2024年12月6~8日の3日間、長崎市で開催された「未来を創るアーティストフェス」。長崎初開催のイベントには子供たちに無限の可能性を知ってもらいたいとの思いが込められていた。
多彩なアーティストが集結、子供たちの可能性を引き出す
音楽やダンス、アートなど、様々なジャンルのアーティスト約130人が一堂に会し、長崎シビックホール(長崎市常盤町)と出島メッセで初開催された「未来を創るアーティストフェス」。「自分らしくありのままでいること、好きなことで生きるということ」を子供たちが感じ、親自身も子供の可能性を知ってほしいと開かれた。
この記事の画像(13枚)初日6日のイベントでは、ママと赤ちゃんのためのダンスとピアノのコンサートが開かれ、多くの親子連れが訪れた。
2階フロアでは、引きこもりや生きづらさを感じている子供たちの作品も展示され、来場した親子からは「子供もこういうのに触れ合えてよかった」「自分はありのままでいいことや自分にできることがあったら極める、貫いてほしい」といった声が聞かれた。
不登校経験から生まれた、社会とのつながりへの模索
実行委員会代表の酒井聖花さんは、自身の娘の不登校経験をきっかけに、子供たちの社会との関わり方に不安を感じるようになった。「うちの子供も学校が合わないとなったときに学校以外の選択肢はあるけど、そこから社会につながっていくのはすごく難しい」と酒井さんは語る。
このイベントを通じて、「実際に社会で活躍している人を見ること、サポートしてくれる人がいることを知ることで、自分もできるかもしれない、あんな風になりたい、やってみたいという気持ちから始まる、そういう場を作りたかった」と、企画を立ち上げた思いを明かした。半年前に企画を思いついてから実行委員会のメンバーらと準備を進めてきた。心理セラピストや獣医など職業も年齢も様々な実行委員の中には元小学校教師もいて、教職時代に抱いた思いからイベントをサポートすることを決めたという。
「子供達たちの自己肯定感が下がっていると感じた。小学3年生くらいで自分はだめだと思う子もいて、若年化していることを感じた。誰かと比べるのではなく、ありのままの自分を好きになる、それを認める社会になってほしい」と話す。
「自分らしい生き方を」陶芸家・長瀬渉さん
東彼・波佐見町の陶芸家・長瀬渉さんは、自分らしく社会で生きる姿を体現している一人だ。
山形県出身の長瀬さんは22年前に波佐見町に移住し、廃業した焼き物工場を買い取って陶房を構えた。生き物を繊細かつ忠実に再現した作品は、国内外で高い評価を受けている。
さらに長瀬さんは、陶芸だけでなく音楽活動にも取り組んでいる。
5年ほど前から仲間と音楽グループ「ながせ陶房」を結成し、地元だけでなく県外にも活動の場を広げている。
長瀬さんは小学校での特別授業にも招かれ、陶芸や音楽などを通じて「人と違っていい」「自分らしく生きていい」というメッセージを子供たちに伝えている。
「体現していい人生を送ろうと思っている。それを感じたり、背中を見て一生懸命やればそういう生き方ができるという示しを大人が作るのがまず先決でしょう」と長瀬さんは語る。
「子供に何か一歩前に進んでほしいと思うなら、まずは大人がその姿を見せるべきだ」と考えている。
3日間のアーティストの祭典 持続可能なイベントへ
12月6日から8日の3日間の日程で開かれた「未来を創るアーティストフェス」は無事に終了し、多くの親子連れなどから大きな反響があった。
実行委員会の酒井さんはイベントをきっかけにアートや音楽など様々なアーティストたちとの時間が子供たちにとって「新たな世界の扉」になればと願っている。
さらにイベントを終えて「多くの人から楽しかったとの声をもらい手応えを感じている。またそれ以上に、今回イベントに参加した人たちやサポートする人たちとの新たなつながりができたことで、思いを共有したり深まったりできたことがよかった。イベントに関わった一人ひとりがそれぞれの活動で力を発揮して活かしてほしい」と語った。
初めての企画で準備の時期や集客など課題はあるものの実行委員会では、今回の実績を踏まえて小さくても持続可能なイベントに育てていきたいとしている。
(テレビ長崎)