飼育が難しいとされる「ズワイガニ」を卵から育てる試みに、関西の水族館が挑んでいる。苦節7年で、ついに新記録を達成だ。
【動画で観る】ズワイガニを“卵から育てる” 数百匹のカニが共食いなどで全滅も 研究重ねた水族館7年の記録
■食べられる大きさに育つまで10年かかる冬の味覚、ズワイガニ
今がまさに旬の冬の味覚、ズワイガニ。全国屈指の水揚げ量を誇る兵庫県北部・城崎温泉。

(Q.おいくらですか?)
おけしょう鮮魚:4万円です。それでもちょっと安くなった。

この立派なカニ。食べられる大きさに育つまで10年ほどかかるのだ!知っていただろうか?
(Q.10年かかるんです)
観光客:知りませんでした。その10年いただきました。おいしくいただいて感謝です。
■実際にカニの育成に取り組む「城崎マリンワールド」

実はズワイガニは、水深200メートル以上の海の底で育つため、10年かけて、どうやって大きくなっているのか、見る機会がない。
それならば「育ててみよう!」ということで、手をあげたのが地元の水族館「城崎マリンワールド」。
ズワイガニを“卵から育てる”という、斬新なプロジェクトに取り組んでいる。
2017年の立ち上げ当時から、カニの育成に取り組むのが、飼育員の清水亜朱沙さん。
城崎マリンワールド 清水亜朱沙さん:ズワイガニって、10年育てたら大きくなると資料や図鑑に書かれていて、知識では知っていたけど、本当に10年で育つのかなと?(カニ)いるし、生まれるし、私たちがやってみよう!って。
■プランクトンのカニの赤ちゃんはいつ“カニ”になる?

清水亜朱沙さん:先週生まれたズワイガニの赤ちゃんを今、お世話しています。
(Q.ズワイガニの赤ちゃん…?)
清水亜朱沙さん:浮いてるの分かりますか?
目をこらして、よ~く見てみると…いた!元気よく動く、小さな生きもの。まだプランクトンのカニの赤ちゃんだ。
プロジェクトを初めてすぐ、赤ちゃんが600匹ほど生まれ、『この形から本当にカニなるのか!?』と、飼育員たちが心配していたある日のこと…。
(当時を再現する)清水亜朱沙さん:え!カニ…カニ!?カニじゃない!?チーフ、チーフ!カニになった!
ハサミの形が分かる「稚ガニ」にまで、育てることに成功。そしてカニは、脱皮を繰り返し成長していく。
しかし深海での暮らしが不明すぎて、飼育が難しい上、成長に10年もかかるため、事例がほとんどない挑戦だった。
■順調かと思われたが…カニが全滅! 試行錯誤がスタート

順調なスタートを切ったプロジェクトだが、その2年後…。
(当時を再現する)清水亜朱沙さん:あ~死んじゃったかな…。えーもう…なんでだろうな…。
共食いや脱皮の失敗などで、数百匹いたカニが全滅してしまったのだ。
清水亜朱沙さん:カニになってからの全滅はやっぱりショック。何が原因か定かではないが、水温が合ってない、何か栄養、足りないとか。あまり研究資料がないので、手探りでやっていた。
なぜ死んでしまうのか…未知なるカニの子育て。
しかし、ここから清水さんの“細か~い”試行錯誤が始まるのだ。
■住環境の整備…同じ水槽のカニから守る“1人暮らし”

まずはカニの「住環境の整備」から。
水が汚いと死んでしまうので、ひとつひとつマメに掃除を重ねる。
清水亜朱沙さん:残った餌をきれいにして、もちろんウンチとかもするので、回収していきます。
脱皮直後のカニは柔らかく、同じ水槽のカニに狙われやすくなるため、一人暮らしができるカニの「アパート方式」で育てることにした。
■研究を重ね…カニは成長するにつれて水温が低い場所で暮らす

さらに研究を重ねたのが「水の温度」。
自然界のカニは、成長するにつれて水温の低い場所で暮らすようになるそうで…。
清水亜朱沙さん:徐々に(水温を)下げていくのがベストだと思ったけど、下げていくのが何度ぐらいがいいか手探りだったので、最初の年は多分(温度が)高すぎたのかなと、その結果が出るのは1年後ぐらい。また違ったと思ったら1度下げて…。
■甲羅の幅が3.5センチ 7年目にしてカニが2歳を迎える

2024年の年末、プロジェクトを開始して7年目、初めて1つの個体が2歳を迎えた。
それがこちら!
甲羅の幅が3.5センチにまで成長した。
清水亜朱沙さん:すごく暴れるんです、この子。カニの形です。拡大して見たら大人ですよ。
2年間生き続けているのは、この個体だけ。
清水さん、毎日気が気じゃないようで…。
清水亜朱沙さん:(ふたを)開けてみて、すぐ動いてないときが多いんですよね。生きているのか、死んでるのかって、ちょっと思いながら観察して、『あ、動いた大丈夫』って安心して。
私たちがよく知る、“立派なズワイガニ”に成長するまでには、あと8年ほどかかる見込みだ。
■カニの成長過程の展示エリアは大人気

カニの成長過程が見られるプロジェクトの展示エリアは、観光客に大人気。
清水亜朱沙さん:今ここにカニの赤ちゃんがいるんですけども。
お客さん:すごくちっちゃい。
清水亜朱沙さん:この子たち、やっと1歳です。
お客さん:1歳!また10年後来たら、この子が食べられるかな。
清水亜朱沙さん:それくらいのサイズまでなってればいいなと思ってます。
■■城崎マリンパークのグループ会社は「かに道楽」

ちなみに城崎マリンワールドを運営する日和山観光のグループ企業は…あの「かに道楽」。
プロジェクトのことをお伝えすると…。
かに道楽道頓堀本店 小林泰三店長:大きい立派なカニを育てあげてほしい。できることなら、その立派なカニをおいしく提供したいなと。
10年後、そんな未来がくるかも!?

愛情をかけてカニを育てている清水さんは…。
清水亜朱沙さん:育てたカニおいしいのかって言われることもあるので、確かにそこはちょっと興味あるなって思ったりはしますが、自分が育てたのを食べるってなったらどうかなって、ちょっと悩んだりもしますね。
複雑な思いもあるが…、8年後、どんなカニに成長するのだろうか?
(関西テレビ「newsランナー」2025年1月28日放送)