家族や大切な人との別れ。気持ちの整理はもちろん、故人が残した思い出の品をどう整理、処分すればいいのか？年々、依頼が増えている‶遺品整理のプロ”の作業現場に同行した。
弟が他界 思い出を大事にしたい
福岡・福津市の遺品整理業者「ダイワテクノサービス」。この日「見積もり依頼」をしてきた依頼者の元をスタッフの松尾康弘さんが訪ねた。「お世話になります」と出迎えてくれたのは74歳の男性。「去年11月に実家の跡を継いだ弟が他界したので空き家になってしまった」と話す。
かつては両親や弟と一緒に過ごした懐かしい家。弟が他界して既に1年以上が経っているが、部屋の中にはかつての生活を忍ばせる懐かしい家具や家電がそのまま残っている。
依頼者の男性は「思い出のものを大事に見ながら片づけをやりたいから。またリサイクルできるのであれば、有効に活用してもらおうと思ったから」と業者に整理を頼むことにした理由を話す。
故人が残した品物を依頼者に代わって整理処分する遺品整理という仕事。記者が同行した会社は、不用品の一部を買い取り、作業代から値引きするサービスも行っていて、今回の見積もりは買い取り可能な品物の確認も兼ねている。
買い取り可能な品物の確認も
手際良く家財道具を調べていく松尾さん。食器棚に入っているたくさんの陶器の食器の金額を素早く計算して依頼者に提示する。さらに「テレビはシャープの2021年製、3500円のお買い取り」と次々と家財道具に値段を付けていく。今回1番の高値がついたのは冷蔵庫。「年式と状態を考慮して1つあたり2万1000円で」引き取ってもらうことになった。
松尾さんが買い取り可能な品物に次々と値段をつけていく間、依頼者の男性は懐かしい写真を見つけ手に取っていた。「家族全員が写っている写真や父母弟、それぞれ思い出の写真。いろいろ出てきますね。私が生まれた頃の写真もありました」と懐かしそうに古い写真を見つめる。値段がつけられない大切な思い出の品は、依頼主が持って帰ることにした。
作業を終えた松尾さんが1軒まるごとの遺品整理にかかる費用を計算した。見積額は、総額で25万8000円。これから家財道具の買い取り額6万円を差し引いた19万8000円が実際の費用となる。
依頼主はこの提示された金額で納得。作業を頼んだ。
思わぬ所から現金や通帳・遺言書も
続いて向かったのは、ワンルームの部屋。見積もりは既に終えていて、これから室内の荷物整理を始める。「今回は県外に住む息子様からのご依頼で、お母様の遺品整理です」と語る松尾さん。室内は故人の几帳面な性格を物語るように化粧道具や香水、裁縫の雑誌や道具がきれいに並んでいた。
この部屋の整理について依頼主からは「全て要らない」と言われているというが、松尾さんはこれまでの経験上、現金や通帳、印鑑といった貴重品関係や判断がつきにくいものに関しては、捨てずに残す方針にしている。リースで借りているウォーターサーバーも同様だ。
依頼のあった部屋は、広めのワンルーム。スタッフ4人で作業にあたる。作業員の1人がジュエリー関連の遺品を見つけた。経験上、思わぬ所に貴重品などがあったりするので、中身を見て1つ1つ判断していく。「燃えるごみ」か「燃えないごみ」かも確認する。
遺品整理をしていると遺族も知らないお金や宝飾品などが出てくることはよくあるとのこと。過去には棚の隙間から見つかった預金通帳に300万円が入っていたこともあった。だから書類も注意して1枚1枚目を通していく。
土地の権利書や家族が知らないところで故人が生命保険に入っていることも多々あるためだ。以前は遺言書が見つかったケースもあったという。
依頼者はなぜ、業者に頼むことにしたのか？「先日、家に行った時もなんか生きているような気がして。これを1人でコツコツと整理するのは、なかなか大変だし気持ちも…、お願いして良かった」と母親を亡くし、いまだ苦しい胸の内を依頼者は語った。
作業をすること約5時間。全ての荷物を出し終える。今回の作業料は、総額11万3300円から買い取り額の3万4800円を差し引いた7万8500円となった。
処分品の量や作業内容で料金加算
遺品整理の依頼は年々増えていて、県外に住み物理的に自分での作業が難しい人やごみの分別が難しく専門の人に依頼するといったケースが多いという。高齢の親や病気の家族を抱える人たちはもちろん、自分自身についても「いざという時」のために何を残し誰に託すのか？整理しておく必要がありそうだ。
（テレビ西日本）
