全国各地に伝わる「小正月」の行事の一つ「とんど」行事。その地域の住民が正月飾りなどを焚き上げ、1年の無病息災を願い営まれている。島根・松江市の小さな港町では、老若男女が顔などに墨を塗りつけて一年の健康や安全などを願うユニークなとんど行事が1月12日に行われ、普段は静かな小さな港町が活気づいた。

松江市美保関町(みほのせきちょう)の片江(かたえ)地区で12日に営まれたとんど行事。地元の人たちの顔には…墨、墨、墨!顔に墨を塗られながらもみなさん楽しそうだ。
神社の境内で始まったのは「墨つけとんど」と呼ばれる伝統神事で、江戸時代から250年続くとされ今に受け継がれている。集まった人たちは、木炭などの粉末をお神酒で溶いた“墨”を顔に塗り合う。

みんなの顔が真っ黒…墨をつければつけるほど“ご利益”が
この墨を塗れば塗るほど“無病息災”や“海の安全”などのご利益があるということで、「この一年をいい年にしたい」、「今年も無病息災、元気で一年を終えられれば」、「年に一回、毎年参加しているけど、気が引き締まるというか、この一年頑張ろうかなと思います」などと笑顔で話す。

住民だけでなく、神事を見物に訪れた人など大人から子供までみんな真っ黒に!中には顔と額の境目がないのをいいことに…頭のてっぺんまで真っ黒に塗られた男性は「良いことありますよ今年は!最高です」と威勢が増し、塗られれば塗られるほど“ご利益”がありそうだ。

威勢のいい掛け声で神輿を担ぎ街に活気
“準備”が整うと…神社から神輿を担いだ男衆が「チョーサダー、チョーサダー」と威勢よく掛け声を上げながら街に繰り出していった。もちろん男衆の顔も真っ黒だ。少子高齢化の影響で担ぎ手が減り、例年2基繰り出される神輿を今回は1基に減らしたということだが、その分大勢の男衆に担がれた神輿が、にぎやかに集落を練り歩いた。

この日は寒さが厳しく、時折雪も舞う中で行事が進められた。そして神輿を担いだ男衆が海岸に到着すると驚きの行動に…。

神輿を担いだまま…福を願い海岸に歓声
神輿を担いだまま砂浜を歩き、さらにずんずん進んで行くと真冬の海の中へ…身を切るような冷たさの水温も気にすることなく海水で身を清めた。
そして2024年に祝い事があった人たちにあやかって福を授かろうと、とんど行事の役職者、それに新婚の人などを次々と海へ投げ入れ、海岸には悲鳴と笑い声が響いていた。

祭りに参加した男衆の一人は、「毎年の行事なので、神輿を担ぐところから最後の海に入る所まで覚悟を決めて担いでいます」と地域の伝統神事を守り続ける気概を語っていたが、「寒いです。ずっと暖まっていたいです」とこの日の寒さはさすがに少し堪えたようだ。

地域の住民も神事の見物客もみんな真っ黒になった「墨付けとんど」。小さな港町はこの日、「この1年を健康で幸せに過ごせるように」という思いであふれていた。

(TSKさんいん中央テレビ)