その一方で、所得税法は、政策的な見地から様々な「非課税所得」を定めており、その中に「心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するもの」を所得税の課税対象から除外し、わざわざ「税金はかからないよ」と言ってくれています。
さらにこれを受けて所得税法施行令30条は、(1)心身の損害に対する慰謝料その他の損害賠償金(休業損害を含む)、(2)不法行為等による資産の損害に対する損害賠償金、(3)相当の見舞金の3つについて非課税としています。

(1)は人身損害、(2)は物的損害に対応しますが、あなたが不幸にも巻き込まれてしまった事故のケースでいうと、治療費や休業損害、慰謝料などが(1)、スマートフォンの賠償金が(2)に当たります。
ちなみに、施行令は内閣が定める政令の一種で「しこうれい」と読みます。
政令は法律の定める抽象的なルールについて、さらに具体的に補足するために制定されるルールであり、主要な税法にはだいたい「○○法施行令」といった政令が用意されています。
似たものに「○○法施行規則」というものもありますが、これは主に各省庁が定めるルールで、施行令のルールをもとにさらに詳細な手続や基準を定めるためのものです。
なぜ課税されない?
交通事故の加害者から支払われる示談金や和解金(=損害賠償金)が例外的に非課税とされるのは「賠償金が本来あるべき資産の減少を補うために支払われるものでプラスマイナスゼロだからだ」といった説明がなされます。
また、交通事故に何ら関係のない国が所得税という名目で利益をかすめ取っていくことを容認しがたい国民感情に配慮したのだともいえます。
事業者は例外に注意を
「損害賠償金」であっても、賠償金の支払いを受ける被害者が事業所得者の場合には、例外の例外的に課税されるケースがあります。