プレスリリース配信元:NSGグループ
一般財団法人三友堂病院の笠原一希 (2023年度理学療法学分野修了)、NSGグループの新潟医療福祉大学:小根山慶汰(健康スポーツ学科4年)、伊藤嵩琉(健康スポーツ学科4年)、越智元太講師、西九州大学の中村雅俊准教授の研究グループは、激運動による末梢血乳酸濃度上昇からの回復に短時間のフォームローリング介入が有効であることを解明しました。
この報告は2024年11月8日付けでスポーツ科学分野の国際専門誌であるSports誌に掲載されました。
笠原一希(左) 小根山慶汰 (中) 伊藤嵩琉(右)
■研究概要
アスリートは激しい運動後の疲労からいかに早く回復できるかが、パフォーマンス向上に不可欠です。本研究では、運動直後のフォームローリング介入が、筋疲労の間接指標である血中乳酸上昇からの回復効果に及ぼす即効的な効果を検証しました。その結果、激運動後に増加した血中乳酸は、その後4分間フォームローリングを行うことで安静にしているよりも低下することを明らかにしました。さらに、フォームローリングによって血中乳酸が低下した人ほど認知機能課題の反応時間が短縮し、激運動後の認知機能低下からの回復にも期待されます。今後の研究により、アスリートが試合やトレーニングで最高のパフォーマンスを発揮できる効果的な疲労回復法としての応用が進むことが期待されます。
◆研究のポイント
・激運動後の末梢血乳酸は、筋疲労発生の間接指標であり、乳酸除去は筋疲労からの回復の指標となります。
・疲労困憊に至る運動後に4分間のフォームローリング介入を行うことで、末梢血乳酸除去が速くなり、筋疲労からの回復を速めることが示されました。
・激運動後のフォームローリング介入によって末梢血乳酸除去が速くなった人ほど、認知課題の反応時間が短縮し、認知疲労からの回復にも有用である可能性が示唆されました。
・フォームローリングは場所を問わず短時間で実施できる、筋疲労対策方策となり得ます。
◆研究の方法と結果
末梢血乳酸は疲労物質ではありませんが、代謝性アシドーシスなど筋疲労の要因と同様の変化を見せることから、筋疲労の間接指標になると言われています。そこで、本研究ではフォームローリング介入 (図1) が血中乳酸の低下を起こすか検証することで、筋疲労改善に有効か検証しました。健康な成人18名がが疲労困憊に至る漸増負荷運動試験を行い、その後4分間のフォームローリング介入を行う実験条件と、安静に休息を行う安静条件に参加しました。その結果、漸増負荷運動によって増加した血中乳酸は、安静条件に比べてフォームローリング後に有意に低下しました (図2)。さらに血中乳酸の低下が大きい人ほど、認知機能の回復と関連することが示されました。
図1. フォームローリング介入の例
図2. 激運動後からフォームローリング/安静介入後の血中乳酸濃度変化
◆研究助成
本研究は文部科学省・日本学術振興会科学研究補助金(JSPS科研費 22K17739)と新潟医療福祉大学・研究奨励金による助成を受けて行われました。
◆原論文情報
論文名:Foam rolling intervention improves lactate clearance after high-intensity exercise
著者:*笠原一希1、小根山慶汰2、伊藤嵩琉2、中村雅俊3、§越智元太2,4
1)三友堂病院、2)新潟医療福祉大学健康科学部、3)西九州大学リハビリテーション学部、4)新潟医療福祉大学運動機能医科学研究所(*:筆頭著者、§:責任著者)
掲載誌:Sports
DOI:https://doi.org/10.3390/sports12110303
◆研究に関する問い合わせ先
新潟医療福祉大学 健康科学部 健康スポーツ学科 越智 元太(おち げんた)
Tel: 025-257-4595 E-mail: ochi@nuhw.ac.jp
【新潟医療福祉大学】 https://www.nuhw.ac.jp/
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