「あの件、まとめておいて」とか「さっきの件は、適当に処理しておいて」など曖昧な言葉がよく飛び交っていますが、Eさんにとっては、「あの件」とはなにを指しているのか、「適当に処理」の適当とはどの程度なのかなどを、想像するのが難しいようです。

指示してきた人に聞くこともありましたが、「そんなこと自分で考えてよ!」などという言葉がかえってくることが多く、分からないまま着手していました。その結果、指示された内容と違う期待外れの仕事しかできず、叱責される機会が多かったようです。

Eさんは分量や納期が明確でない仕事が苦手だった(画像:イメージ)
Eさんは分量や納期が明確でない仕事が苦手だった(画像:イメージ)

[どのようにサポートしていくか]
Eさんは、イマジネーションやコミュニケーションが得意ではないといえます。分量や納期が不明確な仕事は、イメージがしにくいのでしょう。

そもそもEさんのようなタイプは、自分で想像しながら仕事を進めていかなければいけない部署では、環境への適応が難しい場合が多いです。

部署を変えてもらうことも1つの方法となりますが、ある程度のルールがあればマニュアル化しておく、指示する人には具体的に伝えるようにしてもらうなど、環境調整も必要となります。

このように、部下の特異な言動から発達障害を疑うよりも、まずは事例性からサポート案を試してみることが重要です。

それでも難しいようであれば、遅刻の回数や叱責される内容などの客観的な事実から、受診やカウンセリングを勧めるのも方法の1つです。

『発達障害グレーゾーンの部下たち』(SB新書)

舟木彩乃
心理学者・カウンセラー。公認心理師・精神保健福祉士。博士(ヒューマン・ケア科学/筑波大学大学院博士課程修了)。カウンセラーとして約1万人の相談に対応し、中央官庁や地方自治体のメンタルヘルス対策に携わる。

舟木彩乃
舟木彩乃

心理学者・カウンセラー。公認心理師・精神保健福祉士。
博士(ヒューマン・ケア科学/筑波大学大学院博士課程修了)。博士論文の研究テーマは「国会議員秘書のストレスに関する研究」。株式会社メンタルシンクタンク(筑波大学発ベンチャー)副社長。文理シナジー学会監事。一般社団法人企業広報研究ネットワーク理事。AIカウンセリング「ストレスマネジメント支援システム」発明(特許取得済み)。
カウンセラーとして約1万人の相談に対応し、中央官庁や地方自治体のメンタルヘルス対策に携わる。Yahoo!ニュース エキスパートオーサーとして「職場の心理学」をテーマにした記事、コメントを発信中。著書に『「首尾一貫感覚」で心を強くする』(小学館新書)、『「なんとかなる」と思えるレッスン』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)等がある。X(エックス)にて職場のメンタルヘルスなどをテーマとした勉強会(不定期)やイベント、集団セラピーなどを案内している。