日本一厳しいと言われる『兵庫県警察学校』。 ここで、警察官の卵たちが10カ月にわたる過酷な訓練を経て、ついに卒業の時を迎えた。

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その成長の軌跡と、警察官としての第一歩を踏み出す瞬間を追った。

■【動画で見る】“日本一厳しい”教場ついに卒業「愛情、厳しさ、情熱…教官に感謝」兵庫県警察学校の過酷10カ月

■29歳で「警察官」に挑戦

浦郷恵輔巡査:人生1回しかないので、自分が行きたいなって思った道に行こうかなって思いました。

浦郷恵輔巡査(29)。10年間会社員として働いた後、警察官を志した。

同期は高校卒業間もない、10歳ほど年下ばかり。妻と2人の子供がいる彼にとって、全寮制の教場で家族と離れて生活することは、大きな決断だった。

入学当初、浦郷巡査は基本的な装備の扱いにも手間取り、教官から厳しい指導を受けていた。

警棒を扱えば…。
教官:注目するところ、ちゃうやん。やり直せ。

しかし、その姿勢は次第に変化していく。

■幼い頃からの憧れ…厳しい現実に直面

一方、19歳の富田優稀巡査は、幼い頃からの夢を追いかけてここにいた。

富田優稀巡査:小さい頃にテレビで警察官を見て、女性だったんですけど、なんかすごい大きな背中で、自分もなりたいなって憧れて警察官になりました。

しかし、夢だけでは通用しない現実に直面する。 体力面での課題を抱える富田巡査は、厳しい訓練についていくのに苦労した。

ある日の訓練中、足を痛め、クラス担任の別所教官からストップがかかる場面もあった。

■実践的な訓練と成長

入学から半年が過ぎ、浦郷巡査は後輩の指導係に抜擢された。 かつて自身が苦労した経験を生かし、後輩たちへの指導にも熱が入る。

浦郷恵輔巡査:みんなできんと意味ないって言ったやんな。協力してやれや!

しかし、まだまだ現場で求められるレベルには達していない。

職務質問の訓練では、不審者役の教官との対応で、無線連絡に気を取られ、不審物を見逃してしまう場面もあった。

教官:浦郷が動静監視していたら気づいているはず。

■最後の試練

卒業式まで4日。 警察学校の伝統行事「さよなら教練」が行われた。学生たちにとって最後の試練だ。

ビル11階分の高低差がある「根性坂」を10往復する過酷な訓練だ。この試練を乗り越えた者だけが卒業できるとされている。

仲間と励まし合いながら、何度も坂を駆け上がる姿に、10カ月間の成長が表れていた。

こういう場面で浦郷巡査は存在感を発揮する。体力の残っている人が仲間の盾を持って、全員での完走を目指す。

浦郷恵輔巡査:みんなと比べて、自分は背負っているものがあるんで。この10カ月間、結構しんどかった。自分の糧になったのかなとは思います。

教官たちも、10カ月間で学生たちへの愛情が芽生えていた。

クラス担任 別所裕之警部補:10カ月間で学生たちに愛情、親心も芽生えている。まだまだ未成熟な部分もあったりして、このまま現場に送り出すのは大丈夫かな、現場で受傷事故遭わへんかなとか心配な部分もありますね、正直。

■卒業、そして新たな出発

ついに卒業の日を迎えた。浦郷巡査は最後に大役を任され、564期生を代表してスピーチを行った。

浦郷恵輔巡査:兵庫県警察学校で私たち初任科564期生、入校して10カ月がたちました。一変した生活、日々の厳しい訓練、愛情と厳しさ、情熱を持って指導してくださった教官方に、何度も何度も助けられ、卒業の日を迎えることができました。たくさんの方々への感謝を胸に、今、旅立ちます。

卒業式の日、浦郷巡査の家族の姿もあった。 浦郷巡査の子供が「かっこいい?パパ」と声をかけられると、恥ずかしそうにうなずく姿は、10カ月間の苦労が報われた瞬間だった。

警察学校を巣立った別所学級26人は、それぞれの配属先へと向かった。彼らの警察官としての道のりは、ここからが本当の始まりだ。厳しい現実が待ち受けているかもしれない。

富田優稀巡査
富田優稀巡査

しかし、この10カ月間でつちかった精神と技能、そして仲間との絆を胸に、彼らは公共の安全と秩序の維持という重要な使命に向かって歩み始めた。

浦郷恵輔巡査
浦郷恵輔巡査

警察官の仕事は、時に危険と隣り合わせだ。しかし、そこには市民の安全を守るという崇高な使命がある。浦郷巡査たち新人警察官の、これからの活躍に期待したい。

(関西テレビ「newsランナー」2025年2月11日放送)

関西テレビ
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