「アサヒコ」は、豆腐業界の価格競争による苦境を打開すべく、2025年3月に発売される「職人豆腐」という新商品で豆腐の価値向上を目指すと発表した。
価格ではなく価値を提案することで、「豆腐の復権」を目指す。
「また買いたい」と思わせる品質の高さが、価格競争に頼らないビジネスモデルへの転換のカギだと専門家は評価している。
豆腐業界の危機感とアサヒコの新たな挑戦
価格転嫁を進めながら、もっとおいしい豆腐を届ける復権プロジェクトとは。

手軽にタンパク質をとれると人気の「豆腐バー」。
みなさんも、コンビニなどで見たことがあるのでは。
この豆腐バーで知られる「アサヒコ」が4日、記者発表会を開いた。

アサヒコ・池田未央 社長:
きょうは豆腐バーの話ではなく、本丸のお豆腐について、復権の構想をご説明させていただきたいと思っております。

池田社長が打ち出したのは、「豆腐復権」。
この日発表されたのは、2025年3月に発売される「職人豆腐」と書いて、“クラフト豆腐”。

より大豆の風味を感じられるよう、豆乳の濃度を通常より10%増やした。

大豆も国産にこだわり、パッケージには職人の名前と大豆の産地が記され、豆腐の「安売り」のイメージを払拭。

豆腐の「価格」ではなく、「価値」を提案することで、「豆腐の復権」を目指す。

その背景にあるのは、豆腐業界の苦境。
豆腐市場は縮小し、豆腐業者の倒産や廃業は過去最悪のペースとなっている。

アサヒコ・池田未央 社長:
メーカーは、なんとか食べてもらおうと思っているんだけど、それを価格競争でやり過ごそうとしているので、何も抜本的な改革になっていない。そこが危機感がある。

大豆が値上がりする中、価格競争に走り、苦境に陥った豆腐業界。
くしくもこの日、東京商工会議所などは、中小企業の賃上げのカギとなる価格転嫁を進めるための決起集会を行った。

東商の小林健会頭は、「価格転嫁を社会全体で受け入れる環境作りを進めることが急務」と、消費者に対しても理解を求めた。

そんな中、豆腐バーでゲームチェンジャーとなったアサヒコは、これまでの価格競争から、質を重視したクラフト豆腐で「豆腐の復権」を目指す。

アサヒコ・池田未央 社長:
あらためて、豆腐という食べ物も時代に合わせて進化をしないといけないと思っている。でも本質的に変えちゃいけないところもあるので、今回はどちらかと言うと、変えてはいけないところの本質がおざなりになっているので、「そこをもう1回見直しましょうよ」というメッセージになっています。
おいしさの理由を可視化して価格転嫁を目指す
「Live News α」では、消費経済アナリストの渡辺広明さんに話を聞いた。
堤礼実キャスター:
ーー渡辺さん、早速取材されたということですが、いかがですか?

消費経済アナリスト・渡辺広明さん:
実際に試食してみたところ、大豆本来の自然な甘さが印象的な豆腐で、「また買って食べたい」と思いました。
この「また買って食べたい」という差別化こそ、価格転嫁という日本のビジネスが直面している課題への1つの答えになっているんです。
堤キャスター:
ーーそれは、どういうことでしょうか?
消費経済アナリスト・渡辺広明さん:
昭和30年代、どこの街にも豆腐屋さんがあり、現在のコンビニの数と同じくらいの店舗・製造拠点が全国にあった。それが今では10分の1に減少していて、この背景にあるのが、価格転嫁の難しさです。
VTRにもありましたが、豆腐の製造コストが大きく上がっています。それなのに豆腐1丁あたり10円ほどしか価格を上げられないでいるんです。この状況を変えるには、「食べたい、欲しい」と思わせる価値の向上、つまり差別化が必要になる訳です。
堤キャスター:
ーー価格は気になるけど、おいしいものが食べたいという時、ありますよね?
消費経済アナリスト・渡辺広明さん:
今回のアサヒコの新しい豆腐は、どうしておいしいのかを消費者に分かるようにしてあることが、注目すべきことです。
具体的には、職人の技に加えて、国産大豆100%使用となっています。画期的なのは、パッケージに職人の名前が入っていて、大豆原料の産地・品種も記載されています。
さらにくわしい情報を、QRコードから見ることができるようになっているんです。これは、消費者が求める、商品ができるまでの履歴を追跡できるトレーサビリティーがしっかりしている証拠です。
生産者から消費者まで適正価格で広がる新たな流通モデル
堤キャスター:
ーーこうした取り組みが、広がっていくといいですね。

消費経済アナリスト・渡辺広明さん:
今回の取り組みで素晴らしいのは、豆腐をめぐるステークホルダーすべてにメリットがあることです。
国内の食糧自給率が38%と低いんですが、国産大豆を使用しているため、生産者にとっても、消費者にとっても非常に有益です。さらに、小売業者を巻き込んでいて、サプライチェーンの構築にも取り組んでいるんです。
「良いもの」を適正価格で販売して、関係する企業が利益を確保する試みが、ほかの業界にも広がっていくことを期待します。
堤キャスター:
ずっと親しまれてきた豆腐を時代に合わせてアップデートして、さらに、そこに携わる人たちも守っていく。
こうした試みが「食の未来」を創っていくのかもしれませんね。
(「Live News α」2月4日放送分より)