花が水を吸い上げる力を利用して菊の花弁をカラフルに染め上げる「カラーリングマム」が注目を集めている。規格外で廃棄される4割が鮮やかな新商品に生まれ変わり、菊のイメージを変えてしまうほどの美しさだ。
染め花・染め菊に一目惚れ
佐賀・唐津市厳木町の千喜田花卉園では、主に葬儀で使われる輪菊以外にお祝いなどにも使われるスプレー菊など年間約50種類を栽培している。

「カラーリングマム」を手掛けているのは、千喜田樹理さん(37)。結婚を機に8年ほど前から子育てをしながら夫の直也さん(38)とともに花づくりの仕事を始めた。

慣れない農作業の中、樹理さんは3年前に、新たな取り組みを始めた。それは、花が水を吸い上げる力を利用して菊の花弁をカラフルに染め上げる「カラーリングマム」の販売。

そのきっかけを樹理さんはこう話す。
千喜田樹理さん:
主人が遊びで染めているのを見たときに生まれてはじめて染め花という存在を知った。単純に染め花・染め菊に一目ぼれをして、これを売りたいと主人に話した

魅力は無限に広がるバリエーション
カラーリングマムは菊のイメージを変えてしまうほどの美しさだ。色とりどりの鮮やかな作品は数種類の花の束に見えるが、実はすべて菊の花。

樹理さんがつくるカラーリングマムの一番の魅力は、バリエーションが豊富なことだ。
千喜田樹理さん:
同じ菊でも大きい菊や小さい菊もあるけど、染めることによって大きさと色で組み合わせが無限に広がるし、染まり方も全然違うのでカラーリングマムだけで花束を作れる

また、長持ちすることが特徴で、夏は10日ほど、冬は1か月もつものもあるという。
ビジネスアイデアとしても注目
カラーリングマムは農家の新たなビジネスとしても注目されている。全国でも珍しいカラーリングマムの魅力を多くの人に知ってもらおうと、樹理さんは2024年11月に唐津市で行われたビジネスアイデアコンテストに出場。見事、優秀賞を獲得した。

1本の菊を1色で染めることもあれば、4色を入れてレインボーカラーにすることもできる。これもカラーリングマムの特徴だ。樹理さんは、夫の直也さんにも相談しながら、きれいな配色の菊を生み出すための方法を常に追求している。

また樹理さんは、学生時代にとることができなかった色彩検定にもう一度チャレンジするという。美しい作品をつくるための努力を続けている。
規格外の廃棄減でフラワーロス解消へ
カラーリングマムは「フラワーロス」の解消にもつながる。花が消費者に届かず廃棄されるフラワーロスは食品ロスと同様、環境問題のひとつだ。

菊は茎の長さや葉の状態など規格基準が非常に厳しく、千喜田花卉園では全体の約40%が規格外となる。これをカラーリングマムとして商品化することで廃棄する菊をできるだけ減らしているのだ。
千喜田樹理さん:
花はきれいだけど、(茎の)長さが短いとか、ちょっと花が小ぶりのものは、ロスとして(市場に)出せないものがありまして、それを中心に染めるようにしている

夫の直也さんも「捨てる命が捨てなくて済むように、植物も生きていますので最後まできれいな状態で、お客様に見てもらって喜んでもらえるものになってくれればと思って活動している」とカラーリングマムのメリットを語る。
エンタメの新ブランド立ち上げへ
2024年4月からはカラーリングマムの販売を農家の仕事とは切り離し、樹理さん独自の取り組みとしてスタートさせた。

現在はオンラインをメインに販売していて、2025年3月には店舗販売もスタートさせる予定だ。

千喜田樹理さん:
この花を最高のエンタメコンテンツにすることが今の目標です。エンタメに特化するような新ブランドを立ち上げるので、それを多くの人に伝えていってエンタメとして選んでもらえるようにしていきたい
(サガテレビ)