人手不足が深刻化し、期待されている外国人材。2027年までに、技能実習制度に代わり「育成就労制度」がスタートする。希望すれば職場を変わることも可能となるため、生活環境も整えないと外国人材は定着しない可能性がある。2人の外国人を雇用する福井市内の農園では、お祈りができるよう配慮するなど、個人の尊重を大切にしている。

農業分野でも期待される外国人材

福井市の小西農園で働く特定技能1号のロヒマットさん
福井市の小西農園で働く特定技能1号のロヒマットさん
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福井市で白ネギを栽培する小西農園では、1年ほど前から農業経験がある特定技能1号のロヒマットさんが働いている。

白ネギを栽培する小西農園の代表・小西大作さん
白ネギを栽培する小西農園の代表・小西大作さん

ロヒマットさんは「お金を貯めたい。国へ帰ったら農業の会社を建てたい」と話す。小西代表は「僕らはまだ30代で体力があるが、年々腰が痛かったりしんどくなったりしてくるので、若い外国人の力を借りたいと思い、採用した」とその理由を話す。

福井県内では、2023年10月末時点で1万1101人の外国人労働者が働いていて、この10年で2倍以上に増えている。ただ農業の分野では、外国人労働者の雇用が進んでいないのが現状だ。

外国人材確保へ福井県が研修実施

県は5年前から、介護や建設業界などで外国人材を受け入れようと取り組みを進めている。2024年10月から、県内の介護現場で働いているミャンマー人の技能実習生13人は、県が現地で開いた研修講座で、介護の技術だけでなく福井の方言や歴史、文化などについて学んできた。

県の取り組みの背景には、深刻な人手不足がある。県経営者協会が人手不足について県内企業143社にアンケートを取ったところ、「すべての年齢層で不足」「若手・中堅で不足」と回答した企業は6割を超えた。

人材確保などに取り組む県産業人材室・谷口清美室長は「有効求人倍率が全国1位という高い水準で推移する福井県の企業にとって、人手不足が深刻。事業を起こしたくても人が採用できないという企業がたくさんある。外国人材の活用を一つの選択肢として考えてもらいたい」と話す。

外国人材の参入が進まない農業分野

特に農業の分野では、2020年時点での福井県内の農業従事者は約1万人と、10年前の半数近くまで減少していて、人手不足に歯止めがかかっていない。現在、県内の農業分野で働く外国人は78人いるが、他の業種と比べると、受け入れが進んでいない現状がある。

外国人材への対応について質問する農業者
外国人材への対応について質問する農業者

こうした状況を受け、県などは2024年7月、農業者を対象にした外国人材受け入れのための研修会を開いた。現地視察は、特定技能の資格を持つ外国人を雇用する小西農園で行われた。参加した農業者からは「集合住宅を借りたり、家具などをすべて用意したりして迎える必要があるのか」「コミュニケーションがとりにくいと聞くが、作業の説明などの工夫はどうしているのか」などといった質問が寄せられていた。

外国人材の“個人”を尊重

小西農園に新たに加わった特定技能1号の外国人
小西農園に新たに加わった特定技能1号の外国人

年が明け、小西農園を再び訪ねると、新たにインドネシア人のエルファンダさんが加わり、労働力はさらに強化されていた。夏は機械で収穫できる白ネギも、土がぬかるむ冬は、手掘りの作業となり、重労働となる。

小西代表は「期待以上の働き。すごいスピードで掘ってくれる。一度教えた仕事は飲み込みが早く、かなり助かっている。今後、日本で運転免許を取得してもらえれば軽トラも運転してもらえて、作業の幅も広がる」と期待を込める。

1日5回のお祈りができるよう配慮
1日5回のお祈りができるよう配慮

仕事の合間や休みの日には、漢字の勉強を欠かさないという真面目な2人。農園では、1日5回のお祈りができるよう配慮するなど、個人を尊重することを大切にしている。

外国人材に選ばれるために―

外国人労働者については、技能実習制度に代わり2027年までに「育成就労制度」が始まる。希望すれば職場を変わる「転籍」も可能となるため、優秀な外国人材に長く働いてもらうためには、生活環境を整えることも重要となる。

課題は様々あり「外国人材の住居が確保できない」「移動手段が少ない」という雇用側の問題に加え、外国人からは「地域コミュニティや生活圏の情報が少ない」という声も上がる。

県産業人材室・谷口室長は「日本、福井で生活、就労することにより、自分の夢や希望を実現させたいと考える外国人が多くいる。福井に行ってよかったと思ってもらえるよう、外国人材を労働力ではなく1人の人として温かく迎えたい」と話す。

長く続いた技能実習制度の影響もあり、外国人材が「安い労働力」とみられちだが、これからは日本人と同等に働いていく時代。外国人を“受け入れる”のではなく“選んでもらう”ために、雇用する側だけでなく、地域住民も、共に生きる社会について考える必要に迫られている。

福井テレビ
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