プロペラではなくジェット・エンジンで飛ぶドローン「ぺクロ」を披露。射程約700kmの「ドローンミサイル」という新たな分野の兵器だ。

ドローン攻撃にさらされたロシアの都市カザン。ロシア軍の大型爆撃機「ブラックジャック」の製造・改修拠点で、ウクライナからは直線距離で1000km近くある。

能勢伸之フジテレビ特別解説委員:
カザンを襲ったドローンは、飛距離600km以上のウクライナの国産ドローン「AN(アントノフ)-196」にそっくりです。1000km近く飛んだなら、ドローンは準戦略兵器としての可能性も見せています。戦場で敵と直接対峙するこれまでの兵器に取って代わる勢いで、戦争のあり方そのものを変える存在になりそうです。
(「イット!2月23日放送より)

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能勢伸之
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フジテレビ報道局特別解説委員。1958年京都市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。報道局勤務、防衛問題担当が長く、1999年のコソボ紛争をベオグラードとNATO本部の双方で取材。著書は「ミサイル防衛」(新潮新書)、「東アジアの軍事情勢はこれからどうなるのか」(PHP新書)、「検証 日本着弾」(共著)など。

イット!
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