大接戦と言われていたアメリカ大統領選ですが、すでに「トランプ氏が勝利宣言」する状況になっている。
【動画】【トランプ氏が勝利宣言】現地取材で感じた「バイデン政権への不満」 トランプ氏は「“絶対に”石破首相と合わない」
■現地取材で感じた「バイデン政権への不満」

ホワイトハウス周辺から、現在の様子を水本記者が報告する。
-Q.現地はいまどのような状況なのか?
ロサンゼルス支局 水本翔記者:ホワイトハウス前は、メディアを除くとそれぞれの支持者が合わせて数十人集まっているような状況です。 4年前の大統領選では、数百人以上が集まっていましたので、今は比較的落ち着いた状況です。 警察官などは暴動に備えて厳戒態勢をとっていて、周辺には警察車両が何台も止まっている状況です。
-Q.早くもトランプ氏が勝利宣言ということで、現地で取材して感じたことはあるか?
ロサンゼルス支局 水本翔記者:バイデン政権への不満がたまっていたと考えるのがシンプルかと思います。
ロサンゼルス支局 水本翔記者:今回、選挙の争点で一番多く関心を集めていたのが経済です。実際に取材をしていても、以前のトランプ大統領時代を思い出し、『その時の経済が良かったから投票した』という人がいました。 急激なインフレ、住宅代の高騰などに、賃金上昇が追い付かず、あちこちでストライキが起き、社会は混乱していました。
ロサンゼルス支局 水本翔記者:また不法状態で入国する移民が過去最多となったバイデン政権で、ハリス氏が移民対策を担当していたことから、移民対策に不満がたまっていた人たちも、トランプ氏への投票につながったとみられます。
■今でもトランプ氏は『シンゾーに会いたい』と漏らしている

トランプ氏が勝利宣言をしている。
もしトランプ氏とハリス氏、それぞれが大統領となった場合、日本との関係がどうなるのか、アメリカ情勢に精通している、キャノングローバル戦略研究所の峯村健司氏は次のように考えている。
・ハリス氏 バイデン政権の踏襲で現状維持。同盟重視で予想はしやすい
・トランプ氏 “絶対に”石破首相と合わない。大好きだった安倍元首相亡き今、外交面で手強い相手になる
まず安倍元首相とトランプ氏はそこまで仲良しだったのだろうか?
キャノングローバル戦略研究所 主任研究員 峯村健司氏:2016年、トランプさんが当選した時にすぐにニューヨークのトランプタワーに会いに行った時から信頼を勝ち得て、しょっちゅう電話をする仲だったと聞いています。
キャノングローバル戦略研究所 主任研究員 峯村健司氏:安倍さんはもう亡くなっているのですけれども、側近から聞いた話ですが、今でもトランプさんは疲れた時とか、落ち込んだ時に『シンゾーに会いたい』と漏らしているという話を聞きます。 それぐらいまだ安倍さんに対する思いは強いということだと思います。
■トランプ氏は「“絶対に”石破首相と合わない」

「“絶対に”石破首相と合わない」というのはどういうことなのか?
キャノングローバル戦略研究所 主任研究員 峯村健司氏:(絶対なんて)あまり使わない言葉ですが、やはり安倍さんとの仲が、唯一日本との関係を保っていたものなんです。 もともとトランプさん自体は、日本に結構厳しい対応だった。『日本の家電と車がわれわれの経済をダメにしているんだ』と。トランプさんは唯一安倍さんとの友情で、なんとかつなぎ止めていたところなんです。
キャノングローバル戦略研究所 主任研究員 峯村健司氏:石破さんというと、安倍さんに対して批判したりして党内野党と呼ばれていたわけで、この話はアメリカも当然知っています。 そうなってくると『アベのライバルか』となるとあまりプラスに働かないのではないかと私は思います。
トランプ氏と友好関係がうまく築けないとなると、石破首相はどういう部分で苦労することになるのか?
キャノングローバル戦略研究所 主任研究員 峯村健司氏:まず一番は関税です。同盟国であっても日本に対しては10パーセントの関税をかけると言っています。 もしかけられると日本の製品が売れなくなる。
キャノングローバル戦略研究所 主任研究員 峯村健司氏:もう一つ言うと、在日米軍の駐留経費の負担をもっと出せと言ってくる。 全部飲んでしまうと4~5倍とか。大変な負担になると思います。
■「中国離れ加速」で日本にメリットとなる可能性も

