「ジャリジャリ」という食感から、「ジャリパン」と呼ばれ親しまれてきたパンが宮崎にある。2023年に惜しまれながら閉店したが、「青春の味」「懐かしの味」として復活を望む多くの声が寄せられ、事業承継を経て復活オープンに至った。

100年近い歴史に幕

昭和初期に創業し、100年近い歴史のあるミカエル堂。3代に渡り経営が引き継がれてきたが、2023年3月閉店した。

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ミカエル堂・前店主 都成五男さん:
建物もそうだが、機械の老朽化がひどくて。これ以上続けても、なかなか厳しいかもしれないと思い、2023年の3月いっぱいでやめた。

3代目の都成五男(となり・いつお)さんは、ミカエル堂の閉店を惜しむ声を多く耳にし、第三者に事業承継することを決めた。引き継ぎ先を探すウェブサイトに掲載したところ、全国から40件ほどの問い合わせがあったという。

東京からUターンし事業を引き継ぐ

都成さんがミカエル堂の引き継ぎ手として選んだのは、宮崎市出身で、東京でウェブ制作の仕事をしていた大津伸詠(おおつ・のぶえ)さん。

東京からUターンした大津さんは、宮崎市中央卸売市場の一角に店を構え、「ミカエル堂」の屋号とジャリパンのレシピを引き継ぐことになった。

大津伸詠さん:
私が小さいときに、病院の帰りにミカエル堂さんのパンを買って、ご褒美として食べていたと聞いている。高校生の時には売店で食べていたパンで、思い出は深かった。

レシピを引き継いでも、大津さんにとって、パン作りは未知の世界。そこに寄り添ったのが都成さんだった。

大津伸詠さん:
私にパン作りの知識がないから、話をすごくかみ砕いて教えていただいた。都成さんもすごく大変だったと思う。

オープン前日、引き継ぎのセレモニーが開かれた。セレモニーでは都成さんが、大津さんの作ったジャリパンを試食した。

都成五男さん:
うまい、懐かしい味。僕は感謝しかない。パン屋は結構、大変な仕事。朝早いし夏場は体力を使う仕事なので、大変だと思うがそれを乗り越えて、宮崎の味であるジャリパンをなんとか引き継いでいってもらいたい。その気持ちでいっぱい。

大津伸詠さん:
ミカエル堂さんは100年ぐらい続いてきたパン屋さん。私たちもそこから引き継いで、100年先まで続いていけるように頑張っていきたい。

開店前から行列 2時間で完売

迎えたオープン当日。3代続いたミカエル堂の思いをつなぎ、宮崎市中央卸売市場のカンカン通り商店街で、新たな歴史がスタートした。開店20分前には、懐かしの味を求める多くの客が、既に列を作っていた。

販売されているのは通常のジャリパンのほか、抹茶やチョコなどあわせて4種類のジャリパン。訪れた人たちはさっそく、懐かしの味を買い求めていた。

買い物客からは、「娘に送る。昔から食べていた懐かしい味。子どもも喜ぶと思う。」「おいしいし、懐かしい。」「宮崎に来て初めて食べたパンがジャリパンだったので、宮崎に来た頃を思い出す。」などの声が聞かれた。

ミカエル堂 大津 伸詠代表:
非常にうれしく思っているが、そこに浸る間もなく営業している感じがする。以前のミカエル堂の味を楽しみに来てくださっている方が多いので、ご期待に添えるようにというのが一番と思っている。

初日に用意したジャリパンは約2時間で完売したが、売り切れた後も客が途絶える事がなかった。待ちに待った復活だったことが伺える。伝統を守りながら、新しいミカエル堂を作っていきたいという大津さん。年内に別の味も復活させる予定で、今後はスーパーなどでの販売も検討し、「懐かしの味」をさらに100年先まで続けていきたいと話している。

(テレビ宮崎)

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