最大9連休となった年末年始、愛媛県を代表する観光地・道後温泉は、コロナ禍からの力強い回復を実感させるにぎわいを見せた。2024年7月、5年半ぶりに全館での営業を再開した道後温泉本館。11月時点で37万1000人の入浴客を記録し、2023年の年間客数を上回る盛況ぶりだ。年末年始の温泉街の様子を追った。

本館前で2025年の幕開けをお祝い

「これまでも多くのお客さまにお越しいただいて、この年末年始9連休でこれまで以上に多くの方に来ていただけると期待している」と、道後温泉事務所の杉村幸紀所長は期待を語った。

元日の営業に向け、浴室を念入りに清掃
元日の営業に向け、浴室を念入りに清掃
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大みそかの午後10時過ぎから、休憩室や浴室などで順次、清掃作業が始まった。
清掃スタッフは「いつもと作業は変わらないんですけど、お客さんが多いことで普段気にしていない所に汚れがあったりするので、いつもの作業をいつも以上に気にかけている」と、年末ならではの入念な作業に取り組み、新年を迎える準備が着々と進められた。

午後11時40分、年明けまで20分となった道後温泉本館前には、続々と人が集まり始めた。公式なカウントダウンイベントは行われなかったものの、地元の人や観光客ら約30人が集まり、2025年の幕開けを祝った。フランスからの観光客も加わり、「HAPPY NEW YEAR!」の声が響く国際色豊かな年越しとなった。ある女性は「2025年はもっと謙虚に生きたいな」と新年の抱負を語った。

寒さの中、一番風呂を求めて行列

元日の午前5時前、本館の営業開始まで1時間以上あるにもかかわらず、すでに2組が並んでいた。

「熊本の荒尾市から」と語る先頭の男性は、一番風呂を目指して午前4時から待機。2番目の富山県からの来訪者は「30年くらい前に1回来て、その時も1月1日だった。その話をしたら今年も行ってみようか」と、懐かしさを込めて語った。

営業開始30分前、館内では2025年最初の入浴客を迎える準備に追われるスタッフの姿があった。「本館が全館営業再開して初めてなので頑張ります」と、新鮮な気持ちで仕事に臨む様子。浴槽にはことし最初のお湯が張られ、全ての準備が整った。

寒さの中、道後温泉本館の営業開始を待つ人で行列ができた
寒さの中、道後温泉本館の営業開始を待つ人で行列ができた

松山市の最低気温1.6度という厳しい寒さの中、外にはすでに50人以上の行列ができ、刻太鼓の音と共に、道後温泉本館の新しい1年が幕を開けた。

神奈川県から来た親子は「めっちゃ熱かった」と感想を述べ、福岡県からの家族も「すごい良かった」「熱かった」と満足げで「楽しく幸せに過ごせたらと思っています」と新年の抱負も語った。先頭に並んだ熊本県からの男性は「良かったですよ。一番風呂でこんなに多いのは初めて」と喜び、湯につかりながら「元気でやっていこう」と決意を新たにした。

道後温泉事務所の発表によると、正月三が日で約8000人もの入浴客が道後温泉本館を訪れたという。

にぎわう温泉街 国内外から来訪

1月3日、道後の街は連日のにぎわいを見せていた。人力車の車夫・岡田早人さんは「人力車9台ご用意しているんですけど、もうひっきりなしで、たぶん去年よりも多かったんじゃないか」と話す。

「愛媛に行ってみたい」と高知県から訪れた学生たちの姿も
「愛媛に行ってみたい」と高知県から訪れた学生たちの姿も

最大9連休となった2024年は、12月28日ごろから連日、観光客でにぎわいを見せた道後温泉。足湯に入る人々、からくり時計の前で写真を撮る観光客など、ゆっくりと年始のひと時を楽しむ姿が見られた。

高知県から来た20代の学生グループは「愛媛に行ってみたくて」と訪問の動機を語り、フランス人夫婦は「温泉」を1番の楽しみとして挙げた。韓国人夫婦も「道後温泉に入るために韓国から来ました」と、道後温泉の魅力に引かれて来日したことを明かした。

神奈川県から帰省した男性はお土産を大量に購入
神奈川県から帰省した男性はお土産を大量に購入

商店街では温泉地ならではのお土産やグルメを求める人々でごった返した。神奈川県から帰省した30代男性は「地元に帰ってきたのでお土産を買って帰ろうかなと」と、15個もの商品を購入。福岡県から来た子どもたち(9歳・5歳)は、愛媛のオレンジジュースを「おいしい!甘い」と笑顔で味わっていた。

絣屋本店の石田匡暁さんは「28日から末にかけてかなりなにぎわいでしたね。例年の年末の1.2~1.5倍くらいのお客さまの数」と話し、白鷺堂の店員も「いつもより人が多いような気がします。活気があるなと思うのとインバウンドが外国の方がすごく多いです」と、国際色豊かなにぎわいを実感していた。

2024年12月に発表された旅行会社などが選ぶ全国の温泉地ランキング「にっぽんの温泉100選」では、道後温泉が群馬県の草津温泉に次ぐ過去最高の2位にランクイン。この好況を受けて、道後温泉旅館協同組合の奥村敏仁理事長は「非常に追い風が吹いているんじゃないかと思っております」と期待を寄せる。

「年末も少し早い段階から各ホテルも満室という状況で、商店街も含めて道後温泉も含めて大変にぎわっておりまして」と現状を説明し、「9連休というのはやはり特別なところはありますけれども、おかげさまでコロナ禍前の元に戻った以上のにぎわいかなと感じております」と手応えを語った。

長く続いたコロナ禍からの力強い回復を実感させる年末年始となり、道後温泉は2025年の幕開けとともに、新たな飛躍への1歩を踏み出した。

(テレビ愛媛)

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