「あの件、まとめておいて」とか「さっきの件は、適当に処理しておいて」など曖昧な言葉がよく飛び交っていますが、Eさんにとっては、「あの件」とはなにを指しているのか、「適当に処理」の適当とはどの程度なのかなどを、想像するのが難しいようです。
指示してきた人に聞くこともありましたが、「そんなこと自分で考えてよ!」などという言葉がかえってくることが多く、分からないまま着手していました。その結果、指示された内容と違う期待外れの仕事しかできず、叱責される機会が多かったようです。

[どのようにサポートしていくか]
Eさんは、イマジネーションやコミュニケーションが得意ではないといえます。分量や納期が不明確な仕事は、イメージがしにくいのでしょう。
そもそもEさんのようなタイプは、自分で想像しながら仕事を進めていかなければいけない部署では、環境への適応が難しい場合が多いです。
部署を変えてもらうことも1つの方法となりますが、ある程度のルールがあればマニュアル化しておく、指示する人には具体的に伝えるようにしてもらうなど、環境調整も必要となります。
このように、部下の特異な言動から発達障害を疑うよりも、まずは事例性からサポート案を試してみることが重要です。
それでも難しいようであれば、遅刻の回数や叱責される内容などの客観的な事実から、受診やカウンセリングを勧めるのも方法の1つです。

舟木彩乃
心理学者・カウンセラー。公認心理師・精神保健福祉士。博士(ヒューマン・ケア科学/筑波大学大学院博士課程修了)。カウンセラーとして約1万人の相談に対応し、中央官庁や地方自治体のメンタルヘルス対策に携わる。