少子高齢化で町内会や自治会など地域コミュニティは担い手不足に悩まされている。広島市では町内会やPTAなど複数の集まりをまとめて一体運営する「ひろしまLMO (エルモ)」という新たな仕組みを導入し、住民と地元企業が協力して持続可能な地域づくりに挑んでいる。どんな組織なのかを取材した。

「ひろしまLMO」で地域活性化

広島市安佐北区で11月に行われた「木と食の里まつり」には、多くの住民が参加し、にぎわいを見せた。

「木と食の里まつり」広島市安佐北区 11月
「木と食の里まつり」広島市安佐北区 11月
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この行事を運営したのは、大林学区地域運営員会、通称LMO大林という組織だ。地域コミュニティーは、少子高齢化や単身世帯の増加で町内会や自治会の担い手不足に直面している。

LMOはこの地域課題を解決するため、広島市が2022年から地域運営組織「ひろしまLMO(エルモ)」としてスタート。

小学校の学区ごとに地域の社会福祉協議会が中心となって、自治会やPTA、老人クラブなどの集まりや学校、地元企業が連携し、市の助成金を活用して運営される新しい形の地域コミュニティだ。

年間最大600万円の助成金が交付され、事務所の家賃や運営スタッフの給料にも使用できる柔軟な制度となっている。

安佐北区の大林学区は、2014年の土砂災害で大きな被害を受けたが、もともと地域の結びつきが強く、避難や救助が素早く行われ、人命にかかわる被害はなかった。しかし、そんな大林学区でも少子高齢化で地域活動の担い手不足が課題となった。そこで2023年、広島市から提案のあったLMOを設立。全世帯1,000世帯を対象に住民アンケートを実施。

赤ちゃんから高齢者まで幅広い世代が気軽に集うことができる新たなコミュニケーションスペース「ルリえん」を設けた。

地域と企業が一体となるコミュニティづくり

「ルリえん」の設立を大きくサポートしたのは、地元でビーズをつくる会社「トーホー」の山仲巌社長だ。同社が所有する建物を無償で提供し、住民たちの活動拠点を作る手助けをした。

山仲社長は「地域が元気になることが、社員たちや会社全体の活性化にもつながる」と語る。

「ルリえん」では、住民同士の交流を目的とした活動が行われており、壁に描かれた木には利用者の意見や感想が「栄養」として書き込まれ、木が育つ形になっている。運営を担う「ふるさと学舎」の秦野英子代表理事は、「ここにくれば、誰かがいるという場所で、地域住民がしたいことをする」ことを前提に、住民の自主性に任すようにしているという。

地域と企業が一体となった取り組みは、若い世代の定住を促し、住みやすい街づくりへとつながることが期待されている。

「住民が動けば町は変わる」

新たにLMOを立ち上げようとしている地域も多くある。

広島市佐伯区の五月が丘地区では、住民たちが地域課題を考えるワークショップを開催。すでにLMOを立ち上げた安芸区中野東の先輩グループからアドバイスを受けながら、自分たちの街に合った活動を模索している。

すでにLMOを立ち上げ活動している地域の原田陸三専務理事は600万円の助成金で地域住民に楽しんでもらうことが重要としたうえで、「住民ひとりひとりが動けば町は変わる。それを実感している」と語る。

アドバイスを受けた五月が丘地区社会福祉協議会の津丸俊二 会長は「一人暮らしの人や、親が共働きの子どもたちが元気になるような、まちづくりのためにLMOを活用したい」と意気込む。

地域活動の担い手を増やす工夫や若い世代を巻き込んで活性化を図ることがこれからの課題となる。

広島市では140の小学校区全てでのLMO設立を目標に掲げており、そのうち半数以上の72地域ですでに活動が始まっている。地域の活性化と持続可能性を実現する先進的な取り組みとして、全国の自治体からも注目を集めている。

(テレビ新広島)

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