トウモロコシのでんぷんは、小腸でブドウ糖に分解されて血液中に入り、そのブドウ糖はインスリンの働きによって全身の細胞に取り込まれ、筋肉や各臓器のエネルギーとして使われます。

また、余分なブドウ糖はグリコーゲンに変換されて、エネルギー不足になったときのための備えとして筋肉や肝臓にストックされます。もっとも、筋肉や肝臓のグリコーゲンはあくまで「その場しのぎ用」であり、それほど大量にはためられません。

フォアグラと同じことが起きている

また、ガチョウの場合、ケージに入れられたままろくに筋肉も動かさず、ほとんどエネルギーを消費しないような環境で飼われています。

エネルギー消費が少ないということは、細胞でブドウ糖がろくに使われないということ。当然、血液中にブドウ糖が余ってしまいますし、余分なエネルギーをグリコーゲンにして入れておく「筋肉や肝臓の一時保管場所」もすぐに満杯になってしまいます。

するとどうなるかというと、体内に余りに余ったブドウ糖エネルギーが肝臓に居場所を求め、そこで中性脂肪に変換されてどんどん蓄積することになる。結果、日々脂肪がたまって肝臓がはちきれんばかりに肥大していくというわけです。

消費エネルギーが少ない人は肝臓がフォアグラ化する可能性も(画像:イメージ)
消費エネルギーが少ない人は肝臓がフォアグラ化する可能性も(画像:イメージ)

つまり、わたしたち人間にもガチョウと同じことが起こっているようなものです。

とりわけ、日々の糖質摂取量がかなり多いにもかかわらず、日々ろくに体を動かさず消費エネルギーが少ない人は、「自分の肝臓もいずれフォアグラ状態になる」というくらいの危機感を抱いたほうがいいかもしれません。

そして、ごはん、パン、麺類、スナック菓子などさまざまな糖質があるなかでも、いちばん警戒をするべきなのが甘い飲み物です。もし、人間の肝臓を最短でフォアグラ化させるなら、いちばん確実で効率的な方法は、間違いなく甘い飲み物を毎日ガブ飲みすることでしょう。

だから、炭酸飲料、果物・野菜ジュース、スポーツドリンクなどの甘い飲み物を日々ガブ飲みしている人は、無自覚なまま「肝臓フォアグラ化」へと一直線に突き進んでいるということになりますね。

『甘い飲み物が肝臓を殺す』(幻冬舎新書)

尾形哲
長野県・佐久市立国保浅間総合病院 外科部長(肝胆膵)・救急医療部長、同院「スマート外来」担当医。医学博士。最新刊『甘い飲み物が肝臓を殺す』のほか『肝臓こそすべて』『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術』など著書多数。SNSでも肝臓から脂肪を落とす術を積極的に発信し、大きな反響を呼んでいる。

尾形哲
尾形哲

長野県・佐久市立国保浅間総合病院 外科部長(肝胆膵)・救急医療部長、同院「スマート外来」担当医。医学博士。1995年、神戸大学医学部医学科卒業、 2003年、同医学部大学院博士課程修了。パリ、ソウルの病院で多くの肝移植手術を経験したのち、09年から日本赤十字社医療センターで生体肝移植チーフを務める。東京女子医科大学消化器病センター勤務を経て、16年に長野県へ移住。一般社団法人日本NASH研究所代表理事。最新刊『甘い飲み物が肝臓を殺す』のほか『肝臓こそすべて』『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術』など著書多数。SNSでも肝臓から脂肪を落とす術を積極的に発信し、大きな反響を呼んでいる。