スマートフォンやパソコンが普及し、“デジタル遺産”についての問題が顕著化している。自分の死後、家族に「負の遺産」を残さないために、専門家はトラブルにならないように「ルール」を作ったうえで、生前からパスワードなどを共有することが必要だとしている。

(動画で見る:サブスク請求や相続でトラブルも…『デジタル遺産問題』が顕著化 家族に見られたくない「負の遺産」の整理方法は "買い物ポイント”は相続できず

■専門家「相続でもめる可能性も」…高まる“デジタル遺産”の管理

デジタル遺産に明確な定義はないが、スマホやパソコンを通して確認できるデータやインターネットで契約した有料サービス、ネット銀行などのサービスのことを指す。

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一般的にどんな資産をデジタルで管理しているか街で聞いた。

会社員の30代女性:
毎月何万円か入れて運用してもらっています。2年くらいなんですけど、15万円くらいプラス。

会社員の50代男性:
NISAとか証券とか。数百万円くらいは、おかげさまでプラスになっている。

4割ほどの人がデジタル上で資産を管理していたが、自分が死んだあとの整理についてまでは考えていない人がほとんどだった。

Q.パスワードは誰かに教えている?
会社員の30代女性:
個人情報なので、自分の中でしか守っていないです。

10代女性:
教えていないです。(Q.もし自分が亡くなってしまったら)確かに…考えたことなかったですね。

専門家はこれを「大きな問題」と指摘する。

日本デジタル終活協会の伊勢田篤史弁護士:
具体的な問題点としては、亡くなった方のご遺族はスマホにログインできない。(遺族に)知らない証券会社から突然連絡が来て、取引が発覚したということがあるそうですね。そこに例えば結構な金額が入っていたりすると、相続で話し合っているタイミングで出てきてしまうと揉める、結構これは怖い問題かなと思います。同居していない家族からすれば、「隠していただろ」と本当に揉める可能性がありますので。

スマホの普及が進むのに伴い、亡くなった時にデジタル遺産を残すことが増えることが予想され、国民生活センターでは残された家族が困らないように、注意を呼びかけている。

■パスワード知られたくないが…「ルール」を作って情報共有を

実際に、国民生活センターには相談も寄せられている。

亡くなった兄が利用していたネット銀行の手続きをしたくてもスマホが開けず、ネット銀行の契約先がわからないため、お金を動かしたくても動かせないという60代男性のケースや、80代の女性からは、亡くなった夫が契約したサブスクの請求を止めたいが、IDとパスワードがわからず請求が続いているというケースだ。

生前にパスワードを自分以外に知られたくないということは容易に考えられるが、死後のために個人情報を伝えていかなければいけないことも当然で、管理が非常に難しいのが実情だ。

この問題を解決するために、日本デジタル終活協会の伊勢田弁護士は「スマホのログインパスワードを書いて家族と共有しておく」ことを勧めている。

日本デジタル終活協会の伊勢田篤史弁護士:
万が一の時に見てねと言っても、そもそも生前に教えたくないのに何でそんなことを言わないといけないんだってなると思うので、ログインパスワードを書いて封筒に入れて、のり付けして封印していただいて、万が一の時はこれを見てねと。中を開けられたら分かりますので、もし封印を解かれていたらパスワードを変えればよいという話なので、対策は容易かなと思います。

伊勢田弁護士はほかにも、口座などのリストをノートに残し、パスワードがなくてもせめてどういうものを契約しているのかを書き残したりするもの良いとしている。

亡くなった家族とスマホのパスワードを共有していなかった場合、専門業者に依頼して解除してもらうこともできるが、高額で時間もかかるというデメリットもあるため、これは最終手段としておいて、なるべく家族で共有するのが望ましいとしている。

■デジタル遺産で相続できないもの

ただ、デジタル遺産には相続できるものもあれば、できないものもある。

相続できるものは「ネット証券」「暗号資産」「バーコード決済の電子マネー」に、航空会社のマイルも相続できる。

しかし、買い物でたまる「Vポイント」「dポイント」「楽天ポイント」などは相続できない。

■“秘密のデータ”の扱いは…専門家が勧める対策

また、デジタル遺産のトラブルは、資産に関することだけにはとどまらない。

日本デジタル終活協会の伊勢田篤史弁護士:
特にパソコン、スマートフォンですけれども、家族にも見られたくないものというのは多々あるんじゃないかなと。アダルトコンテンツですとか、あとはオタクの趣味のようなものですとか、度が過ぎるというとあれですけれども、不倫とか不貞行為のデータとか。

どうしても家族に見せられないデータについて、伊勢田弁護士は「パソコンの、例えばドキュメントの「仕事という名前のフォルダと、家族という名前のフォルダだけ見てほしい」」と家族が必要なデータがある場所を特定し、その上で「他のデータは見ないで削除してほしい、物理的に破壊して処分してほしい」と伝えることを勧めている。

(東海テレビ)

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