チョークで絵を描く「チョークアート」をご存じだろうか。カフェやレストランなどで見る手書きの看板が発祥、指でなじませてグラデーションが施される。長崎・西彼杵郡時津町に「チョークアーティスト」がいる。アトリエを構え、見る人を楽しい気持ちにさせる「チョークアート」の魅力を伝えている。
グラデーションにうっとり「チョークアート」
写真かと思えばそうじゃない、まるで本物な作品。

使っているのは「チョーク」。グラデーションが何とも美しい「チョークアート」だ。

チョークアーティストの山藤布美子さん(45)は、7年前に長崎市のベッドタウン西彼杵郡時津町にアトリエを開いた。

チョークアートはカフェやレストランなどの手書きの看板から始まったアートで、オーストラリア発祥だ。

学校で使うチョークとは違い、滑らかなクレヨンのような質感のチョークで作品を描く。

油分が多い「オイルパステル」を使っていて、指で伸ばして色の重なりや濃淡を表現する「グラデーションの美しさ」が、見る人を虜にする。
世界に一つだけの作品が完成
山藤さんの作品は、木材を黒のペンキで塗った黒板にオイルパステルや色鉛筆など4種類、約300色で描いていく。

どこか温かみがあり、思わず見入ってしまう作品ばかりだ。
初心者でも簡単にグラデーションを施した作品を作ることができるということで、取材したアナウンサーが体験してみた。

下絵を黒板に写す。明るい色から暗い色の順にしっかり色を塗っていく。

より明るい色の方から指でなじませて、グラデーションを施していく。

「塗り方や指の混ぜ方で、同じ物を描いても全く違う作品になるのが面白い」と山藤さんは話す。チョークアートは個性を出しやすい芸術作品だ。

色の塗り方やなじませ方などコツをつかみ、徐々に立体感も出てきた。黙々と集中すること30分。初めての「チョークアート」が完成した。
「初めてとは思えないほど上手にできている!」とお褒めの言葉をもらうと、いい気分だ。グラデーションも手でなぞるだけで作ることができて、何より楽しい時間となった。大人になってこんなに無心に作品を作る機会はない。贅沢な時間が流れていた。
温かみがあるのが魅力
山藤さんは東彼杵郡波佐見町の出身。長崎市内のデザイン会社で働き、企業のポスターやパッケージデザインなどを担当していた。

偶然、テレビでチョークアートを目にしたのが転身のきっかけだった。グラデーションと発色の美しさに感動し、長崎県外にまで足を伸ばして講習を受けるなど、技術と感性を磨いた。

2017年にチョークアーティストとして「プロ」の資格を取得し、アトリエでの活動を始めた。山藤さんは「リアルな感じにもなるが、写真ではなく絵として成立する。人の手で描かれているというのがわかるので、そこに温かみがあるのが魅力」と語る。
山藤さんはチョークアートの魅力を広げたいと、ワークショップやアート教室を開催している。

この日は地元の小学校で、3年生の児童と保護者100人が巨大なチョークアートに挑戦した。

キャンバスは「体育館前のコンクリート」だ。みんなで「時津町と小学校のキャラクター、それにクリスマスツリー」を48色の屋外用のチョークを使って制作した。普段はできない体験に児童たちは大興奮。
1時間ほどかけて縦15m、横18mの巨大な絵が完成した。製作した児童は 「めっちゃ楽しい」「描いている絵はきれいだし、かわいい」と、笑顔で語った。
完成した作品はカラフルだ。「色の塗り方とかが自由でいい」と山藤さんも大絶賛。
「アートは身近なところにある。日常の一部として楽しんでもらい、時津町がもっとカラフルに賑やかになってくれたら」と話す。完成した絵は、雨が降りチョークが消えてしまうまで、見る人たちを楽しませる。

山藤さんの作品は2024年6月から時津町のふるさと納税の返礼品にも選ばれた。作品に触れた人たちの笑顔を思い浮かべながら丁寧に、華やかに、個性的に作品を描く。

山藤さんは「チョークアートを通して制作の楽しさを伝え、いたるところに芸術作品があふれ、時津町を街歩きするのが楽しくなれば」と、アート制作が街の活性化につながることを期待している。
(テレビ長崎)