「私は取調べを拒否します」と書かれた T シャツ。弁護士団体が取り調べを受ける容疑者に配布しているものだ。

この記事の画像(8枚)

これを着て取り調べを受けようとした男が、大阪府警から「危険物」として、T シャツを取り上げられていたことが分かり、弁護人が抗議する事態に。

何が問題なのか、独自取材した。

■【動画で見る】「取調べ拒否 Tシャツ」逮捕された男が着用『危険物』として警察が取り上げる「もはや弾圧に近い」と弁護人

■「『黙秘します』と言ってからも、ずっと沈黙していないといけない」

弁護人の松本亜土弁護士によると、12月初旬、大阪府に住む50代の男が保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕され、羽曳野警察署に留置された。

松本弁護士は取調べを黙秘するよう勧め、「私は取調べを拒否します」と書かれたTシャツを渡した。

松本弁護士によると、黙秘を勧めるのは間違った供述をすることを防ぎ、本来より重い刑罰にならないようにする狙いがあるという。

一方、連日続く取り調べの中で、黙秘を続ける難しさもあると話す。

松本亜土弁護士:『黙秘します』と言ってからも、ずっと沈黙していないといけない状況になる。ただ、精神的に不安定であるとか、学習環境に恵まれない環境で育った方とか、冷静に対応することが難しい。

Tシャツは弁護士の団体「RAIS(ライズ)(取り調べ拒否を実現する会)」が黙秘権を守るために作ったもので、一部の弁護士がことしから配布を始めている。

■「このTシャツの着用を認めない」と大阪府警

しかし、Tシャツを渡した翌日の11日、男が留置場でTシャツを上着の中に着ていたところ、警察官に「メッセージ性に問題がある」と指摘され、取り上げられたということだ。

その後、警察に問い合わせると、Tシャツが留置場内の規律と秩序を破壊するような恐れがあるとして、「危険物」に当たると回答があったということだ。

松本亜土弁護士:まさか危険物っていう扱いになっているとは、にわかに信じられなくて。

男は1人きりでの取り調べに対しての不安を和らげるためにこのTシャツを着ていたが、取り上げられ、結果的にはその日の検察の取り調べに応じたということだ。

松本亜土弁護士:(文字が)ラブ&ピースだったら取り上げられていないんですよ。でも『私は取調べを拒否します』というのが危険だと取り上げられていて、まさに表現の自由の内容規制なんです。この言葉で取り上げるのはもはや弾圧に近い。

松本弁護士はこれまでにもこのTシャツを他の容疑者に差し入れていたが、「危険物」と判断されたのは初めてだということで、大阪府警に判断の撤回などを求めている。

そして、大阪府警は16日午後、関西テレビの取材に回答し、「Tシャツが他の留置人の目に触れたりすることで、心理的な影響を与える」「留置施設の規律及び秩序を害する恐れがあるものと判断」し、「大阪府下の留置施設ではこのTシャツの着用を認めない」とした。

■Tシャツの運動の背景に「取り調べへの不安」解決には可視化必要か

弁護士団体が今年全国で約150枚を差し入れたTシャツだが、大阪府ではこれまで取り上げられた事案はなかった。今回取り上げた羽曳野警察署から「危険物と判断した」と伝えられたそうだ。

これについて大阪府警は、「規律・秩序を害する恐れがあり、危険物保管庫でしか保管できなかった」という説明をしている。

一方、弁護人側は「黙秘権」「表現の自由」を侵害していると主張している。

そして今回の事案を受け大阪府警は、今後こちらのTシャツを使わせない方針を固めたということだ。

共同通信社編集委員 太田昌克さん:松本弁護士の主張も、府警の説明にも、それなりに利があるかなと思う。その反面、少し引いてみて、やはり警察の取り調べが公正なのかどうか不安があるから、こういうTシャツの運動が始まるわけですよね。

共同通信社編集委員 太田昌克さん:一つ解決策はやっぱり取り調べをきちんと可視化、見える化、録画をするということかと思います。それを後で検証できるような体制をしっかり取る。日本弁護士連合会のデータによりますと、見える化している、すなわちちゃんと録画している取り調べは、全体のわずか3パーセントにすぎない。先進国で遅れているということなので、しっかり体制を拡充してもらいたいと思います。

(関西テレビ「newsランナー」 2024年12月16日放送)

関西テレビ
関西テレビ

滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山・徳島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。