出汁をとったり煮物にしたり、万能食材の乾しいたけ。宮崎県の乾しいたけ生産量は約310トンで全国2位だが、気候の変化により減少傾向にある。日向市の初入札会では出荷量が前年比6割減少し、価格は過去最高に。卸売業者は「農福連携」に取り組み、障害者就労支援施設と協力し、小学校跡地や川の水を利用するなど、手間やコストを抑えた持続的な生産を進めている。
乾しいたけの価格高騰

高齢化による生産者の減少や気候の変化などが重なり、県内の乾しいたけの生産量は減少傾向にある。1984年の2237トンをピークに下がり続け、2023年には310トンと、7分の1以下となった。

宮崎県日向市の椎茸流通センターで開かれた乾しいたけの初入札会。秋に暖かい日が続いたり、雨が少なかったりしたため原木しいたけが成長せず、初入札会への出荷量は約4189kgと2024年より約6割減少した。そのため、平均単価は1kg7536円と初入札会では過去最高を記録した。

日向市の卸売業者:
非常に高値で推移していると、品不足感からの高値だと思う。
西都市の卸売業者:
入札会を重ねるごとに価格が上がっている。

乾しいたけは、2024年の春から入札価格が上昇。卸売業者は、赤字でも入札せざるを得なかったり、十分な買い付けができず、スーパーなどが求める需要にこたえられなかったりするケースが出ている。
卸売業者:
業者的にはすごくひっ迫している状態で、ほとんどの会社が赤字で出している状態だと思う。
生産者の減少
一方、生産者は高齢化により減少。価格が上昇しても収穫量が減っているため、収入は厳しい状況だという。

諸塚村椎茸部会 小川重好部会長:
生産者は70歳を超えている人も多い。高値とは言っているが、今の値段ぐらいないと生産者は減っていくのではないか。
農福連携でしいたけ栽培

県内の乾しいたけを取り巻く厳しい現状に、高千穂町の乾しいたけ卸売業者「杉本商店」は、延岡市の施設との連携し、3年前からしいたけの生産量を確保する取り組みを行っている。
この取り組みでは、杉本商店が原木を無償で提供し、発達障害などがある利用者が駒打ちや収穫などを行う。生産された乾しいたけは全て杉本商店が買い取るため、利用者の収入確保にもつながっている。

障害者就労支援施設の利用者:
とても楽しい。収穫がいっぱいできたときはとても嬉しいので、またこういう機会があればいい。
小学校跡地や川の水を利用

しいたけの栽培場所は多くが山の中だが、この取り組みでは、旧美々地小学校のグラウンドを活用。土地が平らで、作業しやすいのが特徴だ。

また、川の水をポンプでくみ上げて、ほだ木に散水することで、雨頼みだったしいたけの発生や成長をコントロールすることができ、水道代もかからない。

さらに、有明のりの養殖で使われていたポールを再利用してほだ場を作るなど、コストを抑えた栽培に取り組んでいる。しかし、止まることのないしいたけの生産量減少に、杉本商店では、農福連携だけではなくさらなる取り組みが必要だと感じている。

杉本商店 杉本和英社長:
まったく農業をやったことがないが、新たにトライしたいという方たちにも栽培のノウハウを提供したりしながら、生産してくれるグループを作るような形でやっていく必要があると思う。

高齢化や気象条件が変化する中、全国2位の乾しいたけの生産をどのようにして守っていくのか模索が続いている。
(テレビ宮崎)