「飼主さんが後悔しないような写真を撮るというのを自分に課している」。ペットを撮影するプロカメラマン。写真に込められた思いを探った。
2ヵ月に1度 特別なペット撮影会
福岡・篠栗町にある『スチールドッグ・フォト』。フォトグラファーのマツモトカズオさんが運営する写真スタジオで、七五三や結婚式などの家族写真から雑誌やカタログの写真まで幅広く撮影している。

マツモトさんが、特に力を入れているのが犬などペットの撮影だ。2ヵ月に1度、季節に合わせたセットを組んで特別なペット撮影会を行っている。通常3万円の撮影代が1万円になるのだ。さらに撮影したデータをその場で整理し、OKカットを全て提供する。県内からだけではなく、県外からも訪れる人がいるほどの人気企画だ。

取材班が訪れたこの日は、2024年の12月に行われた撮影会ではクリスマスとお正月にちなんだセットが組まれていた。
取り敢えず「待て」を教えて…
福岡市から訪れたこの日の客は、これまで5匹の犬を『スチールドッグ・フォト』で撮影している。「きょう連れて来た犬は『よもぎ』って名前です。まだうちに来て1週間。きょうの撮影に合わせて『待て』と言ったら、待機できるところだけ、1週間で何とか間に合わせて、そこだけ教えたら何とかなると思って連れて来ました」とまだ生後2ヵ月の愛犬を抱き寄せる。

早速、撮影開始。「よも!待て!待て!上手!上手!いけた!いけた」と背中を支える男性。ちょっと支えられただけで凛々しいポーズを取るよもぎちゃん。しっかり前を向く。「OK!OK!」とマツモトさんもシャッターを切る。撮影会は無事に成功した。

「これまで飼っていた犬が亡くなった時も、それまで撮って頂いた写真をもとに絵葉書を作ってもらったりして…。新しい子がうちに来たら、当たり前のようにここで撮ってもらっています」と客は話した。

いつ撮れるか分からないから今撮る
マツモトさんがこの撮影会を始めたのは、今から10年ほど前。大型犬の撮影を依頼されたのがきっかけだったという。「その方が、すごく立派なショー・ドッグみたいな大型犬を飼っていらっしゃって『この子の写真を撮って欲しい』と言われていたんですが、たまたま僕のスケジュールがちょっと合わなくて『じゃあ、次回にしましょう』という延びが続いた」

「それから1年経つか経たないかぐらいで、SNSでその犬が亡くなったっていう報告を見てしまって、それがショックで…、いつ撮れるか分からない、いつ機会があるか分からないから残したいという思いが、すごく強くなりました」とマツモトさんは当時を振り返る。

いつか撮ろうではなく、今、撮ろう。そう思ってもらうために始めたのが特別なペット撮影会なのだ。
常連客に思いがけないプレゼント
「上手!そのまま!ハイそれ!」。この日、2匹のパピヨンと一緒に訪れたのは春日市在住の川上さん。この撮影会に10年、欠かさず通っている常連だ。

「来月、18歳で、それこそ18歳の誕生日フォトを予約していたんですけど…」と川上さんが見せてくれた写真に写っているのは、18歳を祝う直前に亡くなったコリンちゃん。前回の撮影会に参加していたため最後の姿を美しい姿で残せたという。

「亡くなるギリギリまで撮ってもらったことで、最期を残せたのは本当によかったと思います。その子の一番いい時期の、いい時を残せていると思います。自分で撮ると、じいさんはじいさん、マツモトさんが撮ると若く写るので」と川上さんは愛犬に思いを寄せた。

「いつもは郵送させてもらってましたが…」とこの日マツモトさんが、川上さんにプレゼントしたのは亡くなったコリンちゃんのフォトスタンドだった。

「最後の1枚になったとしても、飼主さんが後悔しないような写真を撮るというのを自分に課しているので…。悲しいことがあった時に、思い出に残してもらえる写真が撮れてるのかなと思います」と話すマツモトさん。
きょうも優しい思いでペットたちにシャッターを押す。
(テレビ西日本)