2025年1月5日に開幕する春の高校バレー全国大会。新潟県予選を勝ち抜き、男子の代表校となったのが、2年連続16回目の出場となる東京学館新潟だ。創部以来、チームに関わってきた石山元総監督が退任し、初めて迎える大舞台。決して順風満帆とは言えなかった、現チームの道のりを振り返る。
苦難乗り越えつかんだ春高への切符
2024年11月3日に行われた春の高校バレー・新潟県予選会男子の決勝。
第1シードの東京学館新潟が、初の全国大会を目指す第3シードの関根学園を破り、2年連続の春高への切符を手にした。

最後に点を決めた学館の3年生・齋藤寿明の目には涙が浮かんでいた。
「絶対に決めてやろうと、1年間の思いを込めて打ち込んだ」

この1年は、齋藤にとっても、そしてチームにとっても苦難の連続だった。
石山元総監督 最後の春高は8年ぶりのベスト16
2024年1月の前回の春高バレー全国大会。2年ぶりに出場権を手にした東京学館新潟にとっては、いつも以上に負けられない大会だった。

1983年の学校設立、そして男子バレー部創部時の監督である石山雅一氏(2019年からは総監督を務める)が定年を迎え、石山氏にとって最後の春高の舞台だったのだ。
石山氏が監督時代の2007年には学校、そして県勢最高成績となるベスト4に進出。
選手たちもこのときの成績を超えようと臨んだが、結果は惜しくも届かず。それでも県勢としては8年ぶりのベスト16に輝いた。
不安残った新チームの船出…得点源離脱でさらに状況苦しく
新チームでキャプテンに就任したのは、2年生からレギュラーとして学館の攻撃を組み立てていた相田悠一郎。

相田は“前のチームを超える”ことを掲げ、チームを引っ張ってきたが、「ずっと悔しさが残る1年間だった」と振り返る。
春高全国大会から間もなく開かれた新潟県の1・2年生大会。
決勝戦では、新発田中央を相手にセットカウント2-1で辛くも勝利。自力の高さを見せつけたものの、不安の残る新チームの船出となった。
そして、3月には私立高校による全国大会に挑んだ。
前チームはベスト16の成績を収めたが、チームは予選リーグ2勝2敗で、決勝トーナメント進出は叶わなかった。
さらに、前年の春高全国大会にも出場し、レシーブに安定感がありながら、チームの得点源として活躍したアウトサイドヒッターの齋藤寿明が、じん帯の捻挫により3カ月戦線を離脱することとなり、チームの状況はさらに苦しくなる。
県高校総体では逆転優勝も…勝てない時期続く
チームに暗雲が立ちこめる中、迎えた6月の県高校総体。決勝の相手は、1月の1・2年生大会と同じ新発田中央となった。
主力の齋藤を欠いた学館は、デュースの末に第1セットを落とす。
高さで劣る学館だったが、「頭を使って相手のブロックをかいくぐるトス回しを意識した」と話すセッター・相田のトスを、春高全国大会のコートに立つことができなかった選手たちが打ち切り、得点を重ねる。結果、第2・第3セットを連取し、逆転で優勝を決めた。
夏のインターハイでは予選トーナメントを突破し、一筋の光が見えたように思えたものの、決勝トーナメントの初戦で敗退。
その後も、練習試合や大会で勝てない時期が続くこととなる。
勝てない理由は“甘さ”…チーム引き締め直し春高県予選へ
試合の序盤は得点でき、第1セットはとれても勝ちきれない…。キャプテンの相田は渡辺健太郎監督とも相談し、勝てない理由を探った。

その結果、見えてきたのが、チーム内にあった“甘さ”だった。
相田は「どうにかなるだろうという気持ちが全員にあって、詰めが甘いという試合が多かった」と話す。
3年生最後の大会である春高県予選を前に、相田はチームを引き締め直した。全員が“春高出場”という目標に向かって一つになり、普段の練習もさらに質の高いものに。
「絶対に負けない」という執念がチームに芽生え、学館伝統の粘り強さに磨きがかかり、競った場面でも焦ることなく、練習試合でも勝つことが多くなったという。
復帰した齋藤 大黒柱・エースとしての責任芽生える
さらに、長い間コートの外からチームを見ていた齋藤が復帰。