一方で、日本に経済面でメリットもあるという。トランプ氏の目玉政策で、「中国製品に対して60パーセントの関税をかける」というものがある。そうなるとアメリカ経済の中国離れが加速し、アジアの拠点は日本になるのではないかということだ。
キャノングローバル戦略研究所 主任研究員 峯村健司氏:この60パーセントのインパクトって、中国にとってもですが、中国に進出している企業にとってもものすごくダメージなんです。 アメリカから中国に進出している企業も、撤退する動きがいま出ています。そうなると、じゃあアジアに拠点を置くとなった時に、中国じゃなかったら日本だという動きが出てくるのではないかと私は思います。 そうなると日本の経済にとっては決してマイナスではない可能性がある。
キャノングローバル戦略研究所 主任研究員 峯村健司氏:(日本にお金が流れてくるように)すでになりつつあります。 米中が対立すると、結局第三国としての日本に投資も流れてくるというところがあるんです。
トランプ氏は“商売人”なので、今言っていても本当に中国に対して60パーセントの関税をかけるのだろうか。 またトランプ氏は「習近平はいい人だ」などと言っているという話もある。何をやってくるか分からないのではないか?
キャノングローバル戦略研究所 主任研究員 峯村健司氏:トランプさんをずっと見てきて思うのですが、とにかく“ディール”(=取引)が好きなんです。ビジネスの取引と一緒なので、中国に対してがつんと言っているところがある。 実際にアメリカの商務省の幹部に聞いても、『本当にこれをやるかどうかというよりは、習近平氏に対してがつんと言ってやる。 交渉を有利に進めるためだ』と言っていますので、読めない点はかなりあると思います。
キャノングローバル戦略研究所 主任研究員 峯村健司氏:だからこそ石破さんなどがしっかりしなきゃいけないということです。
■アメリカ「男女の分断」が新たに生まれている

ハリス氏は多様性、人工妊娠中絶の擁護といった政策を進めようとしていましたが、トランプ氏が大統領になると、また分断が進んでしまわないか心配されます。
キャノングローバル戦略研究所 主任研究員 峯村健司氏:もともとアメリカは分断が進んでいましたが、今回また新しい分断が生まれました。 性別、男女による分断が出てきているんです。結構女性が、特に若い女性がハリスさんにかなり投票している。トランプさんに対しては男性が入れる。 そういう意味では、男女の分断というのができて、本当にアメリカの分断が深刻になると思います。
■トランプ氏優勢の動きに関西の街は…経済面や安全保障に疑問

トランプ前大統領が早くも「勝利宣言」をしたアメリカ大統領選だが、 関西の街の人はどんなことが気になるのだろうか?
40代:今ロシアとか北朝鮮が動向激しくなってきてるじゃないですか、そこを刺激しない人のほうがいいんじゃないかと思うんですけどね。
50代:日本からのものはいらないよとか、(日本製品に)関税掛けるよって言われたときに、こっちの日本の経済の影響は大きくなるので心配ですよね。
70代:基地。基地から引き上げるんじゃないかなと思う。お金がいるからって。いまでも結構日本お金出してるでしょ。今以上に出せと言われるん違うかなと思って。
70代:前も言ってはりましたもんね。アメリカって世界の警察って感覚、私らあるからね。それを引き継いでもらわないと、こんな世界情勢になって、地球が滅びるんじゃないかと思うね。
60代:トランプになってどう変わるのか見てみたい気はしますね。ちょっと怖いんですけど。相場、株価とかも変わってくるし大きな変動があるのかな。
60代:どっちがなったら戦争が終わるのかなというのはすごく気になる。台湾のことは他人事ではない日本としてもね。
■「防衛費 もっと払わなきゃいけないことになり得る」

トランプ氏が大統領になったら、どうなるのか。
関西人の皆さんが気になる疑問のうち、「日本の米軍基地はこれからどうなる?防衛費などお金の負担は増える?」はどうなのか?
キャノングローバル戦略研究所 主任研究員 峯村健司氏:十分ありえます。1期目の時もなんとか安倍政権が、いかにわれわれがお金を払っているかとうまく説得して、駐留経費が上がらなかったんです。 ひょっとしたら2期目の時には要求してくる。もっと払わなきゃいけないことになり得ますね。
防衛増税の議論はさらに加速していくのか?
キャノングローバル戦略研究所 主任研究員 峯村健司氏:そう思います。トランプ政権の側近の人間に聞いたら、『今(防衛費が)2パーセントで喜んでいるけど、そんなもんじゃない』と。 『当然3パーセントだから、アメリカ並みにしてくれないと困る』とは言っています。
■「戦争が止まる可能性はある、ただ止め方が重要」

「ロシア、北朝鮮の動向は?ウクライナの戦争に影響あるんですか?」についてはどうなのだろうか?
キャノングローバル戦略研究所 主任研究員 峯村健司氏:(戦争が)止まる可能性はあると私は思います。公約でもトランプさんは言っていますので、『私が就任したその日にやめさせる」と言っているので、これはありえる。側近の人間に聞いても、そのためにいろいろ今動いていると。外交交渉をしたり、防衛でうまく抑止したり。
キャノングローバル戦略研究所 主任研究員 峯村健司氏:ただ、止め方がどうなるかが実は重要で、ロシアが有利なままで停戦すると、今北朝鮮がロシアとくっついているので、北朝鮮の調子も上がる、 それを見た中国も、ひょっとしたら『台湾に手を出せるんじゃないか』と思ってしまう。止め方は同盟国として見ておく必要があると思います。
■「やはりブレないトランプ氏」
早々に出たトランプ氏の勝利宣言。なぜこれだけ強いのだろうか?
キャノングローバル戦略研究所 主任研究員 峯村健司氏:やはりブレないんですね。ずっとアメリカファーストと1期目から言い続けてますし、政策もしっかり出している。 ハリスさんは結局『トランプはダメだ』って言っているだけなんですね。具体的な政策を待っても、結局出てこなかった。有権者から見ると、『トランプで仕方ないけどいいか』というところだと思います。
【峯村健司氏】
キャノングローバル戦略研究所 主任研究員、元朝日新聞記者 アメリカ情勢に精通
(関西テレビ「newsランナー」2024年11月6日放送)