トランプ大統領は平和賞に値する人物か

推薦状に関し否定も肯定もしなかった安倍首相 2月18日予算委員会
推薦状に関し否定も肯定もしなかった安倍首相 2月18日予算委員会
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安倍首相はたぶん、 「なんでバラすんだよ!オフレコの約束だろ」だと思ったに違いない。  トランプ米大統領は安倍さんが内緒でノーベル平和賞に推薦してくれたことを、 公表してしまった。 ま、オフレコを守らない奴はどこにでもいる。

問題はトランプが平和賞受賞に値する人物であるか、ということだ。 国民民主党の玉木代表は国会で、 「拉致も核も何ら解決していない。首相の北朝鮮への認識は甘い」と、 安倍さんを批判した。

でも玉木さん、あなた、東アジアの核をなくすために何かしました? 少なくともトランプは動機はどうあれ、行動はしてる。 金正恩と会ったり、脅したりすかしたり。  確かに北朝鮮の核問題はまだ解決していない。 ただこの核廃棄の動きは、良くも悪くももう後戻りできなくなっている。 トランプはたぶん来年再選される。 完全ではなくても、核放棄は進まざるをえないのだ。  

もちろん北は核のすべてを廃棄することはしないだろう。 つまり米朝のディールは日本にとって納得できる結末ではないのだが、世界の軍事リスクが大幅に下がることは事実なのだ。  

オバマ前大統領は平和賞に値する人物か

プラハで演説をするバラク・オバマ前大統領
プラハで演説をするバラク・オバマ前大統領

 僕は個人的にはトランプに平和賞を与えるべきではないと思う。

でも、ノーベル平和賞を受賞したオバマは何をしたか。 彼は「核をなくす」という感動的な演説を一度しただけだ。 日本に2度核爆弾を投下し20万人以上を殺した国の大統領が 「核をなくす」と言っただけで平和賞をもらった。 

2009年4月平和賞受賞のきっかけとなったプラハ演説
2009年4月平和賞受賞のきっかけとなったプラハ演説

あの時に、ノーベル平和賞というのは口先だけでももらえる不思議な賞なのだな、とわかった。 その程度の賞、と言っていいのかもしれぬ。 他の賞に比べ平和賞だけが妙に政治的なのだ。

オバマに比べれば、少なくとも北朝鮮のミサイル発射や核実験を、 今はストップさせているトランプの方がはるかに評価できる。 オバマにあげるくらいならトランプにもあげたら? 

口で平和を言うのは簡単だ。 何千回でも言える。 でも本当の平和をつかむためには、 銃口を相手に向けて脅したり、 時には相手を殺さなければいけない。    

2018年6月12日に実現した米朝首脳会談
2018年6月12日に実現した米朝首脳会談

今はまだ早いかもしれないが、 北朝鮮が本当に目に見える形で核廃棄を始めれば、 トランプは本当に平和賞の候補になるかもしれない。


【執筆:フジテレビ 解説委員 平井文夫】

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平井文夫
平井文夫

言わねばならぬことを言う。神は細部に宿る。
フジテレビ客員解説委員。1959年長崎市生まれ。82年フジテレビ入社。ワシントン特派員、編集長、政治部長、専任局長、「新報道2001」キャスター等を経て報道局上席解説委員に。2024年8月に退社。