11月4日まで行われた春の高校バレー岩手県大会は、男子は一関修紅高校、女子は盛岡誠桜高校の優勝で幕を閉じた。勝ったチーム、敗れたチーム、それぞれに青春のドラマがある。涙をのんだ選手たちの心には何が残ったのかをカメラが追った。
高田高校 伝統を次の世代へ「つなぐ」
春の高校バレー岩手県大会は11月1日に開幕し、男女あわせて66校が出場。選手たちが力強いプレーで会場を沸かせた。

女子の高田高校は、春高バレー県大会では21回の優勝、全国大会でも優勝した歴史を持つ県内屈指の強豪だ。高田高校の伝統は拾って拾って攻撃へと転じる「つなぐバレー」。練習時間の半分を守備練習に費やす徹底ぶりだ。
準決勝で盛岡誠桜高校に敗れベスト4で今大会を終えたが、「粘りのバレー」「つなぐバレー」を貫いた。

高田高校3年の斉藤妃南主将は「高田のバレーとして、つなぐバレーやコンビのバレーを最大限出せたので悔いはない」と、やりきった様子だった。
一関修紅高校 チームへの「感謝」
女子の一関修紅高校の2024年のチームを語るキーワードは「集大成」。
2023年のメンバーから抜けたのは1人だけで、ほとんどが2年生からスタメンでプレーしてきた。他のチームよりも同じ仲間でプレーした時間が長いのが強みだ。

セットカウント1対3で盛岡誠桜高校に惜しくも敗れ準優勝に終わったが、大会最多13人の3年生で決勝へと進み、まさに「集大成」の大会だった。

一関修紅高校3年の栗生澤凪沙主将は「一関修紅でプレーさせてもらえて本当にうれしいし、いろいろあったけど最後は感謝の気持ちを伝えたい」と、涙を流しながらチームへの感謝を語った。
花巻東高校 次へ進むための「悔しさ」
2023年の王者、男子の花巻東高校は、2023年の中心メンバーだった2年生がそのまま3年生となり、2024年は結果が求められたが、新人戦・県高総体ともに準優勝。あと一歩のところで悔しい思いをしてきた。

準決勝で一関修紅高校に接戦の末敗れ2連覇には届かなかったが、高さのあるブロックと多彩な攻撃で2023年の王者の意地を見せつけた。

花巻東高校3年の金田一雄大主将は「チームを引っ張るべき自分が、最後力を出し切れないで終わってしまった。本当に申し訳ない気持ち」と、悔しそうな様子だった。
花巻南高校 仲間との「絆」
女子の花巻南高校は、部員は25人と県内屈指の大所帯だが3年生は1人だけ、“さやさん”の愛称で後輩たちに慕われているキャプテンの藤舘咲耶選手だ。

体育館には、手作りの「さやさんを全国に連れていく!」という横断幕が掲げられていて、後輩たちが藤舘選手に内緒で作ったものだった。藤舘選手は「後輩と一緒に全国行くという気持ちがさらに強くなった」と話す。
準決勝で一関修紅高校に敗れベスト4に終わったが、学年を超えた強い絆で力を出し切った。

花巻南高校3年の藤舘咲耶主将は「1人でキャプテンをやっていたのではなくて、周りの人に支えられながらやっていて、2年生が支えてくれたから最後までやってこられたと思う」と振り返った。
不来方高校 ともに戦った「仲間」
男子の不来方高校は、2025年に盛岡南高校と統合することが決まっているため、「不来方」の名前で戦うのは今回が最後の春高バレーだ。

春高バレー県大会では最多タイの14回の優勝を果たしている名門・不来方高校だが、ここ2年間は決勝に進むも準優勝。あと一歩の所で涙をのんできた。
“不来方ラストイヤー”となるこの大会で、3年生で1人だけコートの外で見守った選手がいた。

不来方高校3年の村上優斗選手は「自分は1年生のときから試合に出ることができなくて、嫌になったこともあったけど、このチームで勝ちたいという気持ちがあった」と涙を流した。
ベスト8で大会を終えたが、「不来方」の名前を歴史と記憶に刻むべく戦い抜いた。
強豪・盛岡南高校の「歴史」
男子の盛岡南高校もまた、2025年春の不来方高校との統合を前に「盛岡南」として臨む最後の公式戦となった。

かつて、春高バレーの全国大会が3月に開催されていたときは、県大会で5連覇も果たし最多優勝を誇っている。42年目を迎えた名門は岩手のバレー界の先頭を走ってきた。

一関修紅高校との決勝戦は、“盛岡南”のスタンドに統合する“不来方”のバレー部が応援に駆けつけた。
一関修紅高校にセットカウント3対1で敗れ、「盛岡南」として目指した優勝は果たせなかったが、名門の誇りを胸に最後まであきらめないプレーで、42年の歴史を締めくくった。

かつて、盛岡南高校のエースとして春高全国で白星を挙げた相馬高志監督は試合の後、「すまん。正直、この世代は苦しんだと思ったんだ。お前たちには悪いけど『苦しいかな』と思ったけど、よくここまで耐えたと思うし、最後の世代が本当にいい世代だったと俺は思うよ。“締めくくるにふさわしい世代”だった」と選手たちに声をかけた。

盛岡南高校3年の佐々木綺斗主将は「最後、勝てはしなかったけど、この岩手県に『盛岡南』という名を刻めたと思う」と話した。
岩手の高校生バレーボーラー全員の思いを背負い、男子・一関修紅高校と女子・盛岡誠桜高校は2025年1月、全国大会に出場する。
(岩手めんこいテレビ)