九州で唯一、24時間運用が可能な北九州空港の滑走路に降り立つ白とブラウンカラーの航空機は国際物流の大手、UPSの貨物専用機。UPSは2023年2月、成田・関西に続いて北九州空港発着の国際貨物ビジネスに参入した。
関西空港から深圳へ1週間5往復
アメリカに本社を置くUPSは、約200の国と地域で配送サービスを展開している。小口貨物の取り扱い量は、グループ全体で1日あたり約2200万個に上り、国内では日本法人のUPSジャパンが事業を行っている。空の輸送を担うのは、中型機のボーイング767-300だ。今回、機内の撮影が特別に許可された。

「貨物室には床上と床下があり、いま見えているのが床上のメイン貨物室」と案内してくれたのは、UPSジャパン・エアーオペレーション部の山本亘さん。機内には座席や窓はなく、機体の形状に合わせた貨物専用コンテナやパレット(荷役台)を置くスペースが並んでいる。搭載可能重量は最大60トンだ。

UPSの北九州路線は、大阪・関西空港から中国・深圳を結び一週間に5往復している。UPS貨物定期便は、九州の物流に大きな変化を生み出した。
アメリカには集荷した翌日に配達
これまで九州から発送する国際航空貨物は、成田や関西空港までトラックで運ぶのが一般的で、輸送に時間がかかるのが課題とされていた。しかし北九州空港から送ることが可能になったことでコストも削減され、現地に到着するまでの時間も短縮された。

UPSジャパン・オペレーション部の岡本望さんは「夕方に顧客からの出荷があれば、その日の夜に関西空港に向かう。関西空港からアメリカ向けであれば、別の航空機に積み替る。アメリカには集荷した翌日に配達することができる」とそのフットワークの軽さを強調する。

開港から18年となった北九州空港。航空貨物の需要の高まりを背景に、物流に特化した機能を持たせる「拠点化」を進めている。

その1つが、大型貨物機も離発着ができるように滑走路を3000メートルへ延長するというもので、2027年に供用を開始する予定だ。
注目の成長ビジネス 越境EC
一方、小口貨物をより多く取り扱うUPSにとって追い風となる動きもある。

福岡・春日市の住宅街に建つ一棟の倉庫。倉庫内いっぱいに並ぶ棚には、アニメグッズに人気キャラクター、小物アクセサリーなどののほか、Kポップアイドルのブロマイドまでさまざまなものが保管されている。その数、10万点以上。全て海外に出荷される小口貨物の商品だ。

倉庫を管理する『ブレス・インターナショナル』は、国際的な電子商取り引き、いわゆる越境ECによる購入代行事業などを手掛けている。

ブレス・インターナショナルの北尾圭与子さんは「海外の人が購入代行サイトからメルカリやラクマなどのWebサイトを通じて商品を購入し、出荷までできる」と話す。越境ECはいまや世界で100兆円規模とされる注目の成長ビジネスなのだ。

日本を訪れた外国人観光客が帰国後に越境ECを利用するケースも増えている。売れ筋商品のなかには、太宰府市の竈門神社のお守りまで用意されている。竈門神社は、人気アニメ『鬼滅の刃』の聖地として外国人観光客にも広く知られた場所だ。
「UPSを使えば九州は世界に近い」
国境を越えるビジネスが大きく変化するなか、UPSジャパンの加藤社長は「越境ECは九州、特に福岡市などはスタートアップ企業が多く存在し、越境ECの需要も多くあると感じている。自動車や半導体を含むハイテク産業は、九州・日本全体として当社の注力産業。今後、九州に関しては取り扱う量が伸びていくのではないか。九州は官民一体となって成長産業を後押しする態勢が完全にできあがっている。我々も物流面でサポートしたい」と地場経済を支えるために国際物流の果たす役割はいっそう重要になると語る。

さらに「北九州空港はアジアのなかで非常に良い立地条件にあると思う。UPSを使えば九州は世界に近い」と北九州空港発着のメリットは今後、益々生かせるものになると語る。

北九州空港を舞台にした物流の新たな動きに今後も注目だ。
(テレビ西日本)