人口減少が進み高齢化率が広島県トップの安芸太田町が、移住者を呼び込もうと町営の賃貸一戸建ての新築を進めている。特にファミリー層や若者世帯を対象にした“平屋”が注目を集め、すでに多くの希望者が現れている。その背景を追った。
移住希望者の切実な声「賃貸がない!」
中国自動車道の戸河内インターチェンジからほど近い場所に、新しく整備された住宅地がある。

そこに並ぶのは、落ち着いた色合いのおしゃれな平屋。安芸太田町が移住者向けに建設した町営住宅だ。ターゲットは新婚を含むファミリー層や若者世帯で、20戸が新築された。

移住希望者は、その地に骨をうずめる決心がない限り、「とりあえず賃貸に」というパターンが多い。

人口5,000人余りの安芸太田町では、空き家バンクのHPを見ても売り物件は多いが、賃貸は少ない。民間のアパートを含め、ここ10年ほどは賃貸物件が出てもすぐに埋まる状況が続き、移住希望者のニーズに必ずしも応えきれていなかった。

安芸太田町・企画課の佐々木直さんは「移住希望者から賃貸の問い合わせがすごく多い。しかもファミリー層からは、子どもが騒ぐから、できれば戸建てがいいという声を聞く」と賃貸戸建ての需要の高さを強調する。
1LDK 3万8000円から 1月末で半数に入居希望者
取材した住宅は、2LDKの広々とした平屋。

キッチン併設のリビングは窓が大きく、取材した日は外の雪景色が幻想的に見えた。リビングのほかに寝室に使える部屋が2つある。

家賃は1LDKが駐車場代込みで月3万8000円から。2LDKは月6万円。さらに、移住希望の子育て世帯は敷金免除、引っ越し費用も町が最大5万円補助する手厚さだ。1月末時点で、すでに半数近くの物件に入居希望者が現れているという。
“平屋”は移住者が地域とつながりやすい
安芸太田町の取り組みについて、番組コメンテーターの叡啓大学・保井俊之教授は「移住を成功させるポイントは、地域の人とつながること。アパートよりも平屋の一戸建ての方が、ご近所付き合いがしやすく、移住者が定着しやすい」と指摘する。

安芸太田町は高速道路を使えば広島市まで車で1時間程度。移住して町外で働く人もいるということだ。
町の2023年の人口は5,255人、前の年より155人減で高齢化率は52%を超え、広島県トップだったが、移住者は12世帯30人となった。
移住希望者向けには、内装をリノベーションした民家に有料で泊まれる「お試し体験住宅」も用意されている。

新築の賃貸一戸建ては、4月の入居開始に向け、2月10日から二次募集が始まっており、内覧会も開くことになっている。
(テレビ新広島)