静まり返る深夜の書店で、ページをめくる音だけが響く特別な体験。人気の「書店宿泊イベント」に集まった本好きたちが、紙の匂いに包まれながら本と過ごした特別な一夜を密着取材した。

10年前からの“非日常”を楽しむ人気イベント

広島駅前の「丸善ジュンク堂書店」で、開かれた人気の書店に泊まるイベント。

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「ジュンク堂に住みたい」というSNSの書込みが発端で2014年に東京で始まった。今回の当選倍率は驚異の57倍。一晩、書店の「住人」となる権利を手にしたのは、わずか4組8人だ。

京都から参加した20代の姉妹は、新幹線で駆けつけ、書店に入る前からワクワク感を隠し切れない様子。「想像できないのでちょっと緊張しているけど、楽しみ!」「目標は100冊!」と笑う。

この非日常空間に、参加者たちはキャンプのように寝袋などの準備を整えて臨んだ。
「書店が楽しい場所だということを味わって、周りの人に伝えてほしい」という店長の思いが込められたこのイベント。

午後10時になり、特別な一夜が幕を開けた。店内に並ぶ30万冊もの本は一部を除いて読み放題。

静寂に響くページの音

書店内は、ライトの暖かな色合いに包まれたリラックス空間。大学生やカップル、初参加の人々がそれぞれお気に入りの場所を見つけ、本と向き合い始めた。

本棚に囲まれた狭い通路に陣取った大学生は「いや、至福の時って感じ。」と満足げな様子。
“眠気覚まし”のドリンクを飲んで眠気と格闘する人も。

広島の企業が提供するアイスやクリームパンなどが配られ、参加者たちを支えた。ただし、アルコール類の持ち込みはお断り。

一方で、深夜の書店を初めて経験する三浦店長は、その静寂に「歩く音が響きすぎて、はだしで歩きたくなるくらい静かなんですよ」と驚いていた。

深夜になると、眠気に勝てず寝袋で横になる人も現れたが、「本屋で眠れる幸せ」をかみしめながら過ごしていた。

「普段読まない本と出会える」

夜明けとともに、参加者たちは新たな本との出会いに感謝しながらイベントを締めくくった。

京都の姉妹は「普段は読まないジャンルも手に取ってみたくなる」と語る。目標100冊と笑っていたが、実際に読んだのは、それでも13~14冊だったという。

また、別の参加者からは「買う本を何冊か決めていたが、結局ここで出会った知らない本を買った。知らない本に出会えるところがやっぱりいいと思う」「紙のにおいがするのがいい」とリアル書店のスペースをゆっくり満喫できたようだ。

このイベントは、オンライン書店や電子書籍が普及する中、リアル店舗で本に触れる楽しさを再発見するいい機会と言える。

取材したディレクターによると、深夜の書店は本のぺージをめくる音が聞こえるほど本当に静かで緊張したということだ。

このイベントは3冊以上の本を買うことが参加条件だが、費用は無料。今回の参加者には「丸善ジュン区民」の「特別住民票」が配られた。

(テレビ新広島)

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