11月1日から自転車の「ながらスマホ」と「酒気帯び運転」が厳罰化された。広島県警は初日の1日未明、広島市中区で違反行為の検問を行い、酒気帯び運転で5件検挙した。検挙された人は「知らなかった」という。
自転車の罰則強化「知らなかった」
改正道路交通法が11月1日に施行され、スマートフォン(スマホ)を使いながら自転車を運転するいわゆる「ながら運転」や酒気帯び運転について罰則が強化された。
日付が変わった1日午前0時過ぎ、広島市中区の平和公園で検問が行われた。
「止まってください」
警察官が声をかける。県警は20人態勢で自転車走行中のスマホの「ながら運転」や酒気帯び運転がないか厳しく検問。今回の取り締まりで酒気帯び運転5件を検挙したということだ。検挙された人に、厳罰化を知っていたか問うと「知らなかった。飲酒したら乗らずに歩いて帰るべきだという意識改革につながると思う」と答えた。
県警は10月18日に広島市内で自転車指導啓発活動を行い、罰則強化のチラシを配布。しかし今回の罰則強化について、どのくらい知られているのか。広島の街の人からは「罰則強化になるんですか?詳しくは知りません」「運転中に携帯さわったら罰金?気を付けます」という声が聞かれた。
通勤や通学で多くの人が利用する自転車。問題となっているのは運転マナーの悪さだ。県警によると、2024年1月~9月末で自転車の指導や警告を行った件数は1万7337件にも上っている。そのうち自転車による飲酒運転は16件。「ながら運転」は1871件を占めている。
広島県内は「傘さし運転」にも罰則
このような危険な運転を取り締まるため、11月1日から罰則を強化。違反した場合、14歳以上を対象に比較的重い違反に対して交付される「赤切符」が切られる。
運転中の「ながらスマホ」は6カ月以下の懲役または10万円以下の罰金。事故を起こすなどした場合、罰則はさらに重くなり、1年以下の懲役または30万円以下の罰金。酒気帯び運転は3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される。
さらに広島県の道路交通法も11月1日に改正され、傘を手に持って自転車を運転する「傘さし運転」が禁止。違反した場合は5万円以下の罰金。また、傘を固定させて走行するケースでも「明らかに前方が見えない状態」であったり、「傘が不安定」で通行人にあたりそうになった場合も罰則の対象になり得る。
広島県警交通企画課の坂口健課長補佐は「自転車による交通違反・飲酒運転が多く行われているような場所や、事故が発生している場所、住民から自転車に対する苦情や相談がある場所については、重点的に取り締まりを含めて街頭活動を行ってまいります」と話す。
安全のため「強化されたほうがいい」
JAFの調査では、スマホを見ながら運転をすると、目線が手元のスマホ周辺に向き、前方に視点が定まらない。
さらに、実験では片手運転によるふらつきで不安定な走行となり、人など障害物にぶつかるという結果が出た。
街の人に聞くと、実際に危険を感じた経験がある人は少なくないようだ。「携帯を持って自転車に乗っている人や速いスピードで急に右や左に曲がったりする人がいるので、ちょっと怖いなと思ったことがあります。やはり強化されたほうがいいですね。飲酒などはなかなか減らないですよね。自転車だったらわからないだろうとお酒を飲んで運転する人もいるかもしれないけど、罰則強化されることによって人々の安全が守られるのであればよいと思います」と罰則強化を前向きにとらえる意見もあった。
広島県警の坂口課長補佐は自転車の運転について「歩道で歩行者に衝突する、ほかの自転車に衝突するなどした場合には、相手にけがをさせる。場合によっては命を奪うことになる危険な乗り物でもあります。ながらスマホの禁止や飲酒運転の禁止については当然のことなので、基本的な交通ルールを守っていただきたい」と呼びかける。
ヘルメットも努力義務では浸透せず
自転車の「ながらスマホ」厳罰化は未成年にも関わってくる。そこで、通学で自転車を利用する高校生に意見を聞いた。
広島市西区にある崇徳高校の新聞部・部長を務める柚川花菜さん(17)。
崇徳高校新聞部は、2023年のG7広島サミットで3日間の動きを高校生目線で記事にするなど精力的に活動。そして、2024年夏に行われた文化部のインターハイ「全国高等学校総合文化祭」の新聞部門大会で4年連続「最優秀賞」を受賞するなど輝かしい結果を残している。
ーー「自転車のスマホ・酒気帯び」の罰則強化についてどのように感じていますか?
崇徳高校 新聞部・柚川花菜さん:
私は毎日自転車で学校に通っているのですが、スマホを操作しながら運転する人を毎日といっていいくらい頻繁に見かけます。私も実際にぶつかりそうになって怖い思いをしたことがあります。今回、罰則が強化されるということですが、校内で知ってる生徒は少ない印象です。生徒の意識を調べるために、まず「ヘルメットの着用」に注目してみました。
崇徳高校 新聞部・柚川花菜さん:
ヘルメットの着用は努力義務になっているのですが、崇徳高校の駐輪場にとまっている542台の自転車を対象に調査してみると、542台のうちヘルメットのある自転車はわずか10台でした。努力義務だと「やらない」人も多いし、浸透してないと感じました。だからこそ、罰則が強化されることは安心安全につながると思います。
スマホ注視、何秒見たらアウト?
ーー高校生目線で疑問はありますか?
崇徳高校 新聞部・柚川花菜さん:
細かい話になるのですが「画面を注視する行為」の「注視」というのはどのくらい見てはいけないのか知りたいです。
柚川さんの疑問に、取材を担当した記者が返答。
テレビ新広島・向井智美 記者:
ちまたでは1.5秒や2秒などと言われているようですが、この法律の「注視」に決まった秒数は設けられていません。スマホを手に持って見ると、何秒であろうと目線は画面に集中します。そのため自転車の運転中にスマホを見たら、もうその時点で注視という扱いになります。
崇徳高校 新聞部・柚川花菜さん:
もう一つ聞きたいことがあります。私は17歳で未成年ですが、もし違反した場合、未成年と成人で対応は変わりますか?
テレビ新広島・向井智美 記者:
警察への取材では、成人であっても未成年であっても対応は変わらないということです。つまり、警察が危険な行為だとみなした場合は違反をしたとして赤切符が切られるということになります。
崇徳高校 新聞部・柚川花菜さん:
校内で伝えていこうと思います。ありがとうございました。
罰則の対象は14歳以上だが、年齢に関係なく自転車運転中のスマホの通話や操作は禁止されている。スマホの「ながら運転」だけでなく、飲み物を「飲みながら」、「ゲームをしながら」といった走行も危険なのでもちろんダメ。身近な乗り物だからこそ気を付けたい。
(テレビ新広島)