「周りがどんどん伸びていって、自分が置いていかれているという不安があった」と振り返るが、齋藤はその気持ちを練習にぶつける。
また、これまでの試合を分析して見えてきたものがあった。
それが二段トス(レシーブが乱れ、セッターが定位置から上げられなかったトス)を打ち切れないという課題だ。
斎藤は「チームで1人は二段トスを打ちきれる選手が必要」と感じ、練習に励んだ。
「最初は正直、周りに引っ張ってもらう部分が多かったが、自分が引っ張っていかないといけないんだなと自覚を持って試合をしている」と、チームの大黒柱・エースとしての責任も芽生えた。
“勝利への執念”で春高への切符つかむ!
そして迎えた11月3日。春高の県予選決勝に挑んだ学館。

第2シードの新発田中央を破って決勝に進出した勢いのある関根学園を相手に、学館はこれまで積み重ねてきたものをいかんなく発揮する。
第1セット、相手にフリーでスパイクを打たれても、体を投げ出してレシーブ。
相田がコート外に出たボールを追い、アンダーハンドで返したボールは大きく弧を描き、ネットに触れて相手コートに落ちた。
チームで意識してきた“勝利への執念”が形になった瞬間だった。
第1、第2セットを連取して、春高への切符に王手をかけた第3セット。ここで躍動したのがケガに苦しんできた齋藤だった。
セットポイントを手にした学館。しかし、齋藤を含むブロッカーが反応していたものの、相手エースの意地のスパイクで1点を返される。
「絶対に決めてやろうという1年間の思いがあった」と齋藤。

相手にサーブで狙われたが、セッターの相田にきれいにレシーブを返し、最後はコートの中央から自ら相手ブロックを打ち破るスパイクを放ち、優勝を手にした。
「最後に恩返しをしたいという思いで打ち込んだ」
こう話す齋藤の目は赤くなっていた。
全国制覇へ!課題のレシーブを重点的に練習
しかし、チームにとってはここがゴールではない。
春高全国大会まで1カ月を切った12月12日。学館の練習には県予選前以上の熱気があった。

相田は「最後の大会という気持ちを全員が持ち、絶対に勝つんだという気持ちを前面に出して練習ができている」と語る。
さらに、県予選で出た課題の修正にも取り組んでいる。
速いコンビバレーを展開する学館にとって、レシーブをしっかりとセッターに返すことがチームの生命線だ。
「レシーブが乱れるとうちのチームは厳しいので、レシーブを安定させることを重点的に取り組んでいる」と相田は話す。
レシーブは重点的に練習し、特にアタッカーが台の上からスパイクを打ち込みレシーブする練習には時間を多く割いている。

練習中も、「レシーブはしっかりとコートの中に上げるように」と渡辺監督は指導を徹底。スパイクを打ち込むテンポも意図的に速くしている。
相田はその意図について「初戦の対戦相手の鳥取中央育英は、速いテンポの攻撃をしてくると思うので、その中でも、しっかりと自分たちの攻撃の形をつくれるように、動きの確認や素早い動作の確認を中心に練習している」と明かしてくれた。

鳥取中央育英は、8年連続8回目の出場で、直近のインターハイでベスト16に入った強豪。コンビバレーを展開できたときの爆発力がある。
齋藤は鳥取中央育英の印象について「速いバレーで、なおかつ粘り強くて学館と似ていると思うので、我慢比べで負けないようにしたい」と、闘志をむき出しにする。

初戦の鳥取中央育英を破り、学館が目指すのは、チームの過去最高成績ベスト4を超える、全国制覇だ。
相田は「落とせる試合はないので、絶対に勝てるように一戦一戦、練習してきたことを出せるようにしていきたい」と意気込む。
チームの歴史を変えるため挑む春の高校バレー全国大会は、1月5日に開幕。学館も開幕日に初戦を迎える。
(NST新潟総合テレビ)