大阪にある、性暴力被害者のための支援センターが、医師による診療体制が取れず、存続の危機に陥っている問題。 4日、性被害者やその家族らが大阪府議会に署名を提出し、存続を訴えた。
■【動画で見る】女性の14人に1人「性暴力被害者」の“駆け込み寺”が存続危機 採算取れず医師も不足
■集まった署名は4万8000筆 大阪府議会に請願署名を提出
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4日、大阪府議会に請願署名を提出したのは「大阪SACHICOの存続と発展を願う会」のメンバー。 ことし夏から始まった活動で、集まった署名は4万8000筆を超えた。 いま窮地にあるというSACHICOとは、いったいどのような場所なのか。
■SACHICOとは? 性被害に遭った人のワンストップセンター
大阪府松原市にある阪南中央病院。 このなかに「性暴力救援センター・大阪SACHICO」はある。
SACHICO 久保田康愛理事長:ホットラインは、この電話で受ける形になって。(Q.ここに今も電話かかってくる?) 電話かかってきて、支援員が24時間いて、お話を伺う。
性被害に遭った人のための電話相談のほか、緊急時には、医師の診察や緊急避妊などの処置を受けられる診察室とシャワー室も完備されている。 SACHICOは傷ついた被害者に負担がかからないよう、1つの場所で相談から治療、警察への付き添いなどの支援を行う場所として、2010年に全国で初めて作られた。 これまでに5万件を超える電話相談と、およそ3700人の診療を行ってきた。
■全国にも広がる支援の形 SACHICOを立ち上げた医師
SACHICOを立ち上げた加藤治子医師だ。 なぜ病院を拠点とする支援の形にこだわったのか。
SACHICO加藤治子医師:産科がある病院は、24時間対応しないといけませんのでね、だからここと思ったんですね。医者が24時間待機している、いつお産になってもいい状態でいるという意味で、ここと考えましたね。
性被害者のその後のケアも含めた、総合的な支援はモデルケースとなり、やがて全国にも広がった。
■「先を見越して相談に乗ってくれた」 SACHICOの存在に救われた
SACHICOの存在に救われた人がいる。 3年前に長女(23)が性被害に遭った女性。 知的障害と場面緘黙という症状がある長女は、通っていた事業所の帰り道、見知らぬ男に話しかけられ、そのままホテルに誘導された。
長女は家族以外の人とは話すことができないため、全身で抵抗を続け、男の隙をついて逃げ出すことができたが…。
娘が性被害に遭った女性:家に帰ってきてドアを開けた瞬間、しゃがみ込むようにしながらワーって泣いて。話しかけたら泣きながら、ぽつぽつと断片的にあったことを話してくれて。
長女は服を脱がされ、体を触られるなどの被害を受けた。 すぐに警察に通報、その時、紹介されたのがSACHICOだった。
娘が性被害に遭った女性:意外と自分の身近なところに性被害について話せる相手や、裁判のこととか、検察のこととかを話せる相手っていうのがいなくて、先を見越して色んなことを相談に乗ってくださるということが、いつも心が安らかでいるために必要だった。
■来年3月で病院から撤退 行き先は未定 吉村知事は「移転先は確保したい」
SACHICOの開設以来、初診の数は増え続け、おととしには年に400人を超える被害者を診察した。 しかし、ことし4月以降は受診者がゼロに。
SACHICO 久保田康愛理事長:拠点病院の方から、産婦人科の医師をこの部屋での診察に派遣できない。人を回せるゆとりはないから、そこは諦めてくださいという状況になってしまって。
医師の不足や、働き方改革で、通常の診療との両立が難しくなり、病院から医師の協力を得られなくなったのだ。 来年3月で病院からの撤退を余儀なくされていて、行き先はまだ決まっていない。
SACHICO 加藤治子医師:残念ですね。(おととし診察した)400人の人たちが、ことしはほぼゼロになってるわけです。本当に申し訳ない気持ちです。
大阪府の吉村知事は4日…。
大阪府 吉村洋文知事:SACHICOの機能は非常に重要だと思ってますから、移転先については、しっかりと確保することを、力を入れたいと思います。
その上で、「1つの病院だけでなく連携病院を各地につくって、SACHICOとの関係を強化し、持続可能な形にしていきたい」との考えを明らかにした。
■「『SACHICO』は今窮地に陥っている」
関西テレビ 加藤さゆり解説デスク:今女性の14人に1人が無理やり性交された経験があるという調査があるほど、深刻な性加害問題は広がっているんですね。被害者の多くの方は自分が悪かったとか誰にも相談できないと、泣き寝入りしてしまうケースが多いですが、先ほど紹介した 『SACHICO』は、被害者目線に立っていつでも相談を受け入れる支援を続けています。 しかしいま窮地に陥っていて、医師不足や産婦人科医、支援員の方々の高齢化もあり、病院にとっても不採算、赤字になってしまうぐらいの事業で、なかなか続かない現状が見えてきています。
吉原キャスター:医師が不足しているといっても、専門性が求められるわけで増やして行くのも、一筋縄ではいかないですよね。
■『箱だけ作って魂入れず』の状況 資金が必要
関西テレビ 加藤さゆり解説デスク:性被害者が抱える心の問題など、正しく理解しないと逆に傷つけてしまうので、継続的に研修のようなことも必要にはなってきますが、医師にとってもなかなか責任の重い仕事ではあります。そういったところが理解されないといけませんが、今『箱だけ作って魂入れず』の状況になっています。 問題解消には、まずは資金が潤沢にあることが必要で、何らかの形で税金が投入されることを「SACHICO」の方々も願っています。
吉原キャスター:国が交付金を出して、それぞれの都道府県にセンターの設置を促してきたという背景があるなかで、国のサポート体制を哲夫さんどう感じますか?
ジャーナリスト 鈴木哲夫さん:もっとお金を出せばいいだけの話じゃないですか。行政がやってもいいような話ですよ。でもNPOと民間にお願いしているわけなので代わりに、お金を出しましょうってことですよね。医師不足は結構深刻ですが、例えば公立病院や国の病院と上手く連携させて、医師を発見できるようにするとか、やれることはいっぱいあります。
■『ワンストップ支援センター』♯8891
関西テレビ 加藤さゆり解説デスク:府の担当者の方にも伺ったんですが、府としても性被害者を守ることに関しては、担当の方々もみんな同じなんです。そこの気持ちは一緒だけど、それについてくる制度がないと嘆いていらっしゃったのは事実ですね。
課題はあるなかで、性被害に遭った方、そして誰にも相談できず苦しんでいらっしゃる方もいらっしゃる。
『性暴力被害者ワンストップ支援センター』の電話番号♯8891(早くワンストップ)
(関西テレビ「newsランナー」2024年12月4日放送